「Ryzen 7 7700X」「Ryzen 5 7600X」ざっくり評価【性能比較】

遂に登場したZen 4アーキテクチャのRyzen 7000シリーズの評価です。本記事では「Ryzen 7 7700X」と「Ryzen 5 7600X」を扱いますが、「Ryzen 9 7950X」と「Ryzen 9 7900X」も同時に投入されます。一つの記事で全てを網羅すると長くてまとまりが悪くなりそうなので、分けて投稿することにしました(Ryzen 9については既に投稿済みなので、気になる方はこちらをご覧ください →https://pcfreebook.com/article/ryzen-9-7950x-and-ryzen-9-7900x-first-review.html)。

また、海外発表での発売日は9月27日でしたが、日本においては9月30日の19時から発売予定となっており、少し差がある点に注意です。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年9月28日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

簡易比較表

簡易比較表です。

Zen 4の仕様(Zen 3との比較)

まずはZen 4の各仕様をZen 3と比較しながら見ていきたいと思います。下記の表にまとめています。Zen 4については初発の4モデルの仕様に基づいており、今後追加されるモデルによって変化がある可能性がある点に注意です。また、本記事は「Ryzen 7 7700X」および「Ryzen 5 7600X」の評価記事ですが、Ryzen 9の仕様も含みます。

Zen 3
Ryzen 5000
Zen 4
Ryzen 7000
プロセス 7nm 5nm
ソケット AM4 AM5
コア
6~16コア
6~16コア
スレッド
12~32スレッド
12~32スレッド
I/Oダイ
12nm
6nm
TDP
65W~105W
105W~170W
PPT 76W~142W 142W~230W
クロック(最大)
4.9GHz
5.7GHz
キャッシュ
35MB~72MB
L2:コアあたり0.5MB
L3:CCDあたり32MB
38MB~80MB
L2:コアあたり1MB
L3:CCDあたり32MB
内蔵GPU 基本無し
末尾Gのみ:Vega
全モデルRDNA 2搭載
PCIe PCIe 4.0 PCIe 5.0
メモリ DDR4-3200 DDR5-5200

Ryzen 7000シリーズのZen 4では、まず製造プロセスが前世代の7nmから5nmへと微細化されています。また、CPUだけでなくI/Oダイも前世代の12nmから6nmへと微細化を果たしており、プロセス面ではチップ全体で刷新された形となっています。

また、ソケットもAM5へと久しぶりの変更になった他、PCIeは5.0、メモリもDDR5対応になりました。各方面で大きな変更となる世代更新となっていることがわかります。メモリはDDR5のみの対応となっており、Intelよりも汎用性はやや劣る点となっています。しかし、DDR5メモリ価格も大分下がってきており、これからも価格低下が見込まれているので、発売後すぐに購入したい訳でなければそこまで問題にはならないかなと思います。ただし、GPU側のPCIe 5.0についてはチップセット末尾E(発表ではX670EとB650Eの2つ)となっており、従来モデルよりも高価になる点には注意が必要です。

コア数は据え置きとなっており、前世代の6~16コアと全く同じです。CCD構成なども含めて同じです。一応コアあたりのL2キャッシュが前世代の0.5MBから1MBへと増えた点では僅かな向上がありますが、正直コア部分については印象的とは言えない仕様になっていると思います。ただし、Intelでいうと全てがPコア(高性能コア)となっているため、純性能では劣るEコア(高効率コア)を含むIntel CPUとはコア数の差だけでは比較できない点は留意です。

また、内蔵GPUについても、Zen 4ではRDNA 2アーキテクチャのものがAPU以外でも搭載されることとなりました。主要モデルでのコンピュートユニット数は2で統一されるようで、ゲーム性能は低いためゲーマーにとっては価値を感じないかもしれませんが、オフィスPCやライトユーザー向けのPC向けとしては非常に意味のある変更となっています。特に、Ryzen 5 や Ryzen 7 はライトユーザーやオフィスPCでの利用も検討される可能性が高いモデルだと思うので、GPUの統合は大きいです。

最後に明らかに悪化したのはTDPです。デフォルトのTDPが前世代の65W~105Wから105W~170Wと大きく増加しています。PPTも前世代の76W~142Wから142W~230Wへと大きく増加しています。「Ryzen 5 7600X」および「Ryzen 7 7700X」においてはデフォルトTDPが105W、PPTが142Wとなっています。前世代からは増加したため悪化と言える部分ですが、Ryzen 9のPPT:230Wよりは圧倒的に少なく、空冷でも運用可能なレベルなので、数字の差ほどは汎用性は変わらないかなと思います。

実際の消費電力や効率については後で触れていきますが、このTDP上昇の原因はクロックの上昇に他、Zen 4ではダイサイズがZen 3よりも少し縮小したにも関わらず、トランジスタ数が約1.5倍と格段に増えており、トランジスタ密度が上がったことで、熱密度が高まりチップが熱くなり易くなっていることが原因と言われています。

既存モデルとの比較

※価格は、Ryzen 7000シリーズは国内想定価格で、その他は2022年9月27日時点でのおおよその市場価格です。

簡易比較
CPU名 製造
プロセス
コア
/スレッド
クロック
定格 / 最大
TDP iGPU L3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 7950X 5nm 16/32 4.5 / 5.7GHz 170W RDNA 2 (2CU) 64MB 約 117,800円
Ryzen 9 7900X 5nm 12/24 4.7 / 5.6GHz 170W RDNA 2 (2CU) 64MB 約 92,500円
Core i9-12900KS 10nm 16(8+8)
/24
3.4 / 5.5GHz
2.5 / 4.0GHz
150W UHD 770 30MB 約 98,800円
Core i9-12900K 10nm 16(8+8)
/24
3.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W UHD 770 30MB 約 86,000円
Ryzen 9 5950X 7nm 16/32 3.4 / 4.9GHz 105W 無し 64MB 約 73,500円
Ryzen 7 7700X 5nm 8/16 4.5 / 5.4GHz 105W RDNA 2 (2CU) 32MB 約 66,800円
Core i7-12700K 10nm 12(8+4)
/20
3.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W UHD 770 25MB 約 60,000円
Core i7-12700 10nm 12(8+4)
/20
2.1 / 4.9GHz
1.6 / 3.6GHz
65W UHD 770 25MB 約 51,300円
Ryzen 9 5900X 7nm 12/24 3.7 / 4.8GHz 105W 無し 64MB 約 47,700円
Ryzen 5 7600X 5nm 6/12 4.7 / 5.3GHz 105W RDNA 2 (2CU) 32MB 約 49,900円
Core i5-12600K 10nm 10(6+4)
/16
3.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W UHD 770 20MB 約 42,800円
Ryzen 7 5800X3D 7nm 8/16 3.4 / 4.5GHz 105W 無し 96MB 約 56,000円
Ryzen 7 5800X 7nm 8/16 3.8 / 4.7GHz 105W 無し 32MB 約 36,500円
Ryzen 7 5700X 7nm 8/16 3.4 / 4.6GHz 65W 無し 32MB 約 34,500円
Core i5-12400 10nm 6/12 2.5 / 4.4GHz 65W UHD 730 18MB 約 28,800円
Ryzen 5 5600X 7nm 6/12 3.7 / 4.6GHz 65W 無し 32MB 約 23,500円

Ryzen 5とRyzen 7はコア仕様的にCoreに不利

やはり日本においては円安の影響があるため、価格は高いです。記事執筆時点ではまだ発売されていませんが、予定価格が既に登場しており、Ryzen 9 7950Xは117,800円、Ryzen 9 7900Xは92,500円、Ryzen 7 7700Xは66,800円、Ryzen 5 7600Xは49,900円となっています。恐らくは今回のRyzen 7000シリーズに限らず、円安が続く限りは新世代のCPUやGPUは従来より高価になると思います。そのため、価格の相対評価は第13世代Core登場までは具体的にはできなさそうです。

