「Core i7-13700K」ざっくり評価【性能比較】

Intelの第13世代Coreプロセッサー「Core i7-13700K」の評価記事です。

前世代のCore i9と同じ16コア構成(8P+8E)になったCore i7の性能を見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年10月28日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

※追記:温度の項目を追記

簡易比較表

前世代や競合モデルとの簡易比較表を見ていきます。

前世代との比較(第13世代と第12世代)

まずは前世代の第12世代Coreと今回登場した第13世代Coreをざっくり比較しながら見ていきたいと思います。

主な仕様を下記の表にまとめています。ただし、第13世代Coreの1弾目は末尾Kのモデルのみの投入だったため、今後追加されるであろう無印モデルなどは含まれていないため注意してください。併せるために、第12世代CoreもKモデルの仕様のみを記載しています。

第13世代Core(K)
第12世代Core(K)
※12900KSは除く
アーキテクチャRaptor LakeAlder Lake
プロセス10nm10nm
ソケットLGA1700LGA1700
コア
14~24コア
Pコア:6~8コア
Eコア:8~16コア
10~16コア
Pコア:6~8コア
Eコア:4~8コア
スレッド
20~32スレッド
16~24スレッド
PBP (TDP/PL1)125W125W
MTP (TDP/PL2)
Core i7 / i9:253W
Core i5:181W
Core i9:241W
Core i7:190W
Core i5:150W
クロック(最大)
5.8GHz
5.2GHz
L2キャッシュ
20MB~36MB
Pコアあたり2MB
4Eコアあたり4MB
9.5MB~14MB
Pコアあたり1.25MB
4Eコアあたり2MB
L3キャッシュ
24MB~36MB
20MB~30MB
内蔵GPUUHD 770
※末尾Fは無し
UHD 770
※末尾Fは無し
メモリ(定格最大)
DDR5-5600
DDR4-3200
DDR5-4800
DDR4-3200

おおまかなCPU仕様の違いは以上のような感じになっています。

性能面での大きな変更点はの一つはEコアの数です。Core i7では第12世代では4Eコアだったのが8Eコアになり、合計16コア(8P+8E)となりました。これによってマルチスレッド性能も大きく向上することが期待できます。

また、このCore i7の8P+8Eというコア構成は第12世代のCore i9と同じコア構成になります。第13世代では全体的に価格が大幅に値上がりしてしまったものの、第12世代のCore i9よりは少し安い価格となっているため、前世代のCore i9クラスの性能でコスパが若干向上している点が魅力として期待されます。

Pコアの数は前世代から据え置きの8コアとなっているのは残念なものの、「Core i7-12700K」と「Core i7-13700K」とを比較すると、最大クロックが5.0GHzから5.4GHzとやや上昇しているため、コアあたりの性能は向上していることが期待できます。

更に、コア構成や世代の更新に伴い、キャッシュ量にも変化があるのも注目です。特にL2キャッシュは大きく増量しており、前世代では最大14MBだったのが最大36MBとなっています。内訳としては、前世代ではPコアあたり1.25MBだったのが2MBと1.6倍になり、Eコアについてもクラスタあたり(4Eコア)で、2MBだったのが4MBと2倍になっています。L3キャッシュもわずかに増量しています。

Core i7でもL2キャッシュが前世代の12MBから24MBへと倍増しているため、その恩恵が気になるところです。

ソケットは前世代から引き続きLGA1700となっており、新たに追加されるIntel 700シリーズチップセットだけでなく、Intel 600シリーズも利用することができるのは強みです(機能が多少異なる点や更新が必要となる点は注意)。Ryzen 7000は新しいチップセット対応となり既存のマザーボードが使えなくなった上に、新規追加のチップセットのマザーボードが従来よりも高価だったので、Coreの方が全体費用を大きく節約できるのは嬉しいです。DDR4メモリにも対応している点もありますし、プラットフォームの費用やコスパ面ではIntelの方が大きく有利な気がします。

