「Ryzen 9 7950X3D」ざっくり評価【性能比較】

3D V-Cache搭載でL3キャッシュが大容量化され、ゲーミング性能の強化が期待される「Ryzen 9 7950X3D」のレビューが解禁されたので、海外レビューを参考にざっくりと評価していきたいと思います。

発売は米国では2月28日ですが、日本では3月3日の11時に発売されることとなっており、記事執筆時点ではまだ発売されていません。また、X3DモデルはRyzen 7000シリーズに含まれるために対応チップセットなどは共通ですが、X3Dモデル対応の記事執筆時点では最新のドライバが必要となるため注意してください。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2023年2月28日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

概要

3D V-Cacheでゲーム性能の向上が期待

「Ryzen 9 7950X3D」は、「Ryzen 9 7950X」を基に「3D V-Cache」というL3キャッシュメモリが追加されたモデルです。64MBという大容量で高速なキャッシュの追加のおかげで、特にゲームにおける向上が期待されています。

「3D V-Cache」は、2022年に発売された「Ryzen 7 5800X3D」で既に消費者向けに実用化されています。当時の「Zen 3」のRyzenは第12世代のCoreに対してゲームでは不利なパフォーマンスとなっていましたが、「3D V-Cache」を搭載した「Ryzen 7 5800X3D」は格段にゲーム性能が向上しており、当時ゲーミングCPUとして最速だった「Core i9-12900K」に匹敵する性能を発揮しました。「3D V-Cache」はゲームでの優位性は証明されています。そのこともあり、今回のRyzen 7000シリーズのX3Dモデルは非常に注目されています。

3D V-Cacheについて

「3D V-Cache」は、CCD(CPU complex die)上に積み重ねるようにして付け足された64MBのSRAMキャッシュメモリとなっています。実装方法は従来からすると特殊で、別の部品として搭載されますが、このキャッシュはCCDが元から持つL3キャッシュと連続して利用可能で、同じ速度で動作します。そのため、元から持つ32MBのL3キャッシュと併せて拡張された96MBの大容量キャッシュとして利用できます。名称も単にL3キャッシュダイと呼ばれます。プロセスも同様に6nmです。

3D V-Cacheは1つのCCD(8コアまで)に対して適用

「3D V-Cache」ですが、今回評価する「Ryzen 9 7950X3D」のような、8コアを超えるCPUで実装する場合には少し問題があります。

Ryzen 7000シリーズの「Zen 4」CPUは、8コアを搭載できるCCD(CPU complex die)を2つまで搭載し、最大で合計16コアを提供することができますが、「3D V-Cache」は1つのCCD(8コア)に対して適用されるため、2つのCCDを持つ16コアCPUである「Ryzen 9 7950X3D」の場合、もう1つのCCDは32MBのL3キャッシュメモリを持つ、元モデルと全く変わらないものとなります。

この設計に関しては、現状のゲームでは必要なCPUのコアが8コア以下であると認識されていることが要因だとAMDは説明しています。これは先代モデルである8コアの「Ryzen 7 5800X3D」で、16コアの「Ryzen 9 5950X」を超えるゲーミングパフォーマンスが確認されたことや、Pコアを8コアまでしか持たない第12、13世代のCoreプロセッサでも高いゲーミング性能が得られていることが裏付けとなっているため、正しい認識と言えます。

そのため、2つのCCDに処理やキャッシュを分散させるよりは、1つのCCDにキャッシュを集中し、優先コアとして処理させることでゲーミングパフォーマンスを最大化しつつコストを節約できるというのがAMDの考えです。

また、これには上記以外にも利点があります。先代の「Ryzen 7 5800X3D」では「3D V-Cache」を搭載するCCDでは利用する消費電力が底上げされて熱管理も難しくなるため、オーバークロックを出来ないようになっていましたが、今回の「Ryzen 9 7950X3D」は1つのCCDではその影響を受けないため、クロックを自由に調整することが可能になっています。Ryzenで利用できる疑似的なオーバークロック機能である「PBO(Precision Boost OverDrive)」も利用可能となっています。

簡易比較表

先代モデルや競合モデルとの簡易比較表を見ていきます。

元モデルとの比較(Ryzen 9 7950X)

まずは、「Ryzen 9 7950X3D」を、元モデルにあたる「Ryzen 9 7950X」と比較した表を載せています。

Ryzen 9 7950X3D
Ryzen 9 7950X
アーキテクチャZen 4Zen 4
プロセス
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
ソケットAM5AM5
コア
16コア
16コア
スレッド
32スレッド
32スレッド
TDP(PL1)120W170W
PPT (TDP/PL2)
162W
230W
クロック(基本)
4.2GHz
4.5GHz
クロック(1コア最大)
5.7GHz
5.7GHz
クロック(16コア最大)
5.0GHz
5.2GHz
L2キャッシュ
16MB16MB
L3キャッシュ
128MB
96MB+32MB)
64MB
(32MB+32MB)
Tjunction max(最大温度)
89℃
95℃
内蔵GPU
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
対応メモリ(定格最大)
DDR5-5200
DDR5-5200
参考価格
※2023年2月28日時点
111,800円
(699ドル)
89,980円
(発売時:699ドル)