とはいえ、Ryzen 5/7はEコアのあるCoreに対してはコア仕様で明らかに不利なので、発表の価格では分が悪そうなのが第一印象です。

Ryzen 7000シリーズのコア数は前世代から引き続き、Ryzen 7は8、Ryzen 5は6です。対する第12世代CoreもPコア(高性能コア)の数は同じで、Core i7が8、Core i5が6です。ただし、価格的に競合するCore i5のK付き以降は更にEコア(高効率コア)が4個追加されており、合計コア数はCore i7が12コア、Core i5(K付き)は10コアです。また、第13世代ではPコアの仕様こそ変わらないものの、更にEコアが追加されると予測されています。

このように、Ryzen 5/7のコア仕様はCoreに対して明らかに不利です。詳しい性能はこの後見ていきますが、価格で優位を取れなければPコアの性能差だけでこの差を埋める必要がありますが、さすがに厳しい気がします。

コア数に関しては、Ryzen 9ではPコアでの数の優位性があるために不利とは言い切れない部分でしたが、Ryzen 5/7では課題となる点には注意が必要です。また、単純にコアあたりの価格でもRyzen 9の方が少し安いので、マルチスレッド性能コスパではRyzen 9に軍配が上がります。ただ、幸いゲーミング性能では差がほとんどないため、安く高いゲーミング環境を整えたいなら優位性はあります。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。使用された使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」となっています。使用されたメモリは、DDR5に対応している第12世代CoreおよびRyzen 7000シリーズでは「DDR5-6000」で、その他は「DDR4-3600」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Ryzen 9 7950X
37523
Ryzen 9 7900X
28655
Core i9-12900K
27780
Ryzen 9 5950X
25813
Core i7-12700K
22232
Ryzen 9 5900X
21789
Ryzen 7 7700X
19810
Core i5-12600K
17699
Ryzen 7 5800X
15758
Ryzen 5 7600X
15242
Ryzen 7 5800X3D
14688
Core i9-10900K
14285
Ryzen 7 5700X
13660
Core i9-11900K
13338
Core i7-11700KF
12911
Core i7-10700K
12138
Core i5-12400F
11715
Ryzen 5 5600X
11225
Core i5-11600K
10468
Core i5-10600K
9384
Core i5-10400F
8100
Core i5-11400F
7552
参考:TechPowerUp

コア数の割には優れた性能だけど、Eコアの差が大きく第12世代Coreの競合モデルに負ける

マルチスレッド性能はRyzen 7/5の最大の弱点です。やはりEコア分の差が大きいです。

「Ryzen 7 7700X」は前世代の5700Xを約45%上回る性能となっており、Core i5-12600Kを約12%上回る性能となっています。8コアのCPUとしては破格の性能で素晴らしいです。ただし、現在の市場で競合するCore i7-12700Kには約11%劣る性能となっています。

「Ryzen 5 7600X」は前世代の5600Xを約35.8%上回っており、Ryzen 7 5700XやCore i9-11900Kを10%以上も上回る性能となっています。前世代の8コア以上の性能を発揮しており、6コアCPUとしては非常に素晴らしい性能ですが、現在の市場で競合するCore i5-12600Kには約13.9%劣る性能となっています。

Core側はこれから第13世代が出てくるにも関わらず、旧世代化する第12世代の競合モデルに対してもマルチスレッド性能では10%以上劣る結果となっており、予想通り厳しいです。7モデル以下では、マルチスレッド性能重視ならCore側が有利な環境が暫くは続くことになりそうです


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Ryzen 9 7950X
2051
Core i9-12900K
2030
Ryzen 9 7900X
2026
Ryzen 7 7700X
2001
Ryzen 5 7600X
1963
Core i7-12700K
1939
Core i5-12600K
1921
Core i5-12400F
1734
Core i9-11900K
1675
Ryzen 9 5950X
1638
Ryzen 9 5900X
1623
Ryzen 7 5800X
1606
Core i7-11700KF
1600
Core i5-11600K
1562
Ryzen 5 5600X
1540
Ryzen 7 5700X
1538
Ryzen 7 5800X3D
1496
Core i5-11400F
1414
Core i9-10900K
1378
Core i7-10700K
1358
Core i5-10600K
1316
Core i5-10400F
1173
参考:TechPowerUp