詳しい性能はこの後見ていきますが、カタログスペック時点で気になるのは消費電力です。PBP(ベース電力)こそ125Wで変わりませんが、MTP(最大ターボ電力)が前世代から上昇してしまっています。Core i7においては253Wとなっており、前世代から60W以上も上昇してしまっています。

詳しくはこの後見ていきたいと思いますが、大幅に増量されたEコアはコア性能自体はPコアに劣りますから、高負荷時の効率的にはマイナスとなっているのではないかというのが懸念されます。

既存モデルとの比較

※価格は2022年10月28日時点でのおおよその市場価格です。CPU名のリンクはAmazonへの商品リンクです。

簡易比較
CPU名コアスレッドクロック
定格 / 最大
TDP
(PL1 – PL2)
iGPUL3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 7950X16324.5 / 5.7GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB117,800円
Core i9-13900K24
(8P+16E)
323.0 / 5.8GHz
2.2 / 4.3GHz
125W – 253WUHD 77036MB105,800円
Core i9-13900KF24
(8P+16E)
323.0 / 5.8GHz
2.2 / 4.3GHz
125W – 253W無し36MB102,800円
Ryzen 9 7900X12244.7 / 5.6GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB92,500円
Core i7-13700K16
(8P+8E)
243.4 / 5.4GHz
2.5 / 4.2GHz
125W – 253WUHD 77030MB74,800円
Core i7-13700KF16
(8P+8E)
243.4 / 5.4GHz
2.5 / 4.2GHz
125W – 253W無し30MB71,800円
Core i9-12900KS16
(8P+8E)
243.4 / 5.5GHz
2.5 / 4.0GHz
150W – 241WUHD 77030MB98,800円
Core i9-12900K16
(8P+8E)
243.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W – 241WUHD 77030MB80,000円
Ryzen 9 5950X16323.4 / 4.9GHz105W – 142W無し64MB78,000円
Core i5-13600K14
(6P+8E)
203.5 / 5.1GHz
2.6 / 3.9GHz
125W – 181WUHD 77024MB57,800円
Core i5-13600KF14
(6P+8E)
203.5 / 5.1GHz
2.6 / 3.9GHz
125W – 181W無し24MB54,800円
Ryzen 7 7700X8164.5 / 5.4GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB66,800円
Core i7-12700K12
(8P+4E)
203.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W – 190WUHD 77025MB58,000円
Core i7-1270012
(8P+4E)
202.1 / 4.9GHz
1.6 / 3.6GHz
65W – 180WUHD 77025MB53,000円
Ryzen 9 5900X12243.7 / 4.8GHz105W – 142W無し64MB55,000円
Ryzen 5 7600X6124.7 / 5.3GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB49,900円
Core i5-12600K10
(6P+4E)
163.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W – 150WUHD 77020MB43,500円
Ryzen 7 5800X3D8163.4 / 4.5GHz105W – 142W無し96MB58,800円
Ryzen 7 5800X8163.8 / 4.7GHz105W – 142W無し32MB38,000円
Ryzen 7 5700X8163.4 / 4.6GHz65W – ?W無し32MB36,000円
Core i5-124006122.5 / 4.4GHz65W – 117WUHD 73018MB30,000円
Ryzen 5 5600X6123.7 / 4.6GHz65W – ?W無し32MB28,000円

前世代のCore i9と同じコア構成で少し安い

先にも触れましたが、第13世代Core i7は第12世代のCore i9と同じ16コア(8P+8E)構成となりました。その上に、キャッシュ増量やクロック向上があるので、性能としては少し上回っています。

