低価格帯で最強?「Ryzen 3 3300X」【ざっくり評価】

遅れて登場したZen2搭載の第3世代「Ryzen 3」の「Ryzen 3 3300X」のざっくり評価記事です。主に処理性能面です。対抗製品の「Core i3-10100」との比較も交えつつ見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2020年6月8日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

簡易比較表

主要な仕様をまとめた簡易比較表です。現在主要な他の競合CPUも参考に並べています。

簡易比較
CPU名プロセス
ルール
PassMarkコア
スレッド
クロック
(定格/最大)
TDP参考価格
Ryzen 7 3700X7nm226858/163.7GHz/5.3GHz65W¥41,000($329)
Core i7-10700K14nm196818/163.8GHz/5.1GHz125W¥47,000($374)
Ryzen 5 36007nm177856/123.6GHz/4.2GHz65W¥25,000($199)
Core i5-10600K14nm156786/124.1GHz/4.8GHz125W¥33,000($262)
Core i7-9700K14nm146958/83.6GHz/4.9GHz95W¥47,000($374)
Core i7-8700K14nm138646/123.7GHz/4.7GHz95W¥45,000($359)
Core i5-1040014nm130736/122.9GHz/4.3GHz65W¥23,000($182)
Ryzen 5 1600 AF12nm13000?6/123.2GHz/3.6GHz65W¥11,000($85)
Ryzen 3 3300X7nm128794/83.8GHz/4.3GHz65W¥15,000($122)
Ryzen 3 31007nm119284/83.6GHz/3.9GHz65W¥12,000($99)
Core i5-9600K14nm108906/63.7GHz/4.6GHz95W¥33,000($262)
Core i7-7700K14nm97534/84.2GHz/4.5GHz95W¥43,000($339)
Core i5-9400F14nm95826/62.9GHz/4.1GHz65W¥23,000($182)
Core i3-10100(対抗)14nm90054/83.6GHz/4.3GHz65W¥15,000($122)
Core i3-9100F14nm68424/43.6GHz/4.2GHz65W¥15,000($122)
※PassMarkスコアは、PassMarkを参考にした目安の性能スコア。
※参考価格は、推定市場価格です。メーカーの参考価格(USD)を記事執筆時点の為替(1ドル=約109.5円)で円換算にし、中間マージンを適当に15%程度加算して算出したおおよその値です(百の位で四捨五入)。古い世代のCPUについては、もっと安く販売されている場合も多いので参考までにご覧ください。
※実売価格は発売直後は高い傾向があるので、発売されたばかりのCPUは表の価格より高いと思いますので注意してください。

4コア8レッドでマルチスレッド性能は弱め

「Ryzen 3 3300X」と対抗の「Core i3-10100」はどちらも4コア8スレッドという仕様になっています。1万円台中盤という価格なので贅沢は言えないですが、6コアの最新の「Ryzen 5」や「Core i5」と比べるとマルチスレッド性能は弱いです。マルチスレッド性能が濃く出ると言われるPassMarkのスコアでも、最新の「Ryzen 5」や「Core i5」よりは大きく下の数値となっています。

とはいえ、4コア8スレッドという仕様は「Core i7-7700K」などと同様の仕様で、4年ほど前まではハイエンドといえるレベルではありました。普通にハイエンドな使い方も出来ない訳ではない点は留意しておくべきかもしれません。

対抗の「Core i3-10100」は14nmプロセスで不利

プロセスルールは、第10世代のCoreシリーズも第9世代に引き続き14nmのままなので、「Core i3-10100」も14nmです。

プロセスルール

簡単にいうとCPUの配線の幅のこと。小さい方がスペースに余裕が出来たり複雑な配線な可能になったりなど、基本的に良い事尽くめ。

「Ryzen 3 3300X」を含む、第3世代Ryzenは7nmプロセスなので、土台が「Core i3-10100」は不利となります。プロセスルールあくまで「土台のルール」であって、小さい方が必ず高性能という訳ではないですが、倍のプロセスルール差はめちゃくちゃ大きいです。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。参考の計測環境では、「Core i3-10100」の方はメモリーが「DDR4-2666」の場合と「DDR4-3200」場合の2パターンで測定されデータも別になっています(恐らく、標準だと第10世代のCore i3はDDR4-2666までの対応で、DDR4-3200で動作させるためには少し設定が必要となるため)。ですが、他のCPUは可能なものは全て「DDR4-3200」で計測されていると思われるので、本記事では煩雑さ回避のため「DDR4-3200のスコアのみ」載せています。