シングルスレッド性能は前世代から格段に向上し、第12世代Coreの競合モデルをわずかに上回る

シングルスレッド性能は前世代から格段に向上しており、Ryzen 5000シリーズでのCoreよりシングルスレッド性能が大幅に低いという印象を払拭する性能となっています。

「Ryzen 7 7700X」は前世代の5700Xを約30%上回る性能となっており、Core i7-12700Kも約3.2%上回ります。「Ryzen 5 7600X」は前世代の5600Xを約27.5%上回る性能となっており、Core i5-12600Kも約2.2%上回ります。

第12世代の競合モデルよりもわずかに高い性能となっており、Eコア差でマルチスレッド性能では劣るものの、Pコアの性能では勝っていると言えると思います。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。

今回は12種類のゲームで測定したFPSの幾何平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

12種類のゲームでの幾何平均fps(1080p)
CPU名称 スコア
Core i9-12900K
171.6
Core i7-12700K
168.3
Ryzen 7 7700X
164.7
Ryzen 9 7950X
164.7
Ryzen 9 7900X
163.6
Core i5-12600K
163.3
Ryzen 5 7600X
160.7
Ryzen 7 5800X3D
158.3
Ryzen 9 5950X
152.2
Ryzen 9 5900X
150.9
Core i5-12400F
150.4
Ryzen 7 5800X
148.4
Core i9-11900K
147.3
Ryzen 7 5700X
145.4
Core i7-10700K
145.1
Ryzen 5 5600X
141.7
Ryzen 7 5700G
133.8
Core i5-11400F
128.1
Core i9-10900K
125.8
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの幾何平均fps(1440p)
CPU名称 スコア
Core i9-12900K
146.2
Core i7-12700K
144.5
Ryzen 7 7700X
141.9
Ryzen 9 7950X
141.2
Core i5-12600K
141.1
Ryzen 9 7900X
140.8
Ryzen 7 5800X3D
140.4
Ryzen 5 7600X
140.2
Ryzen 9 5950X
135.6
Ryzen 9 5900X
134.9
Core i5-12400F
134.2
Ryzen 7 5800X
133.5
Core i9-10900K
133.2
Ryzen 7 5700X
131.6
Core i9-11900K
131.0
Core i7-10700K
130.3
Ryzen 5 5600X
128.3
Ryzen 7 5700G
122.3
Core i5-11400F
120.4
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの幾何平均fps(4K)
CPU名称 スコア
Core i9-12900K
96.7
Core i7-12700K
96.5
Core i5-12600K
96.1
Ryzen 7 5800X3D
95.8
Ryzen 9 7950X
95.7
Ryzen 7 7700X
95.5
Core i5-12400F
95.5
Ryzen 5 7600X
95.4
Ryzen 9 7900X
95.3
Ryzen 9 5950X
95.1
Ryzen 9 5900X
94.8
Ryzen 7 5800X
94.6
Core i9-10900K
94.5
Ryzen 7 5700X
94.3
Ryzen 5 5600X
93.8
Core i7-10700K
93.7
Core i9-11900K
93.3
Ryzen 7 5700G
90.8
Core i5-11400F
90.5
参考:TechPowerUp

前世代から改善し、第12世代Coreと同等クラスのゲーミング性能に

ゲーミング性能も前世代から改善し、第12世代Coreと同等クラスまで向上しています。今回のテストでは平均では第12世代CoreのK付きモデルにはわずかに届かなかったものの、1080pで「Ryzen  7 7700X」が「Core i7-12700K」に約2.1%、「Ryzen 5 7600X」が「Core i5-12600K」に約1.6%とわずかに劣る程度の結果となっており、差としては誤差レベルです。ゲームによってはリードしているものもありますし、たまたまテスト対象のゲームがCore側に有利だったとか、もっと高性能なGPUなら結果が変わるという可能性もあるとは思います。別の記事では第12世代Coreを上回っているレビュー記事も見掛けましたし、同等クラスになったと言って差し支えないと思います。

また、Ryzen 9と比較しても性能差がほとんどないため、手頃なゲーマー向けのCPUとしては強みがあるように見えます。ただし、コスパを考える際にはRyzen 5/7においては第12世代Coreに前述のマルチスレッド性能で負けている点に注意が必要です。

