Intelが第13世代Coreシリーズ「Raptor Lake」を発表。まずはK付きから

Ryzen 7000シリーズの発売日(海外)とほぼ同時に、Intelが第13世代Coreシリーズ「Raptor Lake」を正式発表し、K付きモデルについての仕様も公開しました。発売予定日は10月20日となっています。

発売日も近いですし、コスパで魅力的なK無しのモデルについてはまだ未発表なのでざっくり触れる程度にしますが、見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年9月29日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

第13世代Coreシリーズ(Raptor Lake)が正式発表

要点

まずは、第13世代Coreの要点をざっくりまとめています。

第13世代Core(Raptor Lake)の要点
  • プロセスはIntel 7を引き続き採用(改良版)
    プロセスはベースは前世代と同じIntel 7で、改良版が採用されています。7と付いているので勘違いしそうになりますが、10nmです。
  • Eコアが増量し、マルチスレッド性能が大幅に向上(アーキテクチャは同じ)
    各モデルでEコア(高効率コア)が増量され、マルチスレッド性能が大きく向上しています。前世代からCore i9は8個、Core i7/i5は4個、Eコアが増量されています。これによってEコアの数は、Core i9が16個(8個→16個)、Core i7/i5が8個(4個→8個)となり、合計コア数はCore i9は24コア(32スレッド)、Core i7は16コア(24スレッド)、Core i5は14コア(20スレッド)となりました(いずれもK付きのもの)。
  • キャッシュとクロックの向上
    Eコアの追加に加え、キャッシュとクロックも向上しており、性能向上に貢献しています。Core i9のL2+L3の合計キャッシュは、前世代の44MBから68MBで約54.5%増量し、最大クロックも5.2GHzから5.8GHzで約11.5%アップしました。
  • マルチスレッド性能が前世代より41%向上(12900K vs 13900K)
    Core i9のマルチスレッド性能は前世代から41%向上したとのことです。ただし、これはEコアが8個追加されたCore i9の話なので、4個追加のCore i7/i5では向上率はもう少し低くなると思われる点に注意が必要です。
  • シングルスレッド性能が前世代より15%向上(12900K vs 13900K)
    シングルスレッド性能は前世代から15%向上としています。改良版としては大きめの向上ですが、Core i9では最大クロックが前世代から約11.5%アップしていますから、設計によるものというよりはクロック向上によるものが大きいと思います。
  • ゲーミング性能が前世代より最大24%向上
    ゲーム性能については前世代より最大24%向上とのことです。かなり大きな向上率ですが、ゲーム性能はタイトルによって大きく変わるため、「最大」での比較は個人的にはあまり参考にしていないです。とはいえ、キャッシュが大幅に増えているので、それなりに向上していてもおかしくないと思います。
  • 消費電力は前世代より増加していそう
    細かい仕様は後に見ていきますが、MTP(最大ターボ電力)の数値が前世代から増えており、消費電力は全体的に増加していそうな感じです。ベースがそのままでEコアが追加なので仕方ないですが、元から電力面ではRyzenに対して分がやや悪かったので、実際にどうなっているのかは気になるところです。

前世代との比較

第13世代Core(Raptor Lake)の主にコア周りの主要な仕様を、前世代の第12世代Core(Alder Lake)と比較しています。

第12世代Core
Alder Lake
第13世代Core
Raptor Lake
プロセス Intel 7(10nm) Intel 7 改良版(10nm)
ソケット LGA1700 LGA1700
コア(最大)
16
24
スレッド(最大)
24
32
Pコア(最大)
8
8
Eコア(最大)
8
16
ベース電力
125W
125W
最大ターボ電力 241W 253W
最大クロック
5.2GHz
5.8GHz
L2キャッシュ
(最大)
14MB
Pコア:コアあたり1.25MB
Eコア:クラスタあたり2MB
32MB
Pコア:コアあたり2MB
Eコア:クラスタあたり4MB
L3キャッシュ
(最大)
30MB 36MB
メモリ
DDR4-3200
DDR5-4800
DDR4-3200
DDR5-5600

やはり気になるのはEコアとキャッシュの増量です。

まずEコアですが、前世代の最大8コアから最大16コアになりました。K付きではCore i9で8個増量、Core i7/i5で4個増量です。これだけでもマルチスレッド性能は大きく向上します。

それに加え、キャッシュも大幅に増量している点も大きいです。Pコアだけ見ても、L2キャッシュがコアあたり2MBになり、前世代の1.25MBから大きく増量しています。追加されるEコアにもキャッシュが付属しますし、全体として大きな増量となっています。第12世代からの改良版ということで、恐らくIPC向上が難しいため、ゲーム性能をキャッシュで伸ばそうという意図があったのかもしれません。

