【モバイル端末向け】第11世代Coreシリーズが発表【Tiger Lake】

Intelのモバイル版CPUの第11世代の「Tiger Lake」が正式発表されました。Intelの10nmプロセス採用のCPUとしてはIceLakeに続く2代目です。仕様や性能についてざっくり見ていきたいと思います。ただし、搭載PCの販売は年末頃となる見込みで、すぐには手に入れることはできない点は注意です。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2020年9月4日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

仕様

まずは主要な仕様です。

TDP12W~28Wのモデル(通常15W)

まずはTDPが12Wから28Wで設定できるモデルです。通常は15Wで設定されるのが基本で、Ryzenでは末尾Uモデル(Ryzen 7 4700U 等)と競合することになります。


CPUコア/
スレッド
定格
クロック
最大
クロック
L3
キャッシュ
TDPGPU
Core i7-1185G74/83.0GHz4.8GHz12MB12W – 28WIris Xe Graphics(96EU)
Core i7-1165G74/82.8GHz4.7GHz12MB12W – 28WIris Xe Graphics(96EU)
Core i5-1145G74/82.6GHz4.4GHz8MB12W – 28WIris Xe Graphics(80EU)
Core i5-1135G74/82.4GHz4.2GHz8MB12W – 28WIris Xe Graphics(80EU)
Core i5-1125G44/82.0GHz3.7GHz8MB12W – 28WUHD Graphics(48EU)
Core i3-1115G42/43.0GHz4.1GHz6MB12W – 28WUHD Graphics(48EU)

TDP7W~15Wのモデル

TDPが7Wから15Wで設定できるモデルです。前世代の末尾Y(Core i7-10510Y 等)モデルの後継にあたると思われます。タブレットや薄型軽量の端末での採用が想定されています。


CPUコア/
スレッド
定格
クロック
最大
クロック
L3
キャッシュ
TDPGPU
Core i7-1180G74/82.2GHz?4.6GHz12MB7W – 15WIris Xe Graphics(96EU)
Core i7-1160G74/81.2GHz4.4GHz12MB7W – 15WIris Xe Graphics(96EU)
Core i5-1140G74/81.8GHz?4.2GHz8MB7W – 15WIris Xe Graphics(80EU)
Core i5-1130G74/81.1GHz4.0GHz8MB7W – 15WIris Xe Graphics(80EU)
Core i3-1120G44/81.1GHz3.5GHz8MB7W – 15WUHD Graphics(48EU)
Core i3-1110G42/41.8GHz3.9GHz6MB7W – 15WUHD Graphics(48EU)



機能面等の違い

機能面でも少し変更がありました。主に拡張性面です。ざっくりと下記にまとめています。


第10世代(Ice Lake)第11世代(Tiger Lake)
DDR4-3200,LPDDR4-3733DDR4-3200,LPDDR4x-4267
USB3(Thunderbolt 3.0)USB4(Thunderbolt 4.0)
PCIe 3.0PCIe 4.0
GNA 1.0GNA 2.0

対応メモリーが一番良いものがLPDDR4x-4267となります。LPDDDR4Xはメモリー単価が高く高級機にしか採用されないと思われるので、出来るだけ安い高コスパ機を求める方には正直あまり関係ないかもしれませんが、高級機の購入を検討している方には割と大きい部分だと思います。

USB 4対応となりThunderboltも4.0に対応可能となります。PCIe 4.0にも対応し、主にストレージの高速化がより期待できます。とはいえ、どちらに関しても現状でも不満はほとんど出ていないと思うレベルの速度だったかと思うので、何か専門的な使い方をしている人以外は、現状は恩恵を感じることはほぼ無いかと思います。

また、GNAはAI用のプロセッサで、GNA 2.0となり性能が5倍になったと言われています。こちらも専門的な使い方ようのものなので、一般のほとんどの方は関係ない部分ですね。



処理性能としては前世代(Ice Lake)と比較して、CPU性能は1.2倍内蔵GPUの性能は2倍になると示されていました。※記事投稿時には対応メモリーは同じと記述していましたが、Tiger Lakeでは最高LPDDR4x-4267対応となり、Ice Lakeの最高LPDDR4-3733よりも向上しています。お詫びして訂正いたします。

コア構成は前世代と同じですが、クロックが大幅に上昇しました。CPU性能は前世代のIce Lakeと比較して1.2倍と示されていましたが、この大幅なクロック上昇率からすると性能上昇量は控えめに感じます。処理の効率化というよりは、省電力化や発熱の減少がメインのアップグレードという感じの印象です。詳しい性能は後で見ていきますが、コアが少ない点が大きいので、少なくともマルチスレッド性能はRyzen 4000シリーズに勝っているという感じではなさそうです。