第13世代は主に円安の影響で前世代より大きく値上がりしてしまったものの、Core i7は前世代のCore i9よりは少し安価であるため、コスパが向上しているのが魅力です。Core i9では8コア多い24コアとなるものの、増えるのはEコアだけということもあり、コアあたりの価格および性能ではCore i7の方が上となります。ゲーミング性能はCore i9ともほとんど変わりませんし、実用コスパ重視のハイエンドモデルを求める場合には有力なモデルとなると思います。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアを海外レビューを参考に見ていきます。使用された使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」となっています。使用されたメモリは、DDR5に対応しているモデルでは「DDR5-6000」で、その他は「DDR4-3600」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R23 Multi
CPU名称スコア
Core i9-13900K
38064
Ryzen 9 7950X
37523
Core i7-13700K
30781
Ryzen 9 7900X
28655
Core i9-12900K
27216
Ryzen 9 5950X
25841
Core i5-13600K
23984
Core i7-12700K
22856
Ryzen 9 5900X
21507
Ryzen 7 7700X
19810
Core i5-12600K
17577
Ryzen 7 5800X
15690
Ryzen 5 7600X
15242
Ryzen 7 5800X3D
14567
Ryzen 7 5700X
13660
Core i9-10900K
13636
Core i9-11900K
13323
Core i5-12400F
11671
Core i7-10700K
11657
Ryzen 5 5600X
11299
Core i5-11600K
10481
参考:TechPowerUp

前世代のCore i9を約13%上回るマルチスレッド性能

マルチスレッド性能は前世代の「Core i9-12900K」よりも約13.1%優れた性能となっています。このマルチスレッド性能のCPUを前世代のCore i9よりも安い価格で導入できるというのは魅力的です。「Ryzen 9 7900X」にも約7.4%高い性能となっており、円安下で値上がりしているのにも関わらず7万円台でこの性能はマルチスレッド性能コスパは良いと思います。

Eコアが4つ少ない先代の「Core i7-12700K」と比較すると、約34.7%と大きく向上しています。正直予想よりも向上率が高かったです。

一応価格的には対抗モデルとなる「Ryzen 7 7700X」と比較すると、「Core i7-13700K」の方が約55.4%という圧倒的な差を付けて上回っており、正直比較になっていません。5万円~8万円クラスのCPUとしてのマルチスレッド性能コスパは現状トップで間違いないと思います。

ただし、値上がりに加え、消費電力増による対応も必要となるため、従来のCore i7よりは大幅に高い費用が必要となる点は注意が必要です。前世代のCore i7では20万円台前半のゲーミングPCが特に人気の印象でしたが、同じ価格のGPUで同じ価格を維持するのは困難となると思います。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称スコア
Core i9-13900K
2290
Core i7-13700K
2125
Ryzen 9 7950X
2051
Core i9-12900K
2033
Ryzen 9 7900X
2026
Core i5-13600K
2016
Ryzen 7 7700X
2001
Ryzen 5 7600X
1963
Core i7-12700K
1934
Core i5-12600K
1920
Core i5-12400F
1729
Core i9-11900K
1659
Ryzen 9 5950X
1638
Ryzen 9 5900X
1599
Ryzen 7 5800X
1594
Core i5-11600K
1564
Ryzen 7 5700X
1538
Ryzen 5 5600X
1529
Ryzen 7 5800X3D
1481
Core i9-10900K
1390
Core i7-10700K
1368
参考:TechPowerUp

最新のRyzen 9を上回る非常に優れたシングルスレッド性能

クロック上昇のおかげもあってシングルスレッド性能も向上しています。前世代の「Core i7-12700K」と比較すると約9.9%向上しており、Ryzen 7000シリーズの「Ryzen 9 7900X / 7950X」も上回っています。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。