仮にRyzenの方が第12世代Coreよりゲーム性能が若干上だと仮定しても、第12世代Coreの方が安価かつマルチスレッド性能がやや上ですから、有利とは言い難いと思います。

内蔵GPU性能

Zen 4(Ryzen 7000)ではRDNA 2の内蔵GPUがAPUモデル以外でも統合されることとなりましたので、その性能もざっくりと見ていきたいと思います。

初発モデル(末尾X)ではGPUのコンピュートユニット(CU)数は全て2で、GPUクロックも共通で2200MHzです。よって、ゲームは特に軽いものでのみ利用可能で、基本的には軽作業やグラボ無しPCでの利用のためという感じです。モデル間の性能差もありません。

比較は13種類のゲームを1080pの最低設定で動作させた際の幾何平均fpsで行っています。参考用にエントリーレベルの単体GPUの性能も含めています。

13種類のゲームでの幾何平均fps(1080p 最低設定)
CPU名称 スコア
GTX 1060
109.4
RX 6400
107.7
GTX 1630
63.0
Ryzen 7 5700G
48.5
Ryzen 5 5600G
45.2
GT 1030
33.0
Core i9-12900K
26.4
Ryzen 5 7600X
25.1
Ryzen 9 7950X
25.0
Ryzen 9 7900X
25.0
Ryzen 7 7700X
25.0
Core i9-11900K
22.1
参考:TechPowerUp

Coreよりも少し低い性能

CU数が2のRDNA 2の内蔵GPUのゲームでのパフォーマンスは、第12世代CoreのUHD Graphics 770より少し低いものとなっています。今回参考にしたテストでは近い数値となっていますが、他レビューだともう少し差があることが多かったです。

やはり重いゲームなどに使うには厳しい性能で、基本的には画面出力用という感じになると思います。とはいえ、Ryzen 5/7においてはオフィスPCや小型PCなどでの汎用性が大きく高まる仕様変更です。

また、ハードウェアエンコードおよびデコードも当然利用できるため、エントリーレベルのGPUで、それらの機能性が乏しいGPUを補う形で利用できるのもメリットです。


その他

消費電力・電力効率

ざっくりとした消費電力と電力効率を見ていきます。電力はCPUのみのものとなっています。

電力効率はCinebenchのスコアを消費電力で割った、1Wあたりのスコアで比較しています。スコアが高い方が有利ですが、性能が高い方がワークロードを早く終えることができるという利点があるので、この電力効率が良いだけではなく性能の高さも重要だという点には注意が必要です。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称 消費電力
Core i5-11400F
60W
Ryzen 7 5700X
63W
Ryzen 5 5600X
63W
Core i5-12400F
67W
Ryzen 7 5700G
79W
Ryzen 7 5800X3D
89W
Ryzen 5 7600X
99W
Ryzen 9 5950X
118W
Ryzen 7 5800X
121W
Core i5-12600K
128W
Ryzen 9 5900X
131W
Ryzen 7 7700X
135W
Core i9-11900K
152W
Core i7-10700K
156W
Core i9-10900K
164W
Core i7-12700K
174W
Ryzen 9 7900X
185W
Ryzen 9 7950X
235W
Core i9-12900K
257W
参考:TechPowerUp

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称 1Wあたりのスコア
Ryzen 9 5950X
220.9
Ryzen 7 5700X
218.2
Ryzen 7 5700G
192.5
Ryzen 5 5600X
181.1
Core i5-12400F
179.8
Ryzen 9 7950X
173.4
Ryzen 9 5900X
169.2
Ryzen 9 7900X
157.0
Ryzen 5 7600X
156.2
Ryzen 7 5800X3D
151.7
Ryzen 7 7700X
151.0
Core i5-12600K
136.1
Core i7-12700K
131.4
Core i5-11400F
131.4
Ryzen 7 5800X
126.3
Core i9-12900K
107.3
Core i9-11900K
99.0
Core i9-10900K
94.8
Core i7-10700K
82.7
参考:TechPowerUp

