AMDが「Ryzen Z1」シリーズを発表。ハンドヘルドPC(主に携帯ゲーム機)向けで、Zen 4とRDNA 3採用

AMDがハンドヘルドPC(主に携帯ゲーム機)向けのシリーズ「Ryzen Z1」シリーズのAPUを発表しました。その仕様などについて少し触れたいと思います。

注意
本記事の内容は記事執筆時点(2023年5月10日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

仕様とラインナップ

仕様

「Ryzen Z1」シリーズの初発モデルは「Ryzen Z1」と「Ryