Intelの第13世代Coreプロセッサー「Core i7-13700K」の評価記事です。
前世代のCore i9と同じ16コア構成(8P+8E)になったCore i7の性能を見ていきたいと思います。
本記事の内容は記事執筆時点(2022年10月28日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。
※追記:温度の項目を追記。
簡易比較表
前世代や競合モデルとの簡易比較表を見ていきます。
前世代との比較(第13世代と第12世代)
まずは前世代の第12世代Coreと今回登場した第13世代Coreをざっくり比較しながら見ていきたいと思います。
主な仕様を下記の表にまとめています。ただし、第13世代Coreの1弾目は末尾Kのモデルのみの投入だったため、今後追加されるであろう無印モデルなどは含まれていないため注意してください。併せるために、第12世代CoreもKモデルの仕様のみを記載しています。
第13世代Core(K) | 第12世代Core(K) ※12900KSは除く | |
---|---|---|
アーキテクチャ | Raptor Lake | Alder Lake |
プロセス | 10nm | 10nm |
ソケット | LGA1700 | LGA1700 |
コア | 14~24コア Pコア:6~8コア Eコア:8~16コア | 10~16コア Pコア:6~8コア Eコア:4~8コア |
スレッド | 20~32スレッド | 16~24スレッド |
PBP (TDP/PL1) | 125W | 125W |
MTP (TDP/PL2) | Core i7 / i9:253W Core i5:181W | Core i9:241W Core i7:190W Core i5:150W |
クロック(最大) | 5.8GHz | 5.2GHz |
L2キャッシュ | 20MB~36MB Pコアあたり2MB 4Eコアあたり4MB | 9.5MB~14MB Pコアあたり1.25MB 4Eコアあたり2MB |
L3キャッシュ | 24MB~36MB | 20MB~30MB |
内蔵GPU | UHD 770 ※末尾Fは無し | UHD 770 ※末尾Fは無し |
メモリ(定格最大) | DDR5-5600 DDR4-3200 | DDR5-4800 DDR4-3200 |
おおまかなCPU仕様の違いは以上のような感じになっています。
性能面での大きな変更点はの一つはEコアの数です。Core i7では第12世代では4Eコアだったのが8Eコアになり、合計16コア(8P+8E)となりました。これによってマルチスレッド性能も大きく向上することが期待できます。
また、このCore i7の8P+8Eというコア構成は第12世代のCore i9と同じコア構成になります。第13世代では全体的に価格が大幅に値上がりしてしまったものの、第12世代のCore i9よりは少し安い価格となっているため、前世代のCore i9クラスの性能でコスパが若干向上している点が魅力として期待されます。
Pコアの数は前世代から据え置きの8コアとなっているのは残念なものの、「Core i7-12700K」と「Core i7-13700K」とを比較すると、最大クロックが5.0GHzから5.4GHzとやや上昇しているため、コアあたりの性能は向上していることが期待できます。
更に、コア構成や世代の更新に伴い、キャッシュ量にも変化があるのも注目です。特にL2キャッシュは大きく増量しており、前世代では最大14MBだったのが最大36MBとなっています。内訳としては、前世代ではPコアあたり1.25MBだったのが2MBと1.6倍になり、Eコアについてもクラスタあたり(4Eコア)で、2MBだったのが4MBと2倍になっています。L3キャッシュもわずかに増量しています。
Core i7でもL2キャッシュが前世代の12MBから24MBへと倍増しているため、その恩恵が気になるところです。
ソケットは前世代から引き続きLGA1700となっており、新たに追加されるIntel 700シリーズチップセットだけでなく、Intel 600シリーズも利用することができるのは強みです(機能が多少異なる点や更新が必要となる点は注意)。Ryzen 7000は新しいチップセット対応となり既存のマザーボードが使えなくなった上に、新規追加のチップセットのマザーボードが従来よりも高価だったので、Coreの方が全体費用を大きく節約できるのは嬉しいです。DDR4メモリにも対応している点もありますし、プラットフォームの費用やコスパ面ではIntelの方が大きく有利な気がします。
詳しい性能はこの後見ていきますが、カタログスペック時点で気になるのは消費電力です。PBP(ベース電力)こそ125Wで変わりませんが、MTP(最大ターボ電力)が前世代から上昇してしまっています。Core i7においては253Wとなっており、前世代から60W以上も上昇してしまっています。
詳しくはこの後見ていきたいと思いますが、大幅に増量されたEコアはコア性能自体はPコアに劣りますから、高負荷時の効率的にはマイナスとなっているのではないかというのが懸念されます。
既存モデルとの比較
※価格は2022年10月28日時点でのおおよその市場価格です。CPU名のリンクはAmazonへの商品リンクです。
CPU名 | コア | スレッド | クロック 定格 / 最大 | TDP (PL1 – PL2) | iGPU | L3 キャッシュ | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 9 7950X | 16 | 32 | 4.5 / 5.7GHz | 170W – 230W | RDNA 2(2CU) | 64MB | 117,800円 |
Core i9-13900K | 24 (8P+16E) | 32 | 3.0 / 5.8GHz 2.2 / 4.3GHz | 125W – 253W | UHD 770 | 36MB | 105,800円 |
Core i9-13900KF | 24 (8P+16E) | 32 | 3.0 / 5.8GHz 2.2 / 4.3GHz | 125W – 253W | 無し | 36MB | 102,800円 |
Ryzen 9 7900X | 12 | 24 | 4.7 / 5.6GHz | 170W – 230W | RDNA 2(2CU) | 64MB | 92,500円 |
Core i7-13700K | 16 (8P+8E) | 24 | 3.4 / 5.4GHz 2.5 / 4.2GHz | 125W – 253W | UHD 770 | 30MB | 74,800円 |
Core i7-13700KF | 16 (8P+8E) | 24 | 3.4 / 5.4GHz 2.5 / 4.2GHz | 125W – 253W | 無し | 30MB | 71,800円 |
Core i9-12900KS | 16 (8P+8E) | 24 | 3.4 / 5.5GHz 2.5 / 4.0GHz | 150W – 241W | UHD 770 | 30MB | 98,800円 |
Core i9-12900K | 16 (8P+8E) | 24 | 3.2 / 5.2GHz 2.4 / 3.9GHz | 125W – 241W | UHD 770 | 30MB | 80,000円 |
Ryzen 9 5950X | 16 | 32 | 3.4 / 4.9GHz | 105W – 142W | 無し | 64MB | 78,000円 |
Core i5-13600K | 14 (6P+8E) | 20 | 3.5 / 5.1GHz 2.6 / 3.9GHz | 125W – 181W | UHD 770 | 24MB | 57,800円 |
Core i5-13600KF | 14 (6P+8E) | 20 | 3.5 / 5.1GHz 2.6 / 3.9GHz | 125W – 181W | 無し | 24MB | 54,800円 |
Ryzen 7 7700X | 8 | 16 | 4.5 / 5.4GHz | 105W – 142W | RDNA 2(2CU) | 32MB | 66,800円 |
Core i7-12700K | 12 (8P+4E) | 20 | 3.6 / 4.9GHz 2.7 / 3.8GHz | 125W – 190W | UHD 770 | 25MB | 58,000円 |
Core i7-12700 | 12 (8P+4E) | 20 | 2.1 / 4.9GHz 1.6 / 3.6GHz | 65W – 180W | UHD 770 | 25MB | 53,000円 |
Ryzen 9 5900X | 12 | 24 | 3.7 / 4.8GHz | 105W – 142W | 無し | 64MB | 55,000円 |
Ryzen 5 7600X | 6 | 12 | 4.7 / 5.3GHz | 105W – 142W | RDNA 2(2CU) | 32MB | 49,900円 |
Core i5-12600K | 10 (6P+4E) | 16 | 3.7 / 4.9GHz 2.8 / 3.6GHz | 125W – 150W | UHD 770 | 20MB | 43,500円 |