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R20というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R20 Single
CPU名称
スコア
Core i7-10700K
512
Ryzen 7 3700X
510
Ryzen 3 3300X
504
Core i7-9700K
500
Ryzen 5 3600
487
Core i5 10600K
483
Core i5 9600K
480
Core i7-8700K
466
Core i7-7700K
462
Ryzen 3 3100
449
Core i3-10100
442
Core i5-10400
433
Core i5-9400F
423
Ryzen 5 1600 AF
417
Core i3-9100F
373

「Core i7-9700K」に匹敵する高いシングルスレッド性能

「Ryzen 3 3300X」は「Core i7-9700K」匹敵する非常に高いシングルスレッド性能を持っています。1万円台中盤とは思えない性能です。「Core i3-10100」に対しては約14%リードしており、大幅に上回っています。「第10世代のCore iシリーズ」のシングルスレッド性能は、他モデルではRyzenに食らいついていた印象がありますが、Core i3に関しては明らかに負けてしまっています。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R20というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R20 Multi
CPU名称
スコア
Core i7-10700K
4985
Ryzen 7 3700X
4884
Ryzen 5 3600
3746
Core i7-9700K
3726
Core i5 10600K
3601
Core i7-8700K
3380
Core i5 10400
3188
Ryzen 5 1600 AF
2790
Ryzen 3 3300X
2611
Core i5 9600K
2594
Core i5-9400F
2372
Ryzen 3 3100
2350
Core i7-7700K
2327
Core i3-10100
2172
Core i3-9100F
1587

4コアとしてはトップクラスの性能

「Ryzen 3 3300X」は「Core i3-10100」よりも約20%高いスコアとなっており、圧勝と言って良いレベルです。少し前のハイエンドCPUである「Core i7-7700K」よりも高い性能を持っており、4コアCPUとしては非常に高い性能を持っている事がわかります。

最新の6コアには負ける

「4コアとしてはトップクラスのマルチスレッド性能」ですが、所詮は4コアCPUなので最新の6コア以上のCPUには大きく劣ります。「Ryzen 5 3600」と比較すると約30%もの差がついています。

前世代の6コアCPUには意外と劣らない

「Ryzen 5 3600」や「Core i5-10600K」等の最新の6コアCPUには大きく劣っていましたが、「Core i5-9600K」や「Ryzen 5 1600 AF」等の、一つ前の世代の6コアCPUとは意外と良い勝負をしています。シングルスレッド性能の高さのおかげか、かなり効率の良いマルチスレッド処理が発揮されている事が伺えます。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際の平均FPS数を見ていきます。

今回は、7種類のゲームで測定した平均FPSの数値を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 2080 Ti」です。記事執筆時点では超高性能なハイエンドゲーミングGPUです。単純なゲーミング性能というよりは、ハイエンドGPUに対するボトルネックの影響度を測る側面の方が強いかもしれません。解像度は「1920×1080」で、その他の設定は超高品質(ウルトラ)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

7種類のゲームでの平均FPS
CPU名称
平均FPS
Core i7-10700K
156
Core i7-9700K
154
Core i5-10600K
153
Core i5-10400
148
Core i7-8700K
147
Ryzen 7 3700X
145
Ryzen 5 3600
143
Core i5-9600K
140
Core i7-7700K
138
Ryzen 3 3300X
137
Core i5-9400F
131
Core i3-10100
130
Ryzen 5 1600 AF
118
Ryzen 3 3100
118
Core i3-9100F
115