Tiger Lakeの最大の目玉は統合グラフィック性能の向上です。Iris Xe Graphicsへと刷新されました。前世代のIce LakeからEU(実行ユニット)数が大幅に増え、性能は2倍になると示されていました。また、末尾G4のモデルのGPU(48EU)はUHD Graphicsという既存の古い世代の名前を受け継いでいるもののとなっているものの、世代は上位のIris Xe Graphicsと同じ12世代みたいなので、性能的には今までのUHD Graphicsよりは大幅に高くなるはずです。

CPU性能

発表自体では相対的な性能しか示されませんでしたが、プレサンプル機でごく一部ですがベンチマークを確認できるものがあるので、それを見て既存の主要CPUと比較してみていきたいと思います。プレサンプルですし、信ぴょう性は微妙かもしれないので参考までにご覧ください。※追記:後に出た1185G7のスコアを見る限り、ここに掲載のプレサンプル機のスコアはTDPが28Wに設定されていた場合の可能性が高そうです(他のスコアは15W~25Wが基本のはず)。TDP15W時にはスコアが減少する可能性が高いので注意してください。

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R15というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R15 Single
CPU名称
スコア
Core i7-1165G7
(恐らくTDP28W?)
220
Core i5-1135G7
(恐らくTDP28W?)
205
Ryzen 7 4700U
181
Core i7-10710U
180
Ryzen 7 4800U
180
Core i7-1065G7
179
Ryzen 5 4500U
174
Core i3-10110U
172
Core i5-1035G1
169
Core i5-10210U
166
Ryzen 3 4300U
165
Core i3-1005G1
157

シングルスレッド性能は大きく向上し、デスクトップ版にも劣らぬ性能

シングルスレッド性能は、「Core i7-1165G7」は前世代の1065G7より約23%と大幅に向上しています。デスクトップ版CPUにも劣らぬ高い性能となり非常に高性能です。最大クロックが大きく上昇したのが大きいと思われます。Ryzen 4000シリーズにも大きく差をつけており、かなり優位に立ちました。

プレサンプル機は恐らくTDPが15Wより高く設定されていたものっぽいですが、シングルスレッド処理単体は必要電力は少なくTDPの影響は小さいので、15Wで設定された場合でも大きくは変わらないと思われます。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R15というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R15 Single
CPU名称
スコア
Ryzen 7 4800U
1568
Core i7-10710U
1067
Ryzen 7 4700U
1050
Core i7-1165G7
(恐らくTDP28W?)
1020
Ryzen 5 4500U
890
Core i5-1135G7
(恐らくTDP28W?)
810
Core i7-1065G7
704
Core i5-10210U
619
Core i5-1035G1
606
Ryzen 3 4300U
580
Core i3-1005G1
405
Core i3-10110U
403

前世代から大幅に向上したものの、Ryzen 4000シリーズにはまだ不利か

マルチスレッド性能も前世代からみるとかなり大幅に向上しました。「Core i7-1165G7」と「Core i7-1065G7」の比較だと約45%の向上です。コアとスレッド数が同じでこの向上率は驚異的です。やはりクロックの大幅上昇が大きな影響となっていそうな感じです。

とはいえ、プレサンプル機は恐らくTDPが15Wより高く設定されているものと思われるので、TDP15Wの実際のスコアはこれよりも大きく下がってしまう事が予想されます。

また、表のTDPが高く設定されていると思われる場合のスコアですら、Ryzen 4000シリーズの競合製品にはやや劣っています。「Core i7-1165G7」は「Ryzen 7 4700U」に約3%、「Core i5-1135G7」は「Ryzen 5 4500U」に約9%劣っています(追記:実際に販売された製品のスコアを見ると実際のスコアは更にもう少し低い可能性が高そうです)。コア数は負けているのでかなり健闘しているとも言えますが…、大幅に改良したという10nmでも追い付けないというのは、AMDの方が先を行っている感は正直否めない気がします。上述のTDPを高く設定されていると思われる点もありますし、やはり7nmプロセスとコア数差の壁は非常に大きそうだなという印象です。

内蔵GPU性能

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、文字通りゲームをプレイする際のパフォーマンスです。搭載PCは未発売で具体的なパフォーマンス(FPS数)を見ることは難しいので、CPU同様プレサンプル機で測定したベンチマークスコアだけを見ていきます。信ぴょう性は微妙かもしれないので参考までにご覧ください。

3D Mark Firestrike 1920×1080 Graphicsのスコアを見ていきます。DirectX 11という主流なゲーム用のAPIの一つによるパフォーマンスです。

3D Mark Firestrike 1920×1080 Graphics
CPU名称
スコア
Iris Xe graphics (96EU)
4820
Radeon RX Vega 7 (Ryzen 4000)
3347
Iris Plus Graphics G7
2869
Radeon RX Vega 6 (Ryzen 4000)
2755
Radeon RX Vega 5 (Ryzen 4000)
2438
Iris Plus Graphics G4
2210
Radeon RX Vega 10 (Ryzen 2000,3000)
2147
Radeon RX Vega 8 (Ryzen 2000,3000)
2079
Radeon RX Vega 6 (Ryzen 2000,3000)
2064
UHD Graphics G1
1521
Radeon RX Vega 3 (Ryzen 2000,3000)
1259
UHD Graphics 620
1121

