「Core i7 9700F」は、「Core i7 9700K」のいわゆる焼き直しCPUです。そのため、各ベンチマーク測定があまり行われません。各レビューやベンチマークを見回ったところ、概ね「Core i7 9700K」と「Core i7 8700K」の中間あたりのスコアだったので、本記事における「Core i7 9700F」の各性能スコアは、「Core i7 9700K」と「Core i7 8700K」の中間値の推定値を使用しています。ご了承ください。また、掲載の価格は、記事更新時点での主に価格.comやAmazon等の最安値となっています。
Core i7 9700F の仕様について
ベースは「Core i7 9700K」と同じ
- 動作クロック低下(定格3.6GHz→3.0GHz,TB時4.9GHz→4.7GHz)
- 内蔵GPUが廃止(QSVも利用不可)
- TDPが65Wに
- オーバークロック不可
動作クロック低下
当然、処理能力もその分低下しています。ただし、TB時の動作クロックは少ししか下がっていない事もあり、各ベンチマークスコアでは大きくは低下していません。
内蔵GPUが廃止
「Core i7 9700K」は内蔵GPUが利用できましたが、「Core i7 9700F」は内蔵GPUが利用できません。とはいえ、Core i7はハイエンドCPUです。特に最近では、ゲーミングPCが流行している事もあり、増設用のグラフィックボードを利用するのが一般的です。要するに、内蔵GPUは無くても困る事はあまりありません。
ただしQSV(IntelCPUの内蔵GPUによるエンコード)は利用できないので、動画制作などを行いたい方は注意が必要です。QSVが良いという人には向きませんし、ハードウェアエンコードを行いたい人は、別途搭載するGPUにエンコーダーやデコーダーが付いているかはチェックしましょう。
ちなみに、製造側的には、粗悪品のダイを有効利用するため(一部を停止させる事で、問題なく作動させる)などでこのようなCPUが生まれるようです。
TDPが65Wに
実際の差は計測してみないことにはわからないので、「めっちゃ消費電力と発熱減ってるよ!」とは言えないですが、減っている事は間違いないかと思います。
ハイエンドCPUにとって、消費電力や発熱の減少は非常に嬉しい部分なので、個人的にこの点は特に評価しています。
オーバークロック不可
目印となる「末尾K」が無くなっている事から、少し知識のある人には一目瞭然だったりします。ただ、これは個人的には大きなデメリットとは言えないと思っています。
オーバークロックは、本来の限界を超えた動作クロックでCPUを稼働させる事により、性能を無理やり引き上げるものです。その代わり、消費電力や発熱の上昇等のリスクがあります。念のため触れておくと、ターボブーストとは別のものです。
性能を引き上げるとはいっても、元のCPU自体は同じのため、劇的な変化とまではいかない上に、当然常用は厳しい技術です。明らかにリスクの方が大きいです。
実際、オーバークロックを実際に有効活用している人はほとんど居ないと思います。
簡易比較表
CPU名 | ベンチマーク | コア(スレッド) | TDP | 定格クロック | TB時最大 | ワット パフォーマンス | コスパ | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i9 9900K | 20200 | 8(16) | 95W | 3.6GHz | 5.0GHz | 212.6 | 0.342 | 約59,000円 |
Core i7 9700K | 17200 | 8(8) | 95W | 3.6GHz | 4.9GHz | 181.1 | 0.366 | 約47,000円 |
Core i7 9700F | 16200 | 8(8) | 65W | 3.0GHz | 4.7GHz | 249.2 | 0.395 | 約41,000円 |
Core i7 8700K | 16100 | 6(12) | 95W | 3.7GHz | 4.7GHz | 169.5 | 0.366 | 約44,000円 |
Core i7 8700 | 15200 | 6(12) | 65W | 3.2GHz | 4.6GHz | 233.8 | 0.411 | 約37,000円 |
Core i5 9600K | 13900 | 6(6) | 95W | 3.7GHz | 4.6GHz | 146.3 | 0.448 | 約31,000円 |
Core i5 9400F | 12150 | 6(6) | 65W | 2.9GHz | 4.1GHz | 186.9 | 0.639 | 約19,000円 |
Core i5 8400 | 11700 | 6(6) | 65W | 2.8GHz | 4.0GHz | 180 | 0.531 | 約22,000円 |
処理性能のコスパでは、「Core i7 8700」の方に若干分がありますが、同じTDP65Wで、動作クロックは「Core i7 9700F」の方が低いです。また、第9世代は8世代に比べてやや放熱能力が向上している事もあり、熱関係は「Core i7 9700F」の方に分があります。付属のクーラーでも多分問題無いくらいになっていると思われます(Intelの付属クーラーは音がうるさいけど)。
という訳で、総合的には「Core i7 8700」と同程度のコスパで、ハイエンドCPU最強コスパの一角と言っても過言ではないと思います。
シングルスレッド性能
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9 9900K | 221 |
Core i7 9700K | 218 |
Core i7 8086K | 217 |
Core i7 9700F | 211(推定) |
Core i7 8700K | 203 |
Core i5 9600K | 201 |