ラインナップ(K付き)

最初に発表されたモデルを見ていきます。まず登場するのはCore i5、Core i7、Core i9のK付きモデルです。

※価格は北米での希望小売価格になります。

簡易比較
CPU名
コア
(P+E)
スレッド クロック
定格 / 最大
ベース電力 最大
ターボ電力
iGPU キャッシュ
合計
希望
小売価格
Core i9-13900K 24
(8+16)
32 P:3.0 / 5.8GHz
E:2.2 / 4.3GHz
125W 253W UHD 770 L3:36MB
L2:32MB
$589
Core i9-13900KF 24
(8+16)
32 P:3.0 / 5.8GHz
E:2.2 / 4.3GHz
125W 253W 無し L3:36MB
L2:32MB
$564
Core i7-13700K 16
(8+8)
24 P:3.4 / 5.4GHz
E:2.5 / 4.2GHz
125W 253W UHD 770 L3:30MB
L2:24MB
$409
Core i7-13700KF 16
(8+8)
24 P:3.4 / 5.4GHz
E:2.5 / 4.2GHz
125W 253W 無し L3:30MB
L2:24MB
$384
Core i5-13600K 14
(6+8)
20 P:3.5 / 5.1GHz
E:2.6 / 3.9GHz
125W 181W UHD 770 L3:24MB
L2:20MB
$319
Core i5-13600KF 14
(6+8)
20 P:3.5 / 5.1GHz
E:2.6 / 3.9GHz
125W 181W 無し L3:24MB
L2:20MB
$294

Ryzen 7000シリーズよりリーズナブルに見える

各モデルについてもそれぞれ触れていこうと思いますが、まずは全体的な話から。価格はCore i9とCore i7は先代と同じで、Core i5のみ30ドル値上げされています。末尾Fのモデルは、元モデルからそれぞれ25ドル安くなっています。

競合するRyzen 7000シリーズでは「Ryzen 9 7950X(16コア)」が699ドル、「Ryzen 9 7900X(12コア)」が549ドル、「Ryzen 7 7700X(8コア)」が399ドル、「Ryzen 5 7600X(6コア)」が299ドルとなっていたので、Core i5およびCore i7は競合モデルとほぼ同じで、Core i9は100ドルちょっと安いという感じです。

性能向上率の発表を信じるなら、Core i7以下では恐らく第13世代Coreの方がマルチスレッド性能的に明らかに有利な上に価格は同等です。また、Core i9についても同等クラスの性能が期待できますから、それで100ドル以上安いのは嬉しいです。

日本では円安の影響もありますし、実売価格がどうなるかはわからないものの、発表内容的にはRyzen 7000シリーズよりもリーズナブルに見えます。

Ryzen 7000の方が長期サポートされそうなソケットAM5採用な点では優位性があるように見えるものの、発売後すぐはマザーボードが高価なことが予測されています。

対する第13世代Coreは前世代から引き続きLGA1700が採用されるので、既に発売されやや価格が落ちているIntel 600シリーズ チップセットも利用できるため、プラットフォーム面でも費用を抑えることが可能です(対応はベンダー次第なのと、BIOS更新が必要となる点に注意)。また、DDR4も利用できます。

上記のことから、少なくとも現状での費用およびコスパ面では明らかに第13世代Coreが優位に見える印象です。

Core i9-13900K:Eコア8個増えたのに価格据え置き

Core i9は前世代からEコアが8個追加され、合計24コア(8P+16E)となりました。前世代ではCore i7とのコア構成の差がEコア4つ分でしたが、Eコア8つ分へと広がりました。また、Eコアが多く増えるということはEコアに付属するキャッシュも増えるということなので、キャッシュ総量は前世代から約1.54倍と大幅に増量しています。

それにも関わらず希望小売価格が据え置きだったため、マルチスレッド性能コスパが非常に良さそうな印象です。前世代でのCore i9の選択は、コスパ重視というよりは予算に余裕がある人用という、ハイエンドによくある感じでしたが、第13世代からはマルチスレッド性能コスパ重視でもかなり有力な選択となりそうです。価格が高価なのは変わらないので、予算に余裕がある人用というのは変わりませんが、マルチスレッド性能コスパを重視したい人は以前よりも無理して手を出す価値が高くなったと思います。

また、Eコアが8個も追加されて懸念されたのが電力面ですが、意外にも前世代と大して変わらない仕様でした。相変わらずいわゆる超高消費電力の爆熱CPUではありますが、カタログスペック上では前世代とは大差なかったです。