今回は12種類のゲームで測定したFPSの平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

12種類のゲームでの平均fps(1080p)
CPU名称スコア
Core i9-13900K
178.3
Core i7-13700K
176.9
Core i5-13600K
174.3
Core i9-12900K
171.6
Core i7-12700K
168.3
Ryzen 7 7700X
164.7
Ryzen 9 7950X
164.7
Ryzen 9 7900X
163.6
Core i5-12600K
163.3
Ryzen 5 7600X
160.7
Ryzen 7 5800X3D
158.3
Ryzen 9 5950X
152.2
Ryzen 9 5900X
150.9
Core i5-12400F
150.4
Ryzen 7 5800X
148.4
Core i9-11900K
147.3
Ryzen 7 5700X
145.4
Core i7-10700K
145.1
Ryzen 5 5600X
141.7
Ryzen 7 5700G
133.8
Core i5-11400F
128.1
Core i9-10900K
125.8
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの平均fps(1440p)
CPU名称スコア
Core i9-13900K
149.2
Core i7-13700K
148.1
Core i5-13600K
147.1
Core i9-12900K
146.2
Core i7-12700K
144.5
Ryzen 7 7700X
141.9
Ryzen 9 7950X
141.2
Core i5-12600K
141.1
Ryzen 9 7900X
140.8
Ryzen 7 5800X3D
140.4
Ryzen 5 7600X
140.2
Ryzen 9 5950X
135.6
Ryzen 9 5900X
134.9
Core i5-12400F
134.2
Ryzen 7 5800X
133.5
Core i9-10900K
133.2
Ryzen 7 5700X
131.6
Core i9-11900K
131.0
Core i7-10700K
130.3
Ryzen 5 5600X
128.3
Ryzen 7 5700G
122.3
Core i5-11400F
120.4
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの平均fps(4K)
CPU名称スコア
Core i9-13900K
96.7
Core i9-12900K
96.7
Core i7-13700K
96.5
Core i7-12700K
96.5
Core i5-13600K
96.3
Core i5-12600K
96.1
Ryzen 7 5800X3D
95.8
Ryzen 9 7950X
95.7
Ryzen 7 7700X
95.5
Core i5-12400F
95.5
Ryzen 5 7600X
95.4
Ryzen 9 7900X
95.3
Ryzen 9 5950X
95.1
Ryzen 9 5900X
94.8
Ryzen 7 5800X
94.6
Core i9-10900K
94.5
Ryzen 7 5700X
94.3
Ryzen 5 5600X
93.8
Core i7-10700K
93.7
Core i9-11900K
93.3
Ryzen 7 5700G
90.8
Core i5-11400F
90.5
参考:TechPowerUp

Ryzen 7000や前世代よりも優れたゲーミング性能

RTX 3080を用いたゲーミング性能では、前世代やRyzen 7000を少し上回る結果となっています。「Core i9-13900K」との差もわずかなので、ハイエンドクラスのCPUとしては比較的優れたゲーミング性能となります。

対抗のRyzenとの比較をもう少し見てみると、1080pでは約7.4%リードしており、優位性が明らかです。解像度が上がる毎に差が小さくなって無視できるレベルになるものの、高fpsでは結構な差となります。

ただし、「Core i7-13700K」に関しては「Ryzen 7 7700X」よりも発売時で約5,000円~8,000円ほど高価となっており、一応ゲーミングコスパに絞れば差はほぼ無いという感じです。とはいえ、前述のマルチスレッド性能では「Ryzen 7 7700X」には圧勝している他、マザーボードが最新のRyzenよりもやや安価なので、総合コスパでは勝っていると思います。

消費電力と効率

消費電力

消費電力を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」による消費電力と、ゲーミング時平均(1080p/12タイトル)による消費電力の二つを見ていきます。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称消費電力
Ryzen 7 5700X
63W
Ryzen 5 5600X
63W
Core i5-12400F
67W
Ryzen 7 5700G
79W
Ryzen 7 5800X3D
89W
Ryzen 5 7600X
99W
Ryzen 9 5950X
118W
Ryzen 7 5800X
121W
Core i5-12600K
128W
Ryzen 9 5900X
131W
Ryzen 7 7700X
135W
Core i9-11900K
152W
Core i9-10900K
164W
Core i7-12700K
174W
Ryzen 9 7900X
185W
Core i5-13600K
187W
Ryzen 9 7950X
235W
Core i7-13700K
252W
Core i9-12900K
257W
Core i9-13900K
287W
参考:TechPowerUp

消費電力(12ゲーム1080p平均)
CPU名称消費電力
Ryzen 7 5700G
35W
Core i5-12400F
36W
Ryzen 5 5600X
41W
Ryzen 7 5700X
45W
Ryzen 5 7600X
45W
Ryzen 7 5800X3D
47W
Core i5-12600K
56W
Ryzen 7 5800X
57W
Ryzen 7 7700X
62W
Core i7-12700K
64W
Core i5-13600K
74W
Ryzen 9 7900X
81W
Ryzen 9 5900X
81W
Ryzen 9 5950X
85W
Ryzen 9 7950X
87W
Core i9-12900K
88W
Core i7-13700K
89W
Core i9-10900K
110W
Core i9-11900K
110W
Core i9-13900K
118W
参考:TechPowerUp