消費電力は前世代から増加するも、Ryzen 9ほど問題ではない

「Ryzen 7 7700X」と「Ryzen 5 7600X」はデフォルトTDPが105W、PPTが142Wに設定されており、前世代から消費電力および発熱が増加しています。

Blender動作時の消費電力は、Ryzen 7 7700Xは135W、Ryzen 5 7600Xは99Wという結果でした。前世代からは増加しているものの、これなら空冷で十分対応できるレベルですし、第12世代Coreに対しても不利という訳ではないので、そこまで問題にはならなさそうです。

「Ryzen 5 7600X」のPPTも142Wとなったため、空冷クーラーでも高性能なものでないと厳しくなるかもというのが懸念点でしたが、実際には高負荷時でも100W程度しか消費しないようなので、恐らくは虎徹クラスのCPUクーラーでも対応可能なのは朗報です。クーラーが付属しなくなったために別製品が必須となったこと以外には、冷却要件はそこまで変わらないと思います。

電力効率は優れているけど、前世代からはやや悪化

「Ryzen 7 7700X」および「Ryzen 5 7600X」の電力効率は、第12世代Core(省電力モデル除く)を上回っており優れています。

ただし、Ryzen 9と同様に前世代からはやや悪化しています。1WあたりのCinebenchのスコアは、「Ryzen 7 7700X」は前世代の5800Xよりは約19.6%優れていますが、5700Xよりは約28.4%劣っています。「Ryzen 5 7600X」は、5600Xよりも約13.7%劣っています。

性能が大きく向上しているため一概に悪いとは言えない部分ですし、依然として第12世代Coreには有利なためマイナス評価とはならないですが、少し残念だった部分です。

プロセス微細化を伴う新世代で電力効率が悪化するというのはあまり聞かないので、少し気にはなるところです。やはりTDPの大幅な増加が影響しているのではと疑ってしまいますね。

まとめ

ざっくりと見てきましたが、評価をまとめています。

Ryzen 7 7700X

良い点
  • Core i5-12600Kを上回る高いマルチスレッド性能
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 優れたゲーミング性能
  • 優れた電力効率
  • クーラーはAM4のものと互換性あり
  • 空冷でも運用可能
  • PCIe 5.0のストレージとGPUに対応(GPUは末尾Eチップセットで対応)
  • RDNA 2内蔵GPUの追加(性能は高くない)
  • AVX512命令セットに対応

気になる点
  • 高価(国内想定価格:66,800円)
  • 第12世代Core i7よりもマルチスレッド性能コスパが大きく劣る
  • 消費電力および発熱がやや多い(TDP:105W、PPT:142W)
  • 前世代から電力効率は少し悪化
  • DDR4には未対応

Ryzen 5 7600X

良い点
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 価格の割には優れたゲーミング性能で、ゲームコスパが良い
  • 優れた電力効率
  • 比較的省電力(TDP:105W、PPT:142Wだけど、実際には高負荷時で100W程度)
  • クーラーはAM4のものと互換性あり
  • PCIe 5.0のストレージとGPUに対応(GPUは末尾Eチップセットで対応)
  • RDNA 2内蔵GPUの追加(性能は高くない)
  • AVX512命令セットに対応

悪い点
  • コア数の割には高価(6コアで発売時は約5万円)
  • 第12世代Coreにマルチスレッド性能コスパは大きく劣る
  • 前世代から電力効率は少し悪化
  • DDR4には未対応
  • 付属クーラー無し

Ryzen 7 7700X:非常に優れた8コアCPUだけど、Core i7より有利かは怪しい

Ryzen 7 7700Xは前世代から性能を大きく向上させた、優れた8コアCPUです。Ryzen 9よりも大幅に安価ながらゲーミング性能はほとんど変わらないため、ゲーム単体でのコスパはRyzen 9を上回るのが魅力です。

しかし、Core i7相手だとEコアでの差があるため、特にマルチスレッド性能面では明らかに不利なのが痛いです。

第12世代CoreシリーズではCore i5(K付き)以降のモデルは全モデル従来のPコア(高性能コア)に加えてEコア(高効率コア)が追加されており、Core i7ではPコアは同じ8コアですが、Eコアが4つ追加されており、合計12コアとなっています。Eコア分マルチスレッド性能では明らかに不利になります。