Ryzen 7 5800X3D | 8 | 16 | 3.4 / 4.5GHz | 105W – 142W | 無し | 96MB | 58,800円 |
Ryzen 7 5800X | 8 | 16 | 3.8 / 4.7GHz | 105W – 142W | 無し | 32MB | 38,000円 |
Ryzen 7 5700X | 8 | 16 | 3.4 / 4.6GHz | 65W – ?W | 無し | 32MB | 36,000円 |
Core i5-12400 | 6 | 12 | 2.5 / 4.4GHz | 65W – 117W | UHD 730 | 18MB | 30,000円 |
Ryzen 5 5600X | 6 | 12 | 3.7 / 4.6GHz | 65W – ?W | 無し | 32MB | 28,000円 |
前世代のCore i9と同じコア構成で少し安い
先にも触れましたが、第13世代Core i7は第12世代のCore i9と同じ16コア(8P+8E)構成となりました。その上に、キャッシュ増量やクロック向上があるので、性能としては少し上回っています。
第13世代は主に円安の影響で前世代より大きく値上がりしてしまったものの、Core i7は前世代のCore i9よりは少し安価であるため、コスパが向上しているのが魅力です。Core i9では8コア多い24コアとなるものの、増えるのはEコアだけということもあり、コアあたりの価格および性能ではCore i7の方が上となります。ゲーミング性能はCore i9ともほとんど変わりませんし、実用コスパ重視のハイエンドモデルを求める場合には有力なモデルとなると思います。
処理性能
各処理性能をベンチマークスコアを海外レビューを参考に見ていきます。使用された使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」となっています。使用されたメモリは、DDR5に対応しているモデルでは「DDR5-6000」で、その他は「DDR4-3600」となっています。
その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。
マルチスレッド性能
マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。
今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K | 38064 |
Ryzen 9 7950X | 37523 |
Core i7-13700K | 30781 |
Ryzen 9 7900X | 28655 |
Core i9-12900K | 27216 |
Ryzen 9 5950X | 25841 |
Core i5-13600K | 23984 |
Core i7-12700K | 22856 |
Ryzen 9 5900X | 21507 |
Ryzen 7 7700X | 19810 |
Core i5-12600K | 17577 |
Ryzen 7 5800X | 15690 |
Ryzen 5 7600X | 15242 |
Ryzen 7 5800X3D | 14567 |
Ryzen 7 5700X | 13660 |
Core i9-10900K | 13636 |
Core i9-11900K | 13323 |
Core i5-12400F | 11671 |
Core i7-10700K | 11657 |
Ryzen 5 5600X | 11299 |
Core i5-11600K | 10481 |
前世代のCore i9を約13%上回るマルチスレッド性能
マルチスレッド性能は前世代の「Core i9-12900K」よりも約13.1%優れた性能となっています。このマルチスレッド性能のCPUを前世代のCore i9よりも安い価格で導入できるというのは魅力的です。「Ryzen 9 7900X」にも約7.4%高い性能となっており、円安下で値上がりしているのにも関わらず7万円台でこの性能はマルチスレッド性能コスパは良いと思います。
Eコアが4つ少ない先代の「Core i7-12700K」と比較すると、約34.7%と大きく向上しています。正直予想よりも向上率が高かったです。
一応価格的には対抗モデルとなる「Ryzen 7 7700X」と比較すると、「Core i7-13700K」の方が約55.4%という圧倒的な差を付けて上回っており、正直比較になっていません。5万円~8万円クラスのCPUとしてのマルチスレッド性能コスパは現状トップで間違いないと思います。
ただし、値上がりに加え、消費電力増による対応も必要となるため、従来のCore i7よりは大幅に高い費用が必要となる点は注意が必要です。前世代のCore i7では20万円台前半のゲーミングPCが特に人気の印象でしたが、同じ価格のGPUで同じ価格を維持するのは困難となると思います。
シングルスレッド性能
シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。
今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K | 2290 |
Core i7-13700K | 2125 |
Ryzen 9 7950X | 2051 |
Core i9-12900K | 2033 |
Ryzen 9 7900X | 2026 |
Core i5-13600K | 2016 |
Ryzen 7 7700X | 2001 |
Ryzen 5 7600X | 1963 |
Core i7-12700K | 1934 |
Core i5-12600K | 1920 |
Core i5-12400F | 1729 |
Core i9-11900K | 1659 |
Ryzen 9 5950X | 1638 |
Ryzen 9 5900X | 1599 |
Ryzen 7 5800X | 1594 |
Core i5-11600K | 1564 |
Ryzen 7 5700X | 1538 |
Ryzen 5 5600X | 1529 |
Ryzen 7 5800X3D | 1481 |
Core i9-10900K | 1390 |
Core i7-10700K | 1368 |
最新のRyzen 9を上回る非常に優れたシングルスレッド性能
クロック上昇のおかげもあってシングルスレッド性能も向上しています。前世代の「Core i7-12700K」と比較すると約9.9%向上しており、Ryzen 7000シリーズの「Ryzen 9 7900X / 7950X」も上回っています。
ゲーミング性能
この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。
今回は12種類のゲームで測定したFPSの平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K | 178.3 |
Core i7-13700K | 176.9 |
Core i5-13600K | 174.3 |
Core i9-12900K | 171.6 |
Core i7-12700K | 168.3 |
Ryzen 7 7700X | 164.7 |
Ryzen 9 7950X | 164.7 |
Ryzen 9 7900X | 163.6 |
Core i5-12600K | 163.3 |
Ryzen 5 7600X | 160.7 |
Ryzen 7 5800X3D | 158.3 |
Ryzen 9 5950X | 152.2 |
Ryzen 9 5900X | 150.9 |
Core i5-12400F | 150.4 |
Ryzen 7 5800X | 148.4 |
Core i9-11900K | 147.3 |
Ryzen 7 5700X | 145.4 |
Core i7-10700K | 145.1 |
Ryzen 5 5600X | 141.7 |
Ryzen 7 5700G | 133.8 |
Core i5-11400F | 128.1 |
Core i9-10900K | 125.8 |
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K | 149.2 |
Core i7-13700K | 148.1 |
Core i5-13600K | 147.1 |
Core i9-12900K | 146.2 |
Core i7-12700K | 144.5 |
Ryzen 7 7700X | 141.9 |
Ryzen 9 7950X | 141.2 |
Core i5-12600K | 141.1 |
Ryzen 9 7900X | 140.8 |
Ryzen 7 5800X3D | 140.4 |
Ryzen 5 7600X | 140.2 |
Ryzen 9 5950X | 135.6 |
Ryzen 9 5900X | 134.9 |
Core i5-12400F | 134.2 |
Ryzen 7 5800X | 133.5 |
Core i9-10900K | 133.2 |
Ryzen 7 5700X | 131.6 |
Core i9-11900K | 131.0 |
Core i7-10700K | 130.3 |
Ryzen 5 5600X | 128.3 |
Ryzen 7 5700G | 122.3 |
Core i5-11400F | 120.4 |
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K | 96.7 |
Core i9-12900K | 96.7 |
Core i7-13700K | 96.5 |
Core i7-12700K | 96.5 |
Core i5-13600K | 96.3 |
Core i5-12600K | 96.1 |
Ryzen 7 5800X3D | 95.8 |
Ryzen 9 7950X | 95.7 |
Ryzen 7 7700X | 95.5 |
Core i5-12400F | 95.5 |
Ryzen 5 7600X | 95.4 |
Ryzen 9 7900X | 95.3 |
Ryzen 9 5950X | 95.1 |
Ryzen 9 5900X | 94.8 |
Ryzen 7 5800X | 94.6 |
Core i9-10900K | 94.5 |
Ryzen 7 5700X | 94.3 |
Ryzen 5 5600X | 93.8 |
Core i7-10700K | 93.7 |
Core i9-11900K | 93.3 |
Ryzen 7 5700G | 90.8 |
Core i5-11400F | 90.5 |
Ryzen 7000や前世代よりも優れたゲーミング性能
RTX 3080を用いたゲーミング性能では、前世代やRyzen 7000を少し上回る結果となっています。「Core i9-13900K」との差もわずかなので、ハイエンドクラスのCPUとしては比較的優れたゲーミング性能となります。
対抗のRyzenとの比較をもう少し見てみると、1080pでは約7.4%リードしており、優位性が明らかです。解像度が上がる毎に差が小さくなって無視できるレベルになるものの、高fpsでは結構な差となります。
ただし、「Core i7-13700K」に関しては「Ryzen 7 7700X」よりも発売時で約5,000円~8,000円ほど高価となっており、一応ゲーミングコスパに絞れば差はほぼ無いという感じです。とはいえ、前述のマルチスレッド性能では「Ryzen 7 7700X」には圧勝している他、マザーボードが最新のRyzenよりもやや安価なので、総合コスパでは勝っていると思います。
消費電力と効率
消費電力
消費電力を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」による消費電力と、ゲーミング時平均(1080p/12タイトル)による消費電力の二つを見ていきます。
CPU名称 | 消費電力 |
---|---|
Ryzen 7 5700X | 63W |
Ryzen 5 5600X | 63W |
Core i5-12400F | 67W |
Ryzen 7 5700G | 79W |
Ryzen 7 5800X3D | 89W |
Ryzen 5 7600X | 99W |
Ryzen 9 5950X | 118W |
Ryzen 7 5800X | 121W |
Core i5-12600K | 128W |
Ryzen 9 5900X | 131W |
Ryzen 7 7700X | 135W |
Core i9-11900K | 152W |
Core i9-10900K | 164W |
Core i7-12700K | 174W |
Ryzen 9 7900X | 185W |
Core i5-13600K | 187W |
Ryzen 9 7950X | 235W |
Core i7-13700K | 252W |
Core i9-12900K | 257W |
Core i9-13900K | 287W |
CPU名称 | 消費電力 |
---|---|
Ryzen 7 5700G | 35W |
Core i5-12400F | 36W |
Ryzen 5 5600X | 41W |
Ryzen 7 5700X | 45W |
Ryzen 5 7600X | 45W |
Ryzen 7 5800X3D | 47W |
Core i5-12600K | 56W |
Ryzen 7 5800X | 57W |
Ryzen 7 7700X | 62W |
Core i7-12700K | 64W |
Core i5-13600K | 74W |
Ryzen 9 7900X | 81W |
Ryzen 9 5900X | 81W |
Ryzen 9 5950X | 85W |
Ryzen 9 7950X | 87W |
Core i9-12900K | 88W |
Core i7-13700K | 89W |
Core i9-10900K | 110W |
Core i9-11900K | 110W |
Core i9-13900K | 118W |
消費電力は前世代から大幅に上昇し、従来のCore i9レベルに
電力設定の時点で予測できたことですが、消費電力は前世代よりも大幅に増加してしまっています。
「Core i7-13700K」はマルチスレッドテスト時には252Wという非常に多い消費電力となっており、前世代の「Core i7-12700K」の174Wから78Wも増加してしまっています。増加率は約44.8%と非常に大きく、Core i9やCore i5よりも悪いです。
前世代のCore i7は最大180W~190Wだったので、空冷運用も普通に可能なレベルでしたが、さすがに250W台となると高負荷運用前提だと空冷は不安を無くせないレベルなので、大きな差があります。
マルチスレッド性能が予想よりも大きく向上していたため、その代償が消費電力という感じだと思いますが、正直もう少し性能が下がっても消費電力を減らした方が扱いやすいし印象も良かったのではないかと感じます。Core i9よりは若干少ないものの、Core i9が多すぎるだけでメリットを感じれる数値でもないですし…。
ただし、ゲーミング時に関してはCPUが全力で動く訳ではないので、かなりマシな数値となっています。特に注目なのは「Core i9-13900K」よりも29Wも少なく動作している点です。最大電力設定は変わらないのにこの差ですから、Eコアが少ない分の恩恵を感じる結果だと思います。
電力効率(ワットパフォーマンス)
電力効率を見ていきます。レンダリングおよびゲーミング時の効率です。
各テストで得られたスコアを消費電力で割って算出した、1Wあたりのスコアで見ていきます。ただし、効率が悪かったとしても、レンダリングなどの処理量が決まっているスコアでは高性能な方が処理を早く終えることが出来るため優位性がありますし、ゲームにおいても高いfpsを得ているので、効率が悪いから一概にダメという訳ではない点を留意です。
CPU名称 | 1Wあたりのスコア |
---|---|
Ryzen 9 5950X | 220.9 |
Ryzen 7 5700X | 218.2 |
Ryzen 7 5700G | 192.5 |
Ryzen 5 5600X | 181.1 |
Core i5-12400F | 179.8 |
Ryzen 9 7950X | 173.4 |
Ryzen 9 5900X | 169.2 |
Ryzen 9 7900X | 157.0 |
Ryzen 5 7600X | 156.2 |
Ryzen 7 5800X3D | 151.7 |
Ryzen 7 7700X | 151.0 |
Core i5-12600K | 136.1 |
Core i9-13900K | 133.7 |
Core i7-12700K | 131.4 |
Core i5-13600K | 129.6 |
Ryzen 7 5800X | 126.3 |
Core i7-13700K | 119.9 |
Core i9-12900K | 107.3 |
Core i9-11900K | 99.0 |
Core i9-10900K | 94.8 |
CPU名称 | 1Wあたりのfps |
---|---|
Core i5-12400F | 5.24 |
Ryzen 7 5700G | 4.80 |
Ryzen 5 7600X | 4.47 |
Ryzen 5 5600X | 4.30 |
Ryzen 7 5700X | 4.14 |
Ryzen 7 5800X3D | 4.10 |
Core i5-12600K | 3.51 |
Ryzen 7 7700X | 3.36 |
Ryzen 7 5800X | 3.31 |
Core i7-12700K | 3.18 |
Core i5-13600K | 3.00 |
Core i7-13700K | 2.74 |
Ryzen 9 7900X | 2.60 |
Ryzen 9 7950X | 2.52 |
Core i9-12900K | 2.45 |
Ryzen 9 5900X | 2.32 |
Ryzen 9 5950X | 2.31 |
Core i9-13900K | 2.13 |
Core i9-10900K | 1.70 |
Core i9-11900K | 1.64 |
マルチスレッド効率が思ったより悪い