Core i5 9400F | 182(推定) |
Core i5 8400 | 177 |
4万円前半のCPUとしては、非常に高いシングルスレッド性能
Cinebench R15のスコア200以上で、Core i7 9700Fより価格の安いCPUは一つもないという状況です。言わずもがな、ハイエンドという括りでは最高のコスパです。元のCPUである「Core i7 9700K」もコスパは良かったので、それが強化されトップに躍り出たという感じですね。
マルチスレッド性能
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9 9900K | 2063 |
Core i7 9700K | 1515 |
Core i7 9700F | 1463(推定) |
Core i7 8086K | 1421 |
Core i7 8700K | 1411 |
Ryzen 5 2600 | 1316 |
Core i5 9600K | 1074 |
Core i5 9400F | 977(推定) |
Core i5 8400 | 949 |
Core i5や第8世代を大きく引き離す高いマルチスレッド性能
こちらも、元のCPUが存在するので、正直数値について語る事は特にないです。最新のCore i7なので、マルチスレッド性能が高いのは当然ですし。
コスパはIntel製品の中ではトップクラスですが、マルチスレッド性能では「Ryzen」という強敵が居るので、褒めちぎるまではできないですね。価格が半額以下の「Ryzen 2600」にも結構迫られてしまっています。
とはいえ、数値自体は非常に高く、個人利用の範疇なら不可能な作業は無いと言い切れるくらいには高性能です。
第8世代のCore i7やCore i5は大きく引き離していますし、コスパは当然IntelCPUとしてはトップクラスです。安定のIntel製品にしたい!というのであれば文句無しの性能と言えると思います。
ゲーミング性能
CPU名称 | FPS |
---|---|
Core i9 9900K | 120.7 |
Core i7 9700K | 119.2 |
Core i7 9700F | 117.2(推定) |
Core i7 8086K | 116.1 |
Core i7 8700K | 115.7 |
Core i5 9600K | 115.2 |
Core i5 9400F | 114.6(推定) |
Core i5 8400 | 111.3 |
Ryzen 5 2600 | 99.8 |
Core i7以上では、非常に良いコスパ
しかし、ゲーミング性能のコスパだけを考えるのであれば、やはりCore i5がめちゃくちゃ強い。
「Core i7 9700F」と「Core i5 8400」を比較しても、FPSは5程度しか変わりません。推定という事を考慮して多少甘く見たとしても、10は違わないだろう、という感じです。
「ゲーム+何か重めのアプリケーション」という使い方が主なら「Core i7」が最適です。弱点らしい弱点の無いCore i7は非常に使い勝手が良いです。
その中で特にコスパの良い「Core i7 9700F」はやはり非常に魅力的です。
まとめ
最後にまとめです。
Core i7-9700F の良い点
- 第9世代のCore i7以上の中で最も安く、コスパが良い
- ワットパフォーマンスが非常に良い
- TDPが65Wで発熱(消費電力)が少なめ
Core i7-9700F の悪い点
- 内蔵GPUが無効(QSVも利用不可)
- オーバークロックができない
- 第9世代のCore i7では最も性能が低い
【要点】
- 内蔵GPU無効だが、この性能帯では影響はが出る事は少ない
- 従来のCore iと同じく全体的に高水準な性能
- ワットパフォーマンスが非常に良い
- ゲーミング性能のコスパはCore i5の方が良い
内蔵GPU無効だが、この性能帯では影響が出る事は少ない
Core i7はハイエンドCPUです。現在のハイエンドCPUの主な用途は、ゲーミングPC用だと思います。ゲーミングPCでは、増設用の高性能なグラフィックボードを利用する事になります。要するに、内蔵GPUは無くても困る事はケースはあまりありません。
ほぼ唯一大きな欠点となりそうなのはQSV(IntelCPUの内蔵GPUによるエンコード)が利用できない事です。気になる方は事前に注意しておきましょう。
全体的に高水準な性能
Core i7 9700Fも最新のCore i7なので、Core i7の特徴である、全体的に高水準な性能を受け継いでいます。その性能を持ちつつ、内蔵GPU廃止により価格が抑えられ、コスパが各方面で良くなっています。第10世代の新CPUの発表も近いかな?という微妙な時期の登場ではあったものの、非常に魅力的なCPUです。
ワットパフォーマンスが非常に良い
Core i7 9700FはTDPが65Wになった事により、ワットパフォーマンスがめちゃくちゃ良いです。少なくとも、(2019年9月時点の)主流CPUの中ではダントツだと思います。当然、発熱も少なくなっているはずなので、ハイエンドCPUとしては非常に嬉しい部分です。
ゲーミング性能のコスパはCore i5の方が良い
ゲーミング性能「のみ」のコスパであれば、Core i5があまりに強すぎて、正直完敗に近いと思います。ただし、これは「Core i7 9700F」に限った話ではなく、全てのCore i7やCore i9に言える事です。それに、マルチスレッド性能ではCore i7の方が圧倒的に良いので、Core i7の中でも安い「Core i7 9700F」は、強いと個人的には思います。
とはいえ、Core i5の方が2万円も安いのはめちゃくちゃでかい。ゲームがメインで出来るだけコスパの良いものを、という事になれば、Core i5の方が有力になると思います。
記事はここまでになります。最後までご覧いただきありがとうございました。