市場でちらほら見掛けるようになってきたモバイル端末向けRyzenの第2世代(3000番台)の性能比較・評価記事です。
第1世代(2000番台)のRyzenでも未だに性能不足ではなく人気な中での登場ですから、当然期待は高まりますが、実際の性能はどうなのでしょうか?
本記事の情報は、記事執筆時点(2019年6月12日)のものとなっています。現在は異なる可能性があるため注意してください。
簡易比較表
まずは簡単な性能比較表を見ていきます。前世代のRyzenと、主要なCore i製品との比較です。CPU名が赤字のものが第2世代のRyzenです。
CPU | 性能スコア | コア/スレッド | 動作クロック | TDP | 内蔵グラフィック |
---|---|---|---|---|---|
Core i7-8550U | 8300 | 4/8 | 1.8GHz-4.0GHz | 15W | UHD Graphics 620 |
Ryzen 7 3700U | 8050 | 4/8 | 2.3GHz-4.0GHz | 15W | Radeon RX Vega 10 |
Ryzen 5 3500U | 8050 | 4/8 | 2.1GHz-3.7GHz | 15W | Radeon Vega 8 |
Core i5-8250U | 7600 | 4/8 | 1.6GHz-3.4GHz | 15W | UHD Graphics 620 |
Ryzen 7 2700U | 7450 | 4/8 | 2.2GHz-3.8GHz | 15W | Radeon RX Vega 10 |
Ryzen 5 2500U | 7400 | 4/8 | 2.0GHz-3.6GHz | 15W | Radeon RX Vega 8 |
Ryzen 3 3300U | 6200 | 4/4 | 2.1GHz-3.5GHz | 15W | Radeon RX Vega 6 |
Ryzen 3 2300U | 6100 | 4/4 | 2.0GHz-3.4GHz | 15W | Radeon RX Vega 6 |
Ryzen 3 3200U | 5100 | 2/4 | 2.6GHz-3.5GHz | 15W | Radeon RX Vega 3 |
Ryzen 3 2200U | 4400 | 2/4 | 2.5GHz-3.5GHz | 15W | Radeon RX Vega 3 |
性能は微増程度
ベンチマークスコアは、全体的に微増といった感じ。残念ながら大幅な上昇とはなっていないようです。
追記:以前は全モデル RX Vega が搭載になったと記載していましたが、第1世代(2000シリーズ)から全てRX Vegaでした(システム上でRXが表示されない事があるだけだったので勘違いしていた)。そのため誤りでした。本当に申し訳ございません。
Ryzen 5と Ryzen 7の性能差が非常に小さい
PassMarkスコアでは、Ryzen 5 と Ryzen 7 の性能差が非常に小さく、差がほとんどありません。後述する「Cinebench R15」というベンチマークでも、PassMarkよりは差が大きくなってはいるものの、差自体は小さいという状況でした。これまた後述するGPU性能差は約1割ほどで、CPU性能よりは大きめですが、内蔵GPUという事で元の性能自体が良いものではないので、体感できる差があるレベルではないです。
ノートPC用のCPUは、一般人への個人販売が無いので具体的な価格はわからないですが、Ryzen 5 と Ryzen 7 それぞれが搭載されたPCの価格を比較すると、少なくとも2万円以上の差がありそうなので、コスパ的にはRyzen 5一択となりそうです。
CPU性能
シングルスレッド性能
CPU | Cinebench R15 (Single-Core) |
---|---|
Core i5-8250U | 157 |
Core i7-7500U | 149 |
Ryzen 7 3700U | 146 |
Ryzen 3 3300U | 139 |
Ryzen 7 2700U | 138 |
Ryzen 5 3500U | 138 |
Ryzen 3 2300U | 134 |
Core i5-7200U | 132 |
Ryzen 3 2200U | 129 |
シングルスレッド性能は、未だにCore iが優位
シングルスレッド性能は、やはり未だにIntelのCore iの方が強いです。最新のRyzenでも一世代前のCore i7の性能に届いていません。軽い処理がメインとなるモバイル端末においては、シングルスレッド性能は特に重視されるので、印象的にはあまり良くないかもしれないです。とはいえ、性能自体は向上していますし、差も大きくないので、他の面でカバーできる範囲です。
マルチスレッド性能
CPU | Cinebench R15 (Multi-Core) |
---|---|
Ryzen 7 3700U | 701 |
Ryzen 7 2700U | 662 |
Ryzen 5 3500U | 620 |
Ryzen 5 2500U | 584 |
Core i7-8550U | 564 |
Core i5-8250U | 549 |
Ryzen 3 3300U | 510 |
Ryzen 3 2300U | 480 |
Ryzen 3 3200U | 344 |
Core i5-7200U | 334 |
Ryzen 3 2200U | 318 |
マルチスレッド性能は、Core iよりRyzenが優位
マルチスレッド性能は、シングルスレッドとは逆に、RyzenがCore iより優位です。CPUに詳しい人にとってはお馴染みの、従来のRyzenとCore iの違いですね。
一世代前のRyzenでも最新のCore i7より高性能で、更に引き離す形となっています。マルチタスクやエンコード等を行うのであれば、Ryzenの方が効率的です。
内蔵GPU性能
モバイル端末のRyzenといえば、やはり注目はグラフィック性能です。GPU自体には変化が無かったのでおさらいといった形になりますが、見ていきましょう。
上手く比較できるデータが見つからず、主流でないPassMarkの数値での比較ですがご容赦ください(数も少ない)。
GPU | Passmark |
---|---|
Radeon RX Vega 8 | 1639 |
Radeon RX Vega 6 | 1600 |
Radeon RX Vega 3 | 1119 |
UHD Graphics 620 | 1050 |
RyzenのVegaが、IntelのUHDに大きな差をつける
グラフィック性能も微増程度で、大幅な向上とはなりませんでしたが、相変わらずRyzenの方がCore iより圧倒的優位です。
RyzenはAPU(CPUとGPUが統合)なので、当然といえば当然ですが、その差はかなり大きいです。
最新のRyzenのAPUでは、「Fortnite」が平均60FPS近く出るようになっているという話もありました。軽めのゲームなら、3Dのものでもプレイできるようです。これはIntelの内蔵GPUでは厳しいので、大きな利点といえます。
また念のため触れておくと、内蔵GPUはどんなに性能が良いものでも、グラフィックボード利用よりは基本的に低性能です。価格にもよりますが、その差はかなり大きく、内蔵GPUで高画質な3Dゲームは基本的に厳しいと思っておいた方が良いです。
総評(雑感)
モバイル端末向けのRyzen 3000シリーズは、前世代からの性能向上は全体的に微増程度でした。
新アーキテクチャが採用されたという訳でもないので、まぁこんなもんかという感じでしょうか。2000シリーズの方が明らかに劣っている、という事は無さそうです。当然、3000シリーズのラインナップが揃うのを待った方が良い、ということもないので、市場的にはあまり影響は無い新CPUという印象を受けます。
価格変化は特になく、現状の2000シリーズが徐々に3000シリーズに置き換わる形になりそう。
記事としては、性能向上の話というよりは、従来のRyzen APUの特徴や良さを再確認するのがメインとなってしまいましたが、Intelの新CPUが来る前におさらい出来る良い機会だったと思う事にしたいと思います。
記事はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。