消費電力は前世代から大幅に上昇し、従来のCore i9レベルに

電力設定の時点で予測できたことですが、消費電力は前世代よりも大幅に増加してしまっています

「Core i7-13700K」はマルチスレッドテスト時には252Wという非常に多い消費電力となっており、前世代の「Core i7-12700K」の174Wから78Wも増加してしまっています。増加率は約44.8%と非常に大きく、Core i9やCore i5よりも悪いです。

前世代のCore i7は最大180W~190Wだったので、空冷運用も普通に可能なレベルでしたが、さすがに250W台となると高負荷運用前提だと空冷は不安を無くせないレベルなので、大きな差があります。

マルチスレッド性能が予想よりも大きく向上していたため、その代償が消費電力という感じだと思いますが、正直もう少し性能が下がっても消費電力を減らした方が扱いやすいし印象も良かったのではないかと感じます。Core i9よりは若干少ないものの、Core i9が多すぎるだけでメリットを感じれる数値でもないですし…。

ただし、ゲーミング時に関してはCPUが全力で動く訳ではないので、かなりマシな数値となっています。特に注目なのは「Core i9-13900K」よりも29Wも少なく動作している点です。最大電力設定は変わらないのにこの差ですから、Eコアが少ない分の恩恵を感じる結果だと思います。

電力効率(ワットパフォーマンス)

電力効率を見ていきます。レンダリングおよびゲーミング時の効率です。

各テストで得られたスコアを消費電力で割って算出した、1Wあたりのスコアで見ていきます。ただし、効率が悪かったとしても、レンダリングなどの処理量が決まっているスコアでは高性能な方が処理を早く終えることが出来るため優位性がありますし、ゲームにおいても高いfpsを得ているので、効率が悪いから一概にダメという訳ではない点を留意です。

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称1Wあたりのスコア
Ryzen 9 5950X
220.9
Ryzen 7 5700X
218.2
Ryzen 7 5700G
192.5
Ryzen 5 5600X
181.1
Core i5-12400F
179.8
Ryzen 9 7950X
173.4
Ryzen 9 5900X
169.2
Ryzen 9 7900X
157.0
Ryzen 5 7600X
156.2
Ryzen 7 5800X3D
151.7
Ryzen 7 7700X
151.0
Core i5-12600K
136.1
Core i9-13900K
133.7
Core i7-12700K
131.4
Core i5-13600K
129.6
Ryzen 7 5800X
126.3
Core i7-13700K
119.9
Core i9-12900K
107.3
Core i9-11900K
99.0
Core i9-10900K
94.8
参考:TechPowerUp

電力効率(12ゲーム1080p平均)
CPU名称1Wあたりのfps
Core i5-12400F
5.24
Ryzen 7 5700G
4.80
Ryzen 5 7600X
4.47
Ryzen 5 5600X
4.30
Ryzen 7 5700X
4.14
Ryzen 7 5800X3D
4.10
Core i5-12600K
3.51
Ryzen 7 7700X
3.36
Ryzen 7 5800X
3.31
Core i7-12700K
3.18
Core i5-13600K
3.00
Core i7-13700K
2.74
Ryzen 9 7900X
2.60
Ryzen 9 7950X
2.52
Core i9-12900K
2.45
Ryzen 9 5900X
2.32
Ryzen 9 5950X
2.31
Core i9-13900K
2.13
Core i9-10900K
1.70
Core i9-11900K
1.64
参考:TechPowerUp

マルチスレッド効率が思ったより悪い

「Core i7-13700K」の効率ですが、マルチスレッド効率が思ったよりも悪いです。前世代のCore i9はわずかに上回るものの、同じ第13世代のCore i5およびCore i9(K付き)にはわずかに負けてしまっています。