クロックや電力面での設定が少し異なる

両者の物理的な仕様は「3D V-Cache」の搭載以外はほぼ同じものですが、クロックや電力設定で多少の違いがあります。

まず電力設定ですが、7950XではTDPが170W、PPTが230Wであったのに対し、7950X3DではTDPが120W、PPTが162Wへと緩和されています。X無しモデルとの間のような設定です。また、関連してサーマルスロットリングが有効となるまでの最大温度であるTjunction maxが、7950Xでは95℃であったのに対し、7950X3Dでは89℃と緩和されています。

クロックもベースクロックと16コア動作時のクロックが下がっています。それぞれ、4.5GHzm→4.2GHz、5.2GHz→5.0GHzとなっています。

この二つの設定によって、標準設定のままで利用する場合には、7950Xよりも消費電力が減る代わりに、マルチスレッド性能は少し低下することが予想されます。

価格は発売時設定は同じだが、7950Xは値下がりしているため安い

「Ryzen 9 7950X3D」の米国での希望小売価格は699ドルとなっており、これは「Ryzen 9 7950X」の発売時と同じです。国内での想定価格は111,800円です。

しかし、X3Dモデルの方がコストは間違いなく高いですし、円安がやや落ち着きを見せたことや、売れ行きが予想より良くなかったとの噂もあって、7950Xは発売時からは大きく値下がりしています。記事執筆時点では89,980円程度で購入することができるため、「Ryzen 9 7950X3D」の方が約2.2万円も高価です。

「Ryzen 7 5800X3D」の例を見ても、発売後に2万円の値下がりを見せることは考えにくいため、基本的には7950Xよりは1~2万円は高い状態での販売になるのではと思います。

また、競合となる「Core i9-13900K」は更に少し安いため、正直コスパでは少し不利に見えます。

既存モデルとの比較

※価格は2023年2月28日時点でのおおよその市場価格です。CPU名のリンクはAmazonへの商品リンクです。

簡易比較
CPU名コアスレッドクロック
定格 / 最大
TDP
(PL1 – PL2)
iGPUL3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 7950X3D16324.2 / 5.7GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)128MB111,800円
Ryzen 9 7950X16324.5 / 5.7GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB89,980円
Core i9-13900K24
(8P+16E)
323.0 / 5.8GHz
2.2 / 4.3GHz
125W – 253WUHD 77036MB81,580円
Core i9-13900KF24
(8P+16E)
323.0 / 5.8GHz
2.2 / 4.3GHz
125W – 253W無し36MB79,780円
Ryzen 9 7900X12244.7 / 5.6GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB71,740円
Ryzen 9 790012243.7 / 5.4GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)64MB69,800円
Core i7-13700K16
(8P+8E)
243.4 / 5.4GHz
2.5 / 4.2GHz
125W – 253WUHD 77030MB57,980円
Core i7-13700KF16
(8P+8E)
243.4 / 5.4GHz
2.5 / 4.2GHz
125W – 253W無し30MB56,580円
Core i7-1370016
(8P+8E)
242.1 / 5.2GHz
1.5 / 4.1GHz
65W – 219WUHD 77030MB55,480円
Core i7-13700F16
(8P+8E)
242.1 / 5.2GHz
1.5 / 4.1GHz
65W – 219W無し30MB51,900円
Core i9-12900KS16
(8P+8E)
243.4 / 5.5GHz
2.5 / 4.0GHz
150W – 241WUHD 77030MB79,800円
Core i9-12900K16
(8P+8E)
243.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W – 241WUHD 77030MB75,980円
Ryzen 9 5950X16323.4 / 4.9GHz105W – 142W無し64MB78,800円
Core i5-13600K14
(6P+8E)
203.5 / 5.1GHz
2.6 / 3.9GHz
125W – 181WUHD 77024MB45,970円
Core i5-13600KF14
(6P+8E)
203.5 / 5.1GHz
2.6 / 3.9GHz
125W – 181W無し24MB43,480円
Ryzen 7 7700X8164.5 / 5.4GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB48,490円
Ryzen 7 77008163.8 / 5.3GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB53,800円
Core i7-12700K12
(8P+4E)
203.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W – 190WUHD 77025MB52,580円
Core i7-1270012
(8P+4E)
202.1 / 4.9GHz
1.6 / 3.6GHz
65W – 180WUHD 77025MB45,980円
Ryzen 9 5900X12243.7 / 4.8GHz105W – 142W無し64MB47,540円
Ryzen 5 7600X6124.7 / 5.3GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB35,580円
Ryzen 5 76006123.8 / 5.1GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB37,500円
Core i5-12600K10
(6P+4E)
163.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W – 150WUHD 77020MB41,980円
Core i5-1340010
(6P+4E)
162.5 / 4.6GHz
1.8 / 3.3GHz
65W – 154WUHD 73020MB32,780円
Core i5-13400F10
(6P+4E)
162.5 / 4.6GHz
1.8 / 3.3GHz
65W – 148W無し20MB28,280円
Ryzen 7 5800X3D8163.4 / 4.5GHz105W – 142W無し96MB53,000円
Ryzen 7 5800X8163.8 / 4.7GHz105W – 142W無し32MB42,200円
Ryzen 7 5700X8163.4 / 4.6GHz65W – ?W無し32MB30,980円
Core i5-124006122.5 / 4.4GHz65W – 117WUHD 73018MB26,480円
Ryzen 5 5600X6123.7 / 4.6GHz65W – ?W無し32MB28,900円