「Core i7-13700K」の効率ですが、マルチスレッド効率が思ったよりも悪いです。前世代のCore i9はわずかに上回るものの、同じ第13世代のCore i5およびCore i9(K付き)にはわずかに負けてしまっています。
コア性能自体はEコアよりもPコアの方が高いはずなので、Core i9よりもPコア比率の高いCore i7の方が効率では少し上回ると予想していましたが、まさかのやや劣る結果でした。多すぎる消費電力設定が足を引っ張っているのではないかと感じます。
ゲーミング時の効率はさすがにCore i9よりは良くなるものの、Ryzen 9に近い値となっており、総合的には良いとは言えない性能です。対抗の「Ryzen 7 7700X」には約22.6%劣る結果となっていますし、前世代のCore i7にも少し劣っています。
先に評価記事を投稿した「Core i9-13900K」と「Core i5-13600K」でも述べましたが、第13世代CoreのK付きの電力面は前世代やRyzen 7000シリーズに劣っているため、消費電力および効率を重視するのであればおすすめはできないと思います。旧世代化しましたが、安価な第12世代CoreやRyzen 5000シリーズの方が優れています。最新世代で電力面も多少気にする場合には、無印モデルが登場するのを待った方が賢明だと感じます。
温度
CPUの温度を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」動作時と、ゲーミング時(Cyberpunk 2077)の二つの温度を見ていきます。基準温度は25℃で、動作から10分後の定常状態の温度となっています。
冷却システムは、CPUクーラーに「NH-U14S」が使用されています。14cmファン1基の空冷クーラーとなっており、空冷としては高めの冷却性能ですが、240mm以上の水冷やハイエンド空冷にはやや劣るクーラーとなっています。
CPU名称 | 温度 |
---|---|
Core i5-12400F | 48℃ |
Ryzen 5 5600X | 53℃ |
Core i9-11900K | 59℃ |
Core i9-10900K | 62℃ |
Ryzen 9 5950X | 64℃ |
Ryzen 7 5700G | 67℃ |
Ryzen 9 5900X | 67℃ |
Core i7-12700K | 76℃ |
Ryzen 7 5800X3D | 78℃ |
Core i5-12600K | 80℃ |
Ryzen 7 5800X | 82℃ |
Ryzen 5 7600X | 88℃ |
Core i5-13600K | 91℃ |
Ryzen 7 7700X | 94℃ |
Ryzen 9 7900X | 94℃ |
Ryzen 9 7950X | 94℃ |
Core i9-12900K | 99℃ |
Core i9-13900K | 101℃ |
Core i7-13700K | 102℃ |
CPU名称 | 温度 |
---|---|
Core i5-12400F | 47℃ |
Core i7-12700K | 56℃ |
Ryzen 7 5700G | 61℃ |
Ryzen 5 5600X | 62℃ |
Core i9-11900K | 62℃ |
Core i5-12600K | 64℃ |
Ryzen 7 5800X | 65℃ |
Core i9-10900K | 67℃ |
Core i9-12900K | 68℃ |
Ryzen 5 7600X | 70℃ |
Ryzen 7 5800X3D | 71℃ |
Ryzen 7 7700X | 71℃ |
Ryzen 9 5950X | 71℃ |
Core i5-13600K | 72℃ |
Ryzen 9 5900X | 72℃ |
Core i7-13700K | 73℃ |
Ryzen 9 7900X | 76℃ |
Ryzen 9 7950X | 76℃ |
Core i9-13900K | 89℃ |
従来のCore i9並みの温度
レンダリング時の温度は最大温度の100℃とほぼ同じ102℃、ゲーミング時は73℃という結果でした。CPU温度も前世代から大幅に悪化し、消費電力と同じく前世代のCore i9並みの温度になっています。
Core i9と同じ電力設定は伊達ではなく、特にレンダリング時には非常に熱いです。テストでは空冷とはいえ、やはり高負荷な処理前提なら水冷は必須かなという印象です。高性能な水冷を用意できないなら、電力設定を低くして利用した方が安定しそうな結果です。