コア性能自体はEコアよりもPコアの方が高いはずなので、Core i9よりもPコア比率の高いCore i7の方が効率では少し上回ると予想していましたが、まさかのやや劣る結果でした。多すぎる消費電力設定が足を引っ張っているのではないかと感じます。

ゲーミング時の効率はさすがにCore i9よりは良くなるものの、Ryzen 9に近い値となっており、総合的には良いとは言えない性能です。対抗の「Ryzen 7 7700X」には約22.6%劣る結果となっていますし、前世代のCore i7にも少し劣っています。

先に評価記事を投稿した「Core i9-13900K」と「Core i5-13600K」でも述べましたが、第13世代CoreのK付きの電力面は前世代やRyzen 7000シリーズに劣っているため、消費電力および効率を重視するのであればおすすめはできないと思います。旧世代化しましたが、安価な第12世代CoreやRyzen 5000シリーズの方が優れています。最新世代で電力面も多少気にする場合には、無印モデルが登場するのを待った方が賢明だと感じます。

温度

CPUの温度を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」動作時と、ゲーミング時(Cyberpunk 2077)の二つの温度を見ていきます。基準温度は25℃で、動作から10分後の定常状態の温度となっています。

冷却システムは、CPUクーラーに「NH-U14S」が使用されています。14cmファン1基の空冷クーラーとなっており、空冷としては高めの冷却性能ですが、240mm以上の水冷やハイエンド空冷にはやや劣るクーラーとなっています。

レンダリング時の温度(Blender)
CPU名称温度
Core i5-12400F
48℃
Ryzen 5 5600X
53℃
Core i9-11900K
59℃
Core i9-10900K
62℃
Ryzen 9 5950X
64℃
Ryzen 7 5700G
67℃
Ryzen 9 5900X
67℃
Core i7-12700K
76℃
Ryzen 7 5800X3D
78℃
Core i5-12600K
80℃
Ryzen 7 5800X
82℃
Ryzen 5 7600X
88℃
Core i5-13600K
91℃
Ryzen 7 7700X
94℃
Ryzen 9 7900X
94℃
Ryzen 9 7950X
94℃
Core i9-12900K
99℃
Core i9-13900K
101℃
Core i7-13700K
102℃
参考:TechPowerUp

ゲーム時の温度(Cyberpunk 2077)
CPU名称温度
Core i5-12400F
47℃
Core i7-12700K
56℃
Ryzen 7 5700G
61℃
Ryzen 5 5600X
62℃
Core i9-11900K
62℃
Core i5-12600K
64℃
Ryzen 7 5800X
65℃
Core i9-10900K
67℃
Core i9-12900K
68℃
Ryzen 5 7600X
70℃
Ryzen 7 5800X3D
71℃
Ryzen 7 7700X
71℃
Ryzen 9 5950X
71℃
Core i5-13600K
72℃
Ryzen 9 5900X
72℃
Core i7-13700K
73℃
Ryzen 9 7900X
76℃
Ryzen 9 7950X
76℃
Core i9-13900K
89℃
参考:TechPowerUp

従来のCore i9並みの温度

レンダリング時の温度は最大温度の100℃とほぼ同じ102℃、ゲーミング時は73℃という結果でした。CPU温度も前世代から大幅に悪化し、消費電力と同じく前世代のCore i9並みの温度になっています。

Core i9と同じ電力設定は伊達ではなく、特にレンダリング時には非常に熱いです。テストでは空冷とはいえ、やはり高負荷な処理前提なら水冷は必須かなという印象です。高性能な水冷を用意できないなら、電力設定を低くして利用した方が安定しそうな結果です。

ただし、ゲーミング時には「Core i9-13900K」よりは大きく温度が下がっており、CPU全体の最大放熱量は減っていることが伺える結果です。Core i9と違い、ほぼゲームしかしないという人の場合には、標準設定で空冷でも高性能なものなら十分対応できるレベルとなっています。

また、ゲーミング時の13900Kとの温度差は16℃と非常に大きいですが、ゲーミング性能自体はほぼ差がないので、特にゲーミング時には増えたEコアが効率面では悪影響を与えているような気がします。