驚異的なキャッシュ容量と価格

「Ryzen 9 7950X3D」は、やはり合計128MBのL3キャッシュが目立ちます。頭一つどころか二つくらい抜けている印象です。

しかし、価格も一段高くなっており、「Core i9-13900K」や「Ryzen 9 7950X」をも2万円以上も上回る価格が想定されています。発売日の想定価格は111,800円です。発売後はやや高い価格設定である可能性を考慮しても、「Ryzen 7 5800X3D」の例を見ると値下がりの余地が小さいモデルと推察されるため、下がっても10万円程度までかなというのが筆者の予想です。円高が大きく進めばその限りではありませんが、その際には他モデルも比例して値下がりするはずなので、「Ryzen 9 7950X3D」の高さは残念ながら変わらないかと思います。

コスパも気になるところですが、実際の性能についてはこの後見ていきますので、そこでコスパにも触れていこうと思います。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアを海外レビューを参考に見ていきます。使用されたメモリは、DDR5に対応しているモデルでは「DDR5-6000」で、その他は「DDR4-3600」となっています。また、使用されたGPUは「GeForce RTX 4090」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R23 Multi
CPU名称スコア
Ryzen 9 7950X
38096
Core i9-13900K
37263
Ryzen 9 7950X3D
35769
Core i7-13700K
30770
Ryzen 9 7900X
29242
Core i9-12900K
27422
Ryzen 9 5950X
25869
Core i5-13600K
23847
Core i7-12700K
22801
Ryzen 9 5900X
21552
Ryzen 7 7700X
19901
Ryzen 7 7700
18710
Core i5-12600K
17648
Ryzen 5 7600X
15143
Ryzen 7 5800X
15038
Ryzen 7 5800X3D
14514
Core i5-13400F
14311
Ryzen 7 5700X
13583
Core i5-12400F
11801
Ryzen 5 5600X
11250
参考:TechPowerUp

Ryzen 9 7950XやCore i9-13900Kよりも若干低いマルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、元モデルである「Ryzen 9 7950X」や「Core i9-13900K」よりも5%~6%ほど低い性能となっています。7950Xよりも全コア稼働時の最大クロックが5.2GHzから5.0GHzと約4%低下しているので、概ねその差がそのまま性能に出た感じになっています。

とはいえ、その16コア32スレッドによる性能は十分すぎるほど高いです。7950Xとコア数も同じで実用性が変わるほどの差ではないので、大きな弱点にはならないかなと思います。ただし、価格は7950Xや「Core i9-13900K」よりも高価ですから、マルチスレッドコスパも負けることになる点は留意しておくべきかと思います。

「Ryzen 9 7950X3D」もPBOなどで調整することで性能を引き上げることは可能ですが、最大温度が89℃と低くなっているため伸び代は小さめになりますし、3D V-Cacheを搭載するCCDについては温度や電力面でマルチスレッド処理においてはわずかながらネックとなると思われるため、マルチスレッドにのみ関して言えばやはり7950Xの方がわずかながら上回ると思います。

このマルチスレッド性能と価格の差があるため、「Ryzen 9 7950X3D」はどの面から見ても最適な最上位CPUとはならない点は、ゲームをメイン用途としない場合には重要なポイントになると思います。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称スコア
Core i9-13900K
2261
Core i7-13700K
2116
Ryzen 9 7950X
2037
Ryzen 9 7950X3D
2036
Ryzen 9 7900X
2033
Core i9-12900K
2028
Core i5-13600K
2002
Ryzen 7 7700X
1993
Core i7-12700K
1944
Ryzen 5 7600X
1959
Ryzen 7 7700
1917
Core i5-12600K
1906
Core i5-13400F
1796
Core i5-12400F
1710
Ryzen 7 5800X
1567
Ryzen 7 5700X
1509
Ryzen 5 5600X
1505
Ryzen 7 5800X3D
1476
参考:TechPowerUp

Ryzen 9 7950Xとほぼ同等の性能

1コアでの最大クロックは7950Xと同じのため、シングルスレッド性能はほぼ同等です。1コアに限定された一度に扱うデータ量が少ない処理では拡張されたキャッシュメモリも活きないので、差は出ません。「Core i9-13900K」と比べると若干劣る点も同様です。ここは予想されていた点なので、特に語ることはないです。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。