また、価格も第12世代のCore i7の方が安いですし、ゲーミング性能でも印象的と言えるほどの差がないです。更に、少し後に登場する予定の第13世代CoreではEコアが更に追加される見込みなので、もっと不利になる可能性があります。

一応、消費電力や電力効率では第12世代Core i7よりもやや優位ですが、Ryzen 9やCore i9と違いCore i7は空冷でも高性能なものなら運用が可能なため、大きな差とは考えにくく、優位性としては弱い気がします。

価格については想定で66,800円となっており、8コアCPUとしては非常に高価です。これから登場するCPUやGPUは円安の影響もあり軒並み高騰するでしょうから、価格の評価は現時点では難しいですが、この価格なら第12世代のCore i7でいいかなというのが正直な感想です。

「Ryzen 7 7700X」を優先して選ぶ理由をあえて考えるとすれば、プラットフォーム面です。対抗のCoreで現在採用されているソケットの「LGA1700」は第13世代までの採用と見られており、短めのサポートとなる可能性が高いため、数年後にCPUを替えるとなった場合に足枷となってしまうことになります。対して、「Zen 4」から採用のソケット「AM5」は最低でも2025年まではサポートが明言されており、AM4が6年という長きに渡って最新世代としてサポートされた実績もありますから、期待できます。

パーツ交換などで長く一つのPCを使っていきたいと感じている方には、「Ryzen 7 7700X」というよりはZen 4プラットフォームの方が価値があると思います。

Ryzen 5 7600X:最も手頃なRyzen 7000で優れたゲーミング性能は魅力だけど、総合コスパは正直微妙かも

Ryzen 5 7600Xは、Zen 4採用のRyzen 7000シリーズの初発モデルでは最も安価ながら、ゲーミング性能は大して変わらないのが魅力のCPUです。その性能は先代の5600Xから格段に向上し、6コアとしては破格の性能のCPUとなっています。

しかし、価格自体は安くなく(想定価格:49,900円)、この価格で6コアは少なく、マルチスレッド性能コスパが悪いのが気になります。

発売時の既存モデルで競合するのは「Core i5-12600K」になると思いますが、高性能コア(Pコア)の数は同じ6ですが、12600KではEコアが4つ追加されており合計10コアです。マルチスレッド性能は負けてしまいますし、価格も12600Kの方が安いので、コスパはかなり負けてしまっています。

ゲーミング性能もそこまで差がないですし、少し後に登場する予定の第13世代CoreではEコアが更に追加される見込みな上、下位モデルでもEコアを搭載すると見られているため、コスパでは完敗という形になってしまうと思います。

電力面ではやや優位ではあるものの、この性能帯では空冷運用が基本なため差が生まれにくく、そもそも性能および電力効率重視ならもっと上位のモデルを検討するはずなので、優位性としては弱い部分だと思います。高性能な付属クーラーでも付けてくれれば話は変わったかもしれませんが、クーラーの付属もありません。

7700Xでも述べたように、コスパでは正直良いとは言えない「Ryzen 5 7600X」を優先して選ぶ理由をあえて考えるとすれば、プラットフォーム面です。対抗のCoreで現在採用されているソケットの「LGA1700」は第13世代までの採用と見られており、数年後にCPUを交換を考えた場合には足枷となってしまう可能性が高いのに対し、「Zen 4」で採用の「AM5」ソケットは2025年まではサポートが明言されており、AM4が6年という長きに渡って最新世代としてサポートされた実績もありますから期待できます。

「Ryzen 5 7600X」自体の評価は正直高くはありませんが、現状最も安価な「Zen 4(AM5)」CPUです。ゲーム性能に関してはRyzen 9とも大差ない点もポイントです。そのため、ほぼゲームのみの目的の人は、今後登場するであろう新たなAM5のRyzenへの換装を期待するには最も費用を抑えて待つことが出来るCPUです。その点は一応強みとなるかもしれません。


といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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