「Core i3-10100」よりも高いゲーミング性能

「最高のゲーミングプロセッサ」という称号を守り続けているCore iシリーズですが、「Core i3-10100」は「Ryzen 3 3300X」に負けてしまっています。価格は同じですし、シングルスレッド性能とマルチスレッド性能も「Ryzen 3 3300X」の方が上だったので、グラボを搭載する低価格ゲーミングPCでは「Ryzen 3 3300X」が明らかに有利です。


レンダリング時間

レンダリングに掛かる時間を見ていきます。基本的にレンダリングはコア数(スレッド数)とクロックが重要になる事が多いです。動画のエンコード処理なども似た傾向があります。

今回はBlender Open Dataというベンチマークソフトでの、処理に掛かった時間を見ていきます。数値が低いほど良いです。

Blender Open Data(レンダリング時間)
CPU名称
処理時間(単位:秒)
Core i7-10700K
934
Ryzen 7 3700X
972
Core i7-9700K
1280
Core i5 10600K
1282
Ryzen 5 3600
1338
Core i7-8700K
1349
Core i5-10400
1443
Ryzen 5 1600 AF
1615
Ryzen 3 3300X
1834
Core i5 9600K
1891
Core i7-7700K
1975
Core i5-9400F
2043
Ryzen 3 3100
2061
Core i3-10100
2138
Core i3-9100F
2993

「Core i3-10100」よりも有利で、第9世代のCore i5をも上回る

「Core i3-10100」に対しては約16%上回っています。第9世代のCore i5にすら勝るスコアとなっており、1万円台のCPUとしては破格のパフォーマンスだと思います。

5や7には大きく劣る

マルチスレッド性能と同様、同世代のRyzen 5・Core i5以上には大きく劣ります。「Ryzen 5 3600」だと4割近く、「Ryzen 7 3700X」には倍近い差がつけられています。動画エンコードやレンダリングなど、コア数やスレッド数が重要になる処理を頻繁に行うようであれば、Ryzen 5・Core i5以上を選択した方が時間は大幅に節約する事ができます。

その他

消費電力

ざっくりとしたシステム消費電力を見ていきます。「Blender Oepn Data(前述のレンダリング時間を測るベンチマークソフト)」を実行した際の総消費電力を見ていきます。全コア稼働時の消費電力といった具合です。数値が低いほど良いです。

消費電力(Blender Open Data)
CPU名称
消費電力(W)
Core i3-9100F
105
Core i5-9400F
117
Core i3-10100
128
Ryzen 3 3100
135
Core i5-9600K
143
Ryzen 3 3300X
148
Ryzen 5 3600
150
Core i7-7700K
152
Core i5-10400
153
Ryzen 5 1600 AF
157
Ryzen 7 3700X
164
Core i7-8700K
177
Core i7-9700K
192
Core i5 10600K
198
Core i7-10700K
232

下位モデルとしては高い消費電力

「Ryzen 3 3300X」は148Wで、下位モデルとしては高い消費電力を記録しています。「Core i3-10100」よりも約15%高い数値で負けています。とはいえ、数値自体は高いものではないですし、「Ryzen 3 3300X」はIntel製のCPUよりは若干良いクーラーが付属しているので、ハイエンドCPUなどと違ってそこまで気にする点でも無いかもしれません。

まとめ

「Ryzen 3 3300X」の評価をまとめています。ここまで見てきた性能面と、それ以外の点も併せて見ていきます。

良い点
  • 1万円台半ばという安さ
  • 4コアとしては高いマルチスレッド性能
    「Core i7-7700K」と近いマルチスレッド性能を持っています。
  • 非常に高いシングルスレッド性能
    「Core i7-9700K」に匹敵する高いシングルスレッド性能を持っています。「この価格帯だから」ではなく、ハイエンドGPUと比べても遜色ない高い性能です。
  • そこそこのゲーミング性能
    「Core i3-10100」を上回るそこそこゲーミング性能を持っています。第9世代(一つ前の世代)のCore i5を上回ります。最新のRyzen 5やCore i5と比べるとさすがに見劣りしますが、この価格帯でのゲーミングコスパはかなり良い方です。