今回は12種類のゲームで測定したフレームレート(FPS)の平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 4090」です。2023年時点では圧倒的な性能を誇るハイエンドGPUとなっています。ただし、超高性能なGPUを使用することはCPUにおける詳細なボトルネック差を測定するには最適ですが、実際にはこのクラスのGPUを使用する人は一般の人はほとんど居らず、より低い性能のGPUが使用されることが多いと思います。低性能なGPUではCPUに要求される性能も低くなり、その場合にはこのテストほどCPUによる差が顕著には出ない可能性が高い点に注意してください。本テストは、あくまで市場で最高レベルのハイエンドGPUを使用した場合のものです。

その他の設定のついては、基本ウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

12種類のゲームでの平均fps(1080p)
CPU名称スコア
Core i9-13900K
250.5
Ryzen 9 7950X3D
247.1
Core i7-13700K
241.7
Ryzen 7 7700X
227.7
Core i5-13600K
227.0
Ryzen 9 7900X
226.1
Ryzen 7 7700
224.5
Ryzen 9 7950X
224.2
Ryzen 5 7600X
222.9
Core i9-12900K
221.0
Core i7-12700K
211.5
Ryzen 7 5800X3D
207.1
Core i5-12600K
196.4
Ryzen 9 5950X
187.7
Ryzen 9 5900X
187.2
Core i5-13400F
184.6
Ryzen 7 5800X
183.3
Ryzen 7 5700X
181.4
Ryzen 5 5600X
179.3
Core i5-12400F
177.0
Core i9-11900K
167.8
Ryzen 7 5700G
151.9
Core i5-11400F
135.0
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの平均fps(1440p)
CPU名称スコア
Core i9-13900K
235.4
Ryzen 9 7950X3D
229.3
Core i7-13700K
228.4
Core i5-13600K
218.4
Ryzen 7 7700X
214.5
Ryzen 9 7900X
214.1
Core i9-12900K
212.8
Ryzen 9 7950X
212.4
Ryzen 7 7700
212.2
Ryzen 5 7600X
210.9
Core i7-12700K
205.0
Ryzen 7 5800X3D
197.2
Core i5-12600K
190.5
Ryzen 9 5950X
182.2
Ryzen 9 5900X
181.8
Core i5-13400F
180.5
Ryzen 7 5800X
178.2
Ryzen 7 5700X
176.1
Ryzen 5 5600X
174.3
Core i5-12400F
173.3
Core i9-11900K
166.2
Ryzen 7 5700G
150.4
Core i5-11400F
134.2
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの平均fps(4K)
CPU名称スコア
Core i9-13900K
168.1
Core i7-13700K
166.8
Ryzen 9 7950X3D
166.7
Core i5-13600K
164.1
Core i9-12900K
163.5
Ryzen 7 7700X
162.0
Ryzen 9 7950X
161.3
Ryzen 9 7900X
161.2
Core i7-12700K
160.9
Ryzen 7 7700
160.8
Ryzen 5 7600X
160.5
Ryzen 7 5800X3D
159.8
Core i5-12600K
158.1
Core i5-13400F
154.6
Ryzen 9 5950X
152.2
Ryzen 9 5900X
151.7
Core i5-12400F
151.5
Ryzen 7 5800X
150.4
Ryzen 7 5700X
149.1
Ryzen 5 5600X
148.4
Core i9-11900K
143.8
Ryzen 7 5700G
133.6
Core i5-11400F
126.7
参考:TechPowerUp

7950Xから大きく向上し、Core i9-13900Kに匹敵するゲーミング性能に

最も期待されていたゲーミング性能は、期待通りに大きく向上しています。7950Xと比較すると、1080pで約10.2%、1440pで約7.4%の向上が見られます。

同世代のクロック差も小さい同コア数のCPUで10%もの差が出ることはまずないので、やはり3D V-Cacheの恩恵は非常に大きいことが伺えます。

ただし、競合である「Core i9-13900K」と比較するとごくわずかに劣る同等程度のパフォーマンスとなっており、優位性があるとは言えないレベルではありました。とはいえ、匹敵するレベルまで性能は押し上げられており、最強のゲーミングCPUの一つとして名を連ねることには成功したので、Ryzenとしては大きな価値があります。

また、「Ryzen 9 7950X3D」は標準設定で最大消費電電力が162Wなのに対し、「Core i9-13900K」は253Wとなっており、圧倒的な差があります。電力面について詳しくは後述しますが、性能自体は同等でも電力面を考慮すれば明らかに「Ryzen 9 7950X3D」の方が効率的であるため、優秀なゲーミングCPUと呼べると思います。

16コアによる圧倒的なマルチスレッド性能とトップクラスのゲーミング性能の両者を、Core i9より圧倒的に少ない消費電力で実現できる超高効率CPUとして、非常に強力なゲーミングCPUだと思います。