まとめ

ざっくりと各性能を見てきました。最後に評価をまとめています。

Core i7-13700K

良い点
  • 合計16コアによる非常に高いマルチスレッド性能
  • Core i9とほぼ同等の優れたゲーミング性能
  • 非常に優れたシングルスレッド性能
  • 最新のRyzen 9 / Core i9より大幅に安い
  • Ryzen 7000シリーズよりも安いマザーボード(前世代の600シリーズチップセットも対応)
  • DDR5とDDR4メモリに対応
  • PCIe 5.0のサポート

気になる点
  • 非常に高価(登場時:75,800円)
  • 非常に多い消費電力(MTP:253W)
  • 非常に多い発熱で、前世代のCore i7と違い空冷運用が厳しくなった
  • 電力効率がRyzenよりも大きく悪い
  • AVX512命令セットに未対応
  • M.2スロットでPCIe 5.0利用時にはPCIeの5.0(GPU)はx8動作

Core i7-13700K:前世代のCore i9以上の性能でやや安い価格。だけど消費電力および発熱も従来のCore i9並みに

「Core i7-13700K」は8個のPコアと8個のEコアによる合計16コアを備えた高性能CPUです。コア構成は前世代のCore i9と同じになりました。

マルチスレッド性能は「Core i9-12900K」や「Ryzen 9 7900X」少し上回るレベルの高性能さとなっています。前世代からの性能向上率は35%近くとなっており、Eコア4つ追加という割には向上率は高かったです。

それでいて価格は登場時7万円台と前世代のCore i9よりも安いので、マルチスレッド性能コスパは非常に優れています。対抗の「Ryzen 7 7700X」と比べると約55%も上回る圧倒的なマルチスレッド性能差を発揮しており、マルチスレッドコスパではCore i7一択です。

また、RTX 3080を用いたゲーミング性能に関しては「Core i9-13900K」とほぼ変わらないため、トップクラスです。マルチスレッド性能ではRyzen 9 / Core i9の最上位モデルには劣るために最強CPUではありませんが、前世代の最上位モデルを上回るマルチスレッド性能と現状トップクラスのゲーミング性能を備えるCPUとなっています。対抗のRyzen 7000シリーズよりも少し優れたゲーミング性能となっている他、「Ryzen 7 7700X」相手ならマルチスレッド性能も圧勝で、コスパで優位に立っています。

しかし、その性能と引き換えに消費電力が飛躍的に増加してしまった点は注意です。前世代のCore i7はMTPは180W~190Wとなっており、割と消費電力が少ないのが地味に嬉しい要素でしたが、「Core i7-13700K」は253Wと非常に多いです。前世代では空冷運用も普通にできましたが、「Core i7-13700K」では高負荷な処理前提だと空冷は厳しいです。電源容量とクーラーで前世代のCore i7よりも大幅な追加費用が必要となってしまっています。BTOなどのコスパや安さ重視構成ではかなり採用しにくいCPUになってしまいました。

CPUで特に重視されるマルチスレッド性能およびゲーミング性能が優れている上に、コスパも良いので十分魅力的なCPUではありますが、電力面に限れば対抗の「Ryzen 7 7700X」には大きく劣っている点は覚えておきましょう。総合的な評価を重視するのであれば、無印モデルを待つのが賢明という気はします。

大まかな所感は以上ですが、市場においての立ち位置についても少し触れると、第13世代では「Core i5-13600K」が従来のCore i7に近い価格となり競争力を持ちそうな印象があります。そのため、Core i7は従来よりは市場を席捲しない気がしますし、特にこの「Core i7-13700K」は電力面で明らかな弱点があるため、尚更人気は伸びなさそうな印象です。

全体としては既に登場している「Core i5-13600K」に加え、後に登場するであろう無印のCore i7およびCore i5が強力になると思われるので「Core i7-13700K」は不人気さによる値下げ行われない限りは、無印モデルが登場次第影が薄くなっていきそうだなと感じました。


といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です