爆発的な性能向上、1080pの平均50FPS台でいいなら重めのゲームもいけそう

発表前からかなり自信満々で仄めかしていただけあって、物凄く高性能です。前世代からは爆発的な向上となりました。Iris Plus G7とIris Xe(96EU)との比較では、約68%という驚異的な向上率です。発表内容にあった2倍にはやや届いていませんが、十分すぎる向上率です。Ryzen 4000シリーズの内蔵GPUも軽々と上回りました。内蔵GPUとは思えない高性能さです。少し古いですが、GTX 750 Tiよりも少し良いくらいの性能です。

このクラスの性能があれば、「PUBG」や「Apex Legends」等の少し重めのゲームの1080pでも動くと思われます。FPSも低設定なら平均50FPS台くらいは出るのではないかと思います。ついに重い3DゲームがCPUの内蔵GPUでも動くようになりました。

今までは重い3Dゲームを内蔵GPUでプレイする事自体がほぼ不可能だったため、試しに雰囲気を知るためにプレイするとかも出来ませんでした。それが、追加費用なしで「とりあえずプレイしてみてゲーム自体を知る」ということがほとんどのゲームで可能になったというのは、非常に大きくて素晴らしいことだなと思います。

とはいえ、ゲーム用途メインとして使うには、まだやっぱり厳しいかなという印象です。低設定前提の1080pで平均60FPSに満たないのは、個人的には快適とは言い難いと思います。競技性のないゲームであれば別に問題ないかもしれませんが、たとえば対人対戦のシューティングゲーム(FPS 等)ではFPS数の高さは非常に重要なので厳しいと思います。FPSで一つの基準となるのが144FPSです。コスパの良い高リフレッシュレートのゲーミングモニターが大体144Hz~165Hzなので基準とされます。筆者もFPSはプレイするので多少はわかりますが、60FPSと144FPSの差は非常に大きく、高い方が明らかに有利です。

PS4やSwitchのようなコンシューマー機であれば、同じ土台なのでFPSが低くても相対的な差は生まれませんが、PCは別です。現状PCで重い3Dゲームをプレイしている人は、高性能グラボを搭載したゲーミングPCでプレイしている訳で、そのほとんどは低くても平均FPS100以上くらいは出ているはずです。そんな中に平均50FPSとかで飛び込んでいくのは、圧倒的に不利です。

なので、1080pで重いゲームはプレイは出来るものの「対人対戦以外のゲームをする場合」か「対人対戦ゲームを勝敗に深くはこだわらずにプレイ出来れば良い場合」などじゃないと、やや厳しいというのは留意しておいた方が良いと思います。

とはいえ、やっぱり性能が向上したことは大きいですし、今回はゲームのベンチマークしかないのでゲーム面しか触れませんが、ゲーム以外の用途でも出来ることの幅や処理時間が大幅に短くなることが期待できるのも魅力的です。

まとめ

ここまでの内容をざっくりまとめています。

まとめ
  • コア数スレッド数は据え置き
    IceLakeからコア数とスレッド数は基本的に据え置きで、最大コア数は4です。
  • シングルスレッド性能が大幅に向上
    最大クロックの大幅上昇の影響か、シングルスレッド性能が大幅に向上しているようです。
  • マルチスレッド性能は前世代よりは大幅に向上したものの、Ryzen 4000には未だに若干劣る
    マルチスレッド性能はコア数とスレッド数が同じにしては驚異的な向上率となっているものの、未だにRyzen 4000シリーズには若干劣る感じとなっていそうです。
  • 内蔵GPU性能が爆発的に向上(Xeグラフィック)で、1080pの重めのゲームもプレイは可能に
    内蔵GPUの性能が爆発的に向上しています。ゲーミング性能は、プレサンプル機での計測では前世代の約70%の向上となっていたようです。このクラスの性能なら重めの3Dゲームでも1080pならプレイはできそうです。しかし、高いFPSは期待できないので、競技性の高いゲームをするにはFPSが物足りないと思います。PS4などと違い、PC版ゲームは他の人のほとんどがゲーミングPC使用者なので、FPSで完全に不利となってしまう可能性が高い点は留意です。とはいえ、競技性の無い(もしくは低い)ゲームではさほど問題にはならないだろうし、競技性の高いゲームでも雰囲気を知るためにお試しプレイ等が出来るようになるのは非常に大きいですし、ゲーム以外の面での活用も当然期待できるので非常に素晴らしいです。



という感じで記事は以上になります。ぐんぐん成長するCPU分野に目が離せません。ここまでご覧いただきありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です