消費電力と効率

消費電力

消費電力を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」によるマルチスレッド処理時の消費電力と、ゲーミング時平均(1080p/13タイトル)による消費電力の二つを見ていきます。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称消費電力
Ryzen 5 5600X
61W
Ryzen 7 5700X
61W
Core i5-12400F
64W
Core i5-13400F
65W
Core i5-12600
67W
Ryzen 7 7700
82W
Ryzen 7 5800X3D
90W
Ryzen 5 7600X
115W
Ryzen 9 5950X
117W
Core i5-12600K
121W
Ryzen 7 5800X
125W
Ryzen 9 5900X
126W
Ryzen 7 7700X
138W
Ryzen 9 7950X3D
140W
Core i7-12700K
167W
Core i5-13600K
189W
Ryzen 9 7900X
200W
Core i9-12900K
244W
Core i7-13700K
252W
Ryzen 9 7950X
254W
Core i9-13900K
276W
参考:TechPowerUp

消費電力(13ゲーム1080p平均)
CPU名称消費電力
Core i5-12400F
38W
Core i5-13400F
43W
Ryzen 5 5600X
45W
Ryzen 7 5700X
48W
Core i5-12600
51W
Ryzen 7 5800X3D
52W
Ryzen 7 7700
56W
Ryzen 9 7950X3D
56W
Core i5-12600K
59W
Ryzen 7 7700X
62W
Ryzen 5 7600X
66W
Ryzen 7 5800X
68W
Core i7-12700K
74W
Ryzen 9 5900X
85W
Ryzen 9 7900X
86W
Ryzen 9 7950X
89W
Ryzen 9 5950X
89W
Core i5-13600K
89W
Core i9-12900K
98W
Core i7-13700K
107W
Core i9-13900K
143W
参考:TechPowerUp

性能から想像できないほど省電力

元の電力設定がややマイルドなため、消費電力は性能からは想像できないほど省電力です。

Blenderでは140Wとなっており、7950Xの254Wよりも114Wも少ない電力で稼働しています。ゲーミングにおいても、7950Xの89Wよりも33W少ない56Wとなっています。「Core i9-13900K」と比べるとその差は更に大きくなり、Blenderでは136W、ゲーミングでは87Wも少ない電力で動作します。

既存の高消費電力ハイエンドCPUに匹敵する性能ながら、大幅に少ない電力で動作できることがわかります。温度については後に触れますが、CPUクーラーや電源に余裕が出るのが有難いです。

また、特に目立つのはやはりゲーミング時の省電力さです。「Ryzen 9 7950X3D」は「Core i9-13900K」にも匹敵する現状トップクラスのゲーミング性能を備えながら、ミドルレンジCPUと肩を並べるほどの電力しか消費しません。

7950Xや「Core i9-13900K」でも、電力や温度設定を調整することでわずかな性能を犠牲に消費電力を大幅に下げることが可能なことが実証されており、多少消費電力を下げることは可能ではありますが、「Ryzen 9 7950X3D」は元から他の32スレッドクラスのハイエンドCPUの中では圧倒的に少ない消費電力ながら、トップクラスの性能を維持しています。これは3D V-Cacheの恩恵であることは間違いないと思われ、非常に魅力的です。

ただし、マルチスレッド性能に関しては元が若干劣るため、上述のように7950Xが調整次第で同じ水準になる可能性も十分考えることができます。「Ryzen 9 7950X3D」がハイエンドな性能CPUの中で非常に優れた省電力性を持つのは間違いないですが、マルチスレッドに関しては7950Xと比べて特別に電力的優位性を備えたCPUであると断言できる訳ではない点は一応留意しておくべき点かなと思います。

電力効率(ワットパフォーマンス)

電力効率を見ていきます。レンダリングおよびゲーミング時の効率です。

各テストで得られたスコアを消費電力で割って算出した、1Wあたりのスコアで見ていきます。ただし、効率が悪かったとしても、レンダリングなどの処理量が決まっているスコアでは高性能な方が処理を早く終えることが出来るため優位性がありますし、ゲームにおいても高いfpsを得ているので、効率が悪いから一概にダメという訳ではない点には留意です。

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称1Wあたりのスコア
Ryzen 9 7950X3D
253.3
Ryzen 7 7700
231.6
Core i5-13400F
228.3
Ryzen 7 5700X
223.0
Ryzen 9 5950X
221.1
Core i5-12400F
188.2
Ryzen 5 5600X
186.3
Core i5-12600
178.3
Ryzen 9 5900X
169.7
Ryzen 9 7950X
158.4
Ryzen 7 5800X3D
157.1
Ryzen 9 7900X
152.2
Core i5-12600K
148.7
Ryzen 7 7700X
146.9
Core i7-12700K
138.6
Ryzen 5 7600X
136.2
Core i9-13900K
130.5
Core i5-13600K
125.1
Core i7-13700K
121.4
Ryzen 7 5800X
116.9
Core i9-12900K
110.8
参考:TechPowerUp

電力効率(13ゲーム1080p平均)
CPU名称1Wあたりのfps
Core i5-12400F
4.55
Ryzen 9 7950X3D
4.33
Core i5-13400F
4.26
Ryzen 7 7700
4.05
Ryzen 7 5800X3D
3.94
Ryzen 5 5600X
3.83
Ryzen 7 5700X
3.64
Ryzen 7 7700X
3.65
Core i5-12600
3.59
Ryzen 5 7600X
3.25
Core i5-12600K
3.24
Core i7-12700K
2.78
Ryzen 9 7900X
2.63
Ryzen 7 5800X
2.62
Core i5-13600K
2.50
Ryzen 9 7950X
2.47
Core i7-13700K
2.22
Core i9-12900K
2.19
Ryzen 9 5900X
2.14
Ryzen 9 5950X
2.06
Core i9-13900K
1.74
参考:TechPowerUp