悪い点
  • 上位モデルよりはマルチスレッド性能が大きく劣る
    どんなに頑張っても4コア8スレッドなので、最新の6コア以上のCPUにはマルチスレッド性能では大きく劣ります。
  • 内蔵GPUがないので、グラボが必須
    オフィスPCなど、グラボを搭載しない前提のPCでは「Core i3」にコスパで負けてしまいます。低価格帯では割と痛い欠点です。
  • やや多い消費電力
    下位モデルとしては高めの消費電力となっています。とはいえ、数値自体は多いという程では無いので、あまり気にする必要もないかもしれない点です。

性能は「Core i3-10100」より全面的に上

「Ryzen 3 3300X」は「Core i3-10100」にシングルスレッド性能マルチスレッド性能ゲーミング性能全てで勝っていました。性能面では全面的に「Ryzen 3 3300X」の方が上です。価格は同じなので、性能面でのコスパは「Ryzen 3 3300X」の圧勝で、「Core i3-10100」は完敗と言われても仕方ないレベルです。

非常に高いシングルスレッド性能

「Ryzen 3 3300X」は「Core i7-9700K」に匹敵する非常に高いシングルスレッド性能を持っています。「Core i3-10100」だけでなく「Ryzen 5 3600」すらも上回っています。「1万円台という低価格帯」に絞らずとも高いといえる性能の高さです。

グラボ必須

性能面では「Ryzen 3 3300X」が「Core i3-10100」を圧倒しましたが、この価格帯では大きいかもしれない欠点があります。内蔵GPUが無い点です。グラフィックボードを搭載しないPCであれば、内蔵GPUのある「Core i3-10100」の方が出費を抑える事ができるためコスパ的に有利です。

「Ryzen 3 3300X」のような低価格帯のCPUを搭載するPCは、オフィス作業や文書作成や動画閲覧など、軽作業をメインに意識して作られることも多いです。その際には高性能なグラフィックボードは必要無く、内蔵GPUで十分です。グラボは、安くて低性能なものでも3,000円~4,000円くらいはします。この価格帯では割と大きな差になります。

B550採用でZen3への繋ぎに最適かも

記事執筆時は6月8日なので未発売ですが、6月中旬発売予定のB550チップセット(マザーボード)では、PCIe 4.0に対応するだけなく、Zen3へのサポートが明言されています。「新しいPCを買いたいけど、Zen3を待ちたい気持ちもある」という人は安価な「Ryzen 3 3300X」を繋ぎとして採用するのはありな気がします。また、X570チップセットもZen3をサポートすると言われているので、Zen3のハイエンドモデルを採用したい人はX570でも構いません。こちらは既に発売されているので、すぐ購入する事ができます。


余談:Ryzen 3 3100と3300Xは、内部的に結構違います

本記事では「Ryzen 3 3300X」と「Core i3-10100」を焦点に当てて見てきましたが、「Ryzen 3 3100」との差も気になる人も多かった思います。ベンチマークスコアは併記していたので、そちらを見れば分かると思いますが、「Ryzen 3 3300X」の方が大分優秀です。特にシングルスレッドとゲーミング性能ですね。

これはなぜかというと、「Ryzen 3 3100」と「Ryzen 3 3300X」は同じ4コア8スレッドのCPUですが、内部構造的には根本的に異なる部分があるためです。第3世代のRyzen 3では「CCX」という、コアを何分割かにしてまとめるような部分が2つあります。このCCXに「Ryzen 3 3100」の場合は2つのCCXに2コアずつが収められている(2+2)のに対し、「Ryzen 3 3300X」の場合は1つのCCXに4つのコアが全て納められています(4+0で一つは空っぽで利用しない)。一つのCCXに全てのコアが収められている方が、メモリーのレイテンシ(遅延)を少なくする事が出来るようで、これがシングルスレッド性能やゲーミング性能の強化に寄与しているようです。

マルチスレッド性能のみを求めるなら「Ryzen 3 3100」は価格が安い分コスパ的には全然良いのですが、その他の点と中身の部分を考えると、「Ryzen 3 3300X」の方は私はおすすめします。


それでは、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です