ただし、ゲーミング時には「Core i9-13900K」よりは大きく温度が下がっており、CPU全体の最大放熱量は減っていることが伺える結果です。Core i9と違い、ほぼゲームしかしないという人の場合には、標準設定で空冷でも高性能なものなら十分対応できるレベルとなっています。
また、ゲーミング時の13900Kとの温度差は16℃と非常に大きいですが、ゲーミング性能自体はほぼ差がないので、特にゲーミング時には増えたEコアが効率面では悪影響を与えているような気がします。
まとめ
ざっくりと各性能を見てきました。最後に評価をまとめています。
Core i7-13700K
- 合計16コアによる非常に高いマルチスレッド性能
- Core i9とほぼ同等の優れたゲーミング性能
- 非常に優れたシングルスレッド性能
- 最新のRyzen 9 / Core i9より大幅に安い
- Ryzen 7000シリーズよりも安いマザーボード(前世代の600シリーズチップセットも対応)
- DDR5とDDR4メモリに対応
- PCIe 5.0のサポート
- 非常に高価(登場時:75,800円)
- 非常に多い消費電力(MTP:253W)
- 非常に多い発熱で、前世代のCore i7と違い空冷運用が厳しくなった
- 電力効率がRyzenよりも大きく悪い
- AVX512命令セットに未対応
- M.2スロットでPCIe 5.0利用時にはPCIeの5.0(GPU)はx8動作
Core i7-13700K:前世代のCore i9以上の性能でやや安い価格。だけど消費電力および発熱も従来のCore i9並みに
「Core i7-13700K」は8個のPコアと8個のEコアによる合計16コアを備えた高性能CPUです。コア構成は前世代のCore i9と同じになりました。
マルチスレッド性能は「Core i9-12900K」や「Ryzen 9 7900X」少し上回るレベルの高性能さとなっています。前世代からの性能向上率は35%近くとなっており、Eコア4つ追加という割には向上率は高かったです。
それでいて価格は登場時7万円台と前世代のCore i9よりも安いので、マルチスレッド性能コスパは非常に優れています。対抗の「Ryzen 7 7700X」と比べると約55%も上回る圧倒的なマルチスレッド性能差を発揮しており、マルチスレッドコスパではCore i7一択です。
また、RTX 3080を用いたゲーミング性能に関しては「Core i9-13900K」とほぼ変わらないため、トップクラスです。マルチスレッド性能ではRyzen 9 / Core i9の最上位モデルには劣るために最強CPUではありませんが、前世代の最上位モデルを上回るマルチスレッド性能と現状トップクラスのゲーミング性能を備えるCPUとなっています。対抗のRyzen 7000シリーズよりも少し優れたゲーミング性能となっている他、「Ryzen 7 7700X」相手ならマルチスレッド性能も圧勝で、コスパで優位に立っています。
しかし、その性能と引き換えに消費電力が飛躍的に増加してしまった点は注意です。前世代のCore i7はMTPは180W~190Wとなっており、割と消費電力が少ないのが地味に嬉しい要素でしたが、「Core i7-13700K」は253Wと非常に多いです。前世代では空冷運用も普通にできましたが、「Core i7-13700K」では高負荷な処理前提だと空冷は厳しいです。電源容量とクーラーで前世代のCore i7よりも大幅な追加費用が必要となってしまっています。BTOなどのコスパや安さ重視構成ではかなり採用しにくいCPUになってしまいました。
CPUで特に重視されるマルチスレッド性能およびゲーミング性能が優れている上に、コスパも良いので十分魅力的なCPUではありますが、電力面に限れば対抗の「Ryzen 7 7700X」には大きく劣っている点は覚えておきましょう。総合的な評価を重視するのであれば、無印モデルを待つのが賢明という気はします。
大まかな所感は以上ですが、市場においての立ち位置についても少し触れると、第13世代では「Core i5-13600K」が従来のCore i7に近い価格となり競争力を持ちそうな印象があります。そのため、Core i7は従来よりは市場を席捲しない気がしますし、特にこの「Core i7-13700K」は電力面で明らかな弱点があるため、尚更人気は伸びなさそうな印象です。
全体としては既に登場している「Core i5-13600K」に加え、後に登場するであろう無印のCore i7およびCore i5が強力になると思われるので「Core i7-13700K」は不人気さによる値下げ行われない限りは、無印モデルが登場次第影が薄くなっていきそうだなと感じました。
といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。