驚異的に優れた電力効率

電力効率は非常に優れています。7950Xと比較すると、Blenderでは約60%、ゲーミング時には約75.3%も効率が向上しています。「Core i9-13900K」と比較すると、それぞれ約94.1%、約148.9%も上回っており、勝負になっていないレベルです。

Blenderについては、先にも触れた通り、電力や温度設定の調整で7950Xや13900K側も大きく改善する余地がありますし、元の性能が少し勝っているため差が縮む可能性があります。

ただし、ゲーミングについては元々トップクラスの性能ですから、間違いなく圧倒的な優位性があります。元モデルである7950Xとの差を見ても、Blenderとゲーミング時で約15.9%の差が出来ており、3D V-Cacheが性能向上だけでなく効率面でも貢献していることが伺えます。

ミドルレンジクラスの省電力さでトップクラスのゲーミング性能を発揮しつつ、効率面でも圧倒的なものを見せてくれており、「Ryzen 9 7950X3D」がゲームにおいては総合的には圧倒的な王者であることは疑いようが無く見えます。

その分めちゃくちゃ高価であるため、コスパについてはまた別の話にはなるものの、総合的に見て最強のゲーミングCPUが欲しいなら、一歩リードした存在であると太鼓判は押せる実力を見せてくれていると思います。

温度

CPUの温度を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」動作時と、ゲーミング時(Cyberpunk 2077)の二つの温度を見ていきます。基準温度は25℃で、動作から10分後の定常状態の温度となっています。

冷却システムは、CPUクーラーに「NH-U14S」が使用されています。14cmファン1基の空冷クーラーとなっており、空冷としては高めの冷却性能ですが、ハイエンドCPUでよく利用される240mm以上の水冷クーラーなどのハイエンドクーラーにはやや劣る冷却性能のクーラーとなっています。

レンダリング時の温度(Blender)
CPU名称温度
Core i5-13400F
49℃
Core i5-12400F
51℃
Ryzen 7 5700X
53℃
Ryzen 5 5600X
64℃
Ryzen 9 5950X
65℃
Ryzen 9 5900X
67℃
Ryzen 7 7700
70℃
Core i5-12600K
74℃
Ryzen 7 5800X3D
79℃
Core i7-12700K
83℃
Ryzen 9 7950X3D
86℃
Ryzen 7 5800X
87℃
Core i5-13600K
92℃
Ryzen 5 7600X
96℃
Ryzen 9 7900X
97℃
Ryzen 9 7950X
97℃
Ryzen 7 7700X
98℃
Core i9-13900K
102℃
Core i7-13700K
103℃
Core i9-12900K
106℃
参考:TechPowerUp

ゲーム時の温度(Cyberpunk 2077)
CPU名称温度
Core i5-12400F
49℃
Core i5-13400F
50℃
Ryzen 7 5700X
59℃
Core i7-12700K
61℃
Core i5-12600K
62℃
Ryzen 5 5600X
64℃
Ryzen 7 5800X
69℃
Ryzen 7 5800X3D
72℃
Core i5-13600K
72℃
Core i9-12900K
72℃
Ryzen 7 7700
73℃
Ryzen 9 7950X3D
73℃
Ryzen 9 5950X
73℃
Ryzen 9 5900X
74℃
Ryzen 9 7950X
75℃
Ryzen 7 7700X
75℃
Core i7-13700K
75℃
Ryzen 9 7900X
81℃
Core i9-13900K
87℃
Ryzen 5 7600X
90℃
参考:TechPowerUp

7950Xよりもやや低い温度で、標準設定なら空冷でもいけそう

元の設定がややマイルドなため、温度も良好です。7950Xや7900Xよりもやや低い温度となっています。やはりコア数と3D V-Cacheが多少ネックとなるのか、消費電力ほどは印象的な数字ではありませんでしたが、特にCore i9に対しては圧倒的な優位性があります。

高負荷なマルチスレッド処理でも86℃という結果になっており、最大温度設定である89℃をやや下回っています。14cmファン1基の空冷クーラーでも最大温度以下で冷やし切れているので、空冷でも高性能なものなら対応できるレベルと推測できます。何なら、ゲーミング時には73℃に留まっていますから、特別重いマルチスレッド処理をしないなら、12cmファン1基の定番高コスパクーラーでも対応可能なレベルに見えます(このレベルのCPUをそう使う人はまず居ないと思いますが)。

夏場の室温が高いときを考えるとやはり低性能なクーラーでは不安がありますし、注意が必要ですが、特にCore i9と比べると驚くほど扱いやすいハイエンドゲーミングCPUに仕上がっていると思います。