日本では円安の影響があるため実売価格次第ではありますが、前世代よりも選ばれ易いCore i9という印象です。

Core i7-13700K:前世代のCore i9と同じコア構成に。電力面が気になる

Core i7は前世代からEコアが4個追加され、合計16コア(8P+8E)となりました。前世代のCore i9と同じコア構成です。

それにも関わらず希望小売価格は据え置きなので、コスパは非常に良いと思います。Ryzen 7000で価格的に競合となるのは「Ryzen 7 7700X」ですが、マルチスレッド性能では前世代の時点で上回っているため、圧勝ということになり、その他の面でも恐らく大きく負けることはないので、明らかに有利だと思います。

しかし、Core i9はEコア8個追加で価格据え置き、Core i7は価格据え置きだけどEコア4個追加ですから、Core i9との相対比較では立場はちょっと悪くなったかなという印象です。

また、価格だけでなく電力面でもCore i9に対して優位性を感じにくくなっています。前世代のCore i7-12700Kでは最大ターボ電力は190Wだったのに、13700Kでは253Wとなっており、大幅に増えてしまっています。高負荷時に必ずこの値まで上がるというものではないですが、多少余裕を持たせるにしても高すぎる数値なので、やはりEコア追加分の影響と見るのが良さそうです。

電源容量分の費用増加もありますが、前世代の190Wならなんとか空冷でも高性能なものなら対応が可能というレベルだったのが、253Wはさすがに水冷推奨レベルということになったのが痛いです。CPU自体の価格が据え置きだったとしても、その他の面での費用が増えてしまっています。

まだ無印モデルの発表がまだなので、そちらではややマシになっている可能性もありますが、少なくともCore i7のK付きモデルは前世代よりは手を出しにくくなったと感じます。

Core i5-13600K:ミドルレンジとは思えないコア数

Core i5-13600Kは前世代からEコアが4個追加され、合計14コア(6P+8E)となりました。前世代のデスクトップ向けシリーズでは無かったコア構成です。前世代の10コアの時点で中々でしたが、もうミドルレンジとは到底思えないほどのコア数になっています。

希望小売価格は先代から30ドル値上げとなっています。Core i9とCore i7が据え置きだったので出来れば維持して欲しかったところですが、ミドルレンジとは思えないコア数ですから、まぁ仕方ないとも思えます。それに、値上げ後でも「Ryzen 7 7600X」と同じくらいの価格で、マルチスレッド性能は間違いなく圧勝ですから、十分需要は保てるのかなと思います。

ただし、これから登場するであろうCore i5(無印)の値上がりへの布石の可能性もあるので、そこは少し怖いですね。また、同じくこれから登場するであろうCore i7(無印)との価格差も小さくなっていると思われるので、そこが来るとコスパ的にはやはり負けてしまいそうな予感です。第12世代からCore i5(K付き)は悪くないコスパのモデルになったと思いますが、どうしてもCore i7の下位モデルとの価格差が小さくなってしまうため、ネームバリュー的にも選ばれにくいのが難しいところですね。

消費電力に関してですが、Core i7ほどではないながら、前世代からは増加してしまっています。最大181Wとなっており、前世代のCore i7(無印)とほぼ同じ設定です。一応空冷で運用可能に思えるレベルですが、高性能なものが求められます。虎徹などの120mmファン1基のものでは頼りなさが強くなってしまうのはやや痛いところです。とはいえ、最近はDEEPCOOLなどから安価で高性能な空冷クーラーが次々と出ていますから、思ったほど費用面での影響はないかもしれません。問題は小型ケースで採用しにくくなった方かもしれません。

最後に価格ですが、実売価格は「Ryzen 5 7600X」の価格を見ると5万円とかになってしまう気がしますが、出来れば5万円未満だと嬉しいところですね。

あとがき

以上、ざっくりと第13世代CoreのK付きについて見ていきました。

やはりマルチスレッド性能面はかなり強そうです。Eコア増加による底上げがメインですが、これが強い。Ryzen 7000シリーズ相手でも、Ryzen 9以外にはコスパでは圧勝な予感がする内容でした。

価格も気になるところですが、特に気になるのはやはり消費電力と発熱です。Core i9についてはもう恒例なので諦めもつく部分ですが、気になるのはCore i7以下の上昇です。

特に、Core i7-13700Kの最大253Wは悪い意味で予想外でした。恐らくは無印モデルでは多少改善されるので、そこを待ちたい人は多いかもしれません。

といった感じで内容は以上になります。新世代CPUやGPUが次々と発表・登場する忙しい2022年秋~冬ですが、待ちに待った新世代の続報をわくわくしながら待って過ごしていきたいと思います。

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