ただし、このレベルの価格のCPUを検討する人が、クーラーや電源でわずかな節約を試みる可能性は低く、安定した高パフォーマンスを求めるなら優れたクーラーと電源が必要なのは変わらないため、実際に選択を左右する差になるかは微妙かもしれません。ただし、優れているのは間違いないです。

まとめ

ざっくりと各性能を見てきました。最後に評価をまとめています。

Ryzen 9 7950X3D

良い点
  • 3D V-Cache搭載で、圧倒的に大容量なL3キャッシュ(96MB + 32MB)
  • 合計16コアによる非常に高いマルチスレッド性能
  • Core i9-13900Kに匹敵する現状トップクラスの非常に優れたゲーミング性能
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 競合モデルより圧倒的に優れる電力効率
  • 競合モデルより少ない消費電力と発熱(最大162W、89℃)
  • クーラーはAM4のものと互換性あり
  • RDNA 2の内蔵GPU搭載(性能は高くない)
  • AV512命令セットに対応

気になる点
  • 圧倒的に高価(登場時:111,800円)
  • クロックや電力や温度設定が7950Xより若干低いため、マルチスレッド性能はやや劣る
  • マルチスレッド性能コスパは既存のCore i9やRyzenに劣る
  • DDR4メモリに非対応

Ryzen 9 7950X3D:Core i9-13900Kに匹敵するゲーミング性能で電力効率も良く、効率込みでは一段上の最強のゲーミングCPU

ゲーマー待望の「3D V-Cache」搭載の16コアのRyzen 9が遂に投入です。

1つのCCD(8コア)に対してのみ「3D V-Cache」が適用されるという、期待していたものとはやや異なる仕様にはなっていた点はやや戸惑いがありましたが、実際問題はそれが悪いことはなく、むしろ効率や汎用性を考えれば最適とも思える仕様でした。

それはAMDによって説明されたように、現状のゲームのために必要なコアは8コア以下である点が大きいです。これは、最新の第13世代のCoreのPコア(高性能コア)が8コア以下であるにも関わらず高いゲーミング性能を発揮していることや、過去の「Ryzen 7 5800X3D」が高いゲーミング性能を発揮したことも裏付けています。

また、「3D V-Cache」を搭載するCCDはゲーム性能を引き上げる反面、電力とクロックの面で若干のネックとなるため、特に高負荷なマルチスレッド処理においてはややマイナスとなってしまう弱点がありますが、もう片方のCCDには手を付けないことで、クロックや電力面での自由度をある程度残したままゲーミング性能を引き上げることが出来るのもメリットです。

前置きはここまでにして、具体的な性能についての話題に入ります。

注目のゲーミング性能は、期待通りの向上を見せました。7950Xと比較すると1080pと1440pで7%~10%程度の大きな向上が見られ、「Core i9-13900K」に匹敵するレベルになりました。これによって、現状トップクラスのゲーミング性能のCPUの一つとして名を連ねることになりました。ただし、価格が発売時で2万円以上高い11万円台であるのは考慮すべき点であり、単純なゲーミングコスパでは劣ります。とはいえ、今まではトップクラスのゲーミング性能を実現することすら不可能だったRyzen愛好家のゲーマーにとっては、選択肢が増えただけでも非常に嬉しいと思います。

しかし、そのゲーミング性能を以ってしても一概に最強と言えない理由はマルチスレッド性能です。先にも触れたように「3D V-Cache」の搭載されたCCDは電力とクロック面で若干のネックとなります。仕様を7950Xと比較すると、PPTは162Wで68W低く、最大温度も6℃低い89℃になり、全コア(16コア)稼働時の最大クロックも5.2GHzから5.0GHzになっており、全体的に負荷が下げられています。これによって、マルチスレッド性能は7950Xと比較して約5%低くなっています。

実用性を揺るがすほどの差ではありませんが、発売時価格では「Ryzen 9 7950X3D」の方が約2万円も高価ながらやや劣るため、最終的にマルチスレッド性能コスパは7950Xに大きく劣ることになります。更に、競合の「Core i9-13900K」は記事執筆時点で7950Xよりも更に8,000円程度安く購入できるため、コスパ差は更に不利になります。

「Ryzen 9 7950X3D」には電力的に少し余裕があるため、PBOという疑似的なオーバークロック機能を利用して差を少し縮めることができますが、「3D V-Cache」搭載のCCDによるネックを完全には解消することはできません。その伸び代は7950Xよりは小さいため、最大設定でも7950Xや13900Kには届きません。

このように、頭一つ抜けて高価なハイエンドCPUとして投入されるにも関わらず、マルチスレッド性能は既存の最上位CPUに若干劣り、コスパは大きめに負けるのが「Ryzen 9 7950X3D」の最も気になる点だと思います。元々ゲーマー向けの製品ですし、性能差も劇的ではないので許容範囲内と言う人も多いとは思いますが、ゲームがメイン用途でない場合のコスパは良くはない点は留意しておくべきかなと思います。

しかし、その弱点をも補える可能性があります。電力面です。

「Ryzen 9 7950X3D」の標準の電力設定は7950Xや「Core i9-13900K」よりもややマイルドになっています。具体的な設定としては、120W – 162W(TDP – PPT)ですが、7950Xは170W – 230Wであり、「Core i9-13900K」は125W – 253Wですから、競合モデルと比べると圧倒的に省電力です。上述の性能はこの電力設定によるものなので、電力効率は詳しく調べなくても大きく優れていることがわかります。

効率の具体的な差を出してみると、7950Xと比べると1.5倍前後優れており、13900Kに対してはレンダリングで1.9倍、ゲーミング時には2倍以上も優れています。圧倒的な電力効率の良さを確認することができます。

特にゲーミング時の効率の良さは驚きです。効率だけなら匹敵するCPUが無い訳ではありませんが、それは「Core i5-13400F」などの最新の省電力なミドルレンジCPUが基本です。Cinebench R23のマルチスレッドで35,000以上のスコアを記録するレベルのハイエンドCPUは現状存在しません。そのマルチスレッド性能を発揮できる設定で、トップクラスのゲーミング性能と効率の両方をも維持できる「Ryzen 9 7950X3D」は唯一と言える存在です。

また、ゲーミング性能のみなら同程度で競合となる「Core i9-13900K」が存在するため、最強のゲーミングCPUとして上回るとは言えませんが、ゲーミング時効率では2倍以上の差があるため、効率を含むゲーミングCPUとしてなら「Ryzen 9 7950X3D」が一段リードしています。価格差が大きいために単純なコスパでは負けてしまう点は留意すべき点ではありますが、やや省電力でクーラーや電源費用を少し節約できる面や扱いやすさを考えれば、その価格差・コスパ差を考慮しても「Ryzen 9 7950X3D」の方が魅力的と考えるユーザーは多いのではないかと思います。

ただし効率についても、マルチスレッド性能に関しては特別優れている訳ではないかもしれない点は一応留意です。

「Ryzen 9 7950X3D」は標準でややマイルドな電力になっているため効率が良く見えますが、7950Xでも最大温度や電力制限を調整することで、わずかな性能を犠牲にして消費電力を大きく下げることが可能なのが報告されています。両者の物理的な違いは「3D V-Cache」のほぼ一点であるため、7950Xも120W – 162Wに設定することでマルチスレッド処理時には同等の効率と省電力性を手にすることが可能性が高いです。そのため、やはりマルチスレッド面の方を重視するのであれば、コスト面を考慮すれば7950Xの方にやや優位性があるのかなという印象です。

とはいえ、「3D V-Cache」を搭載して大きく向上したゲーミング性能差を埋めることはまず無理なので、ゲーミングを重視するなら間違いなく「Ryzen 9 7950X3D」の方が最適と言えると思います。

各項目での評価は以上のような感じになります。最後に全体的なものとしてまとめたいと思います。

既存の上位CPUである「Ryzen 9 7950X」や「Core i9-13900K」は、マルチスレッド性能・効率・ゲーミング性能のどれかでは競合モデルにやや負ける状況がありましたが、「Ryzen 9 7950X3D」は全てがトップクラスのままで維持できるCPUです。「3D V-Cache」の制限によりマルチスレッド面では不利になるものの、その差はわずかであり、大きなネックになるほどではありません。あらゆる面で1位のCPUとはなりませんでしたが、総合的な性能では1番をあげても良いレベルの、あらゆる面で非常に優れた効率的なハイエンドCPUです。

ただし、一番の問題はやはり価格です。発売時の想定価格は111,800円となっており、めちゃくちゃ高価です。記事執筆時点では7950Xよりも約2.2万円、「Core i9-13900K」よりも3万円近く高価です。発売直後はやや高価であることが予想されるため、今後の値下げも多少期待はできると思いますが、コスト的に7950Xよりは高価な状況は維持されると思いますから、頭一つ抜けて高価なCPUであることは変わらないと予想されます。

そのため、純粋な処理性能のみを考えた場合のコスパは「Core i9-13900K」に大きめに負けてしまいます。電力や発熱で優位性がある点は考慮すべきですが、常に安定した高パフォーマンスを求めるなら高性能な電源やクーラーは必須ですし、この価格のCPUを検討するレベルのハイエンドユーザーにとっては些細な差です。

この価格とコスパの点については個人の用途や好みに左右される部分なので、明確な評価はここではしません。ただし、個人的な見解としては、自作ユーザーには最も強力なハイエンドCPUとして高い地位を得ると思いますが、BTOでは変わらず「Core i9-13900K」人気が続きそうな気がします。


といった感じで、記事は以上になります。

同時に発売される「Ryzen 9 7900X3D」と、4月に発売予定の「Ryzen 7 7800X3D」の性能も気になるところですが、ひとまずは恐らく最も注目度の高い「Ryzen 9 7950X3D」に触れてみました。価格の高さはやはり気になるところですが、Core i9にゲーミング性能で真っ向から対抗できるRyzenが遂に最新世代で登場したのは非常に面白い市場になると思います。性能とコスパのみで見れば少し不利ではありますが、電力面では明らかに勝っているのが一般消費者にどう評価され、どのような地位に落ち着くのが非常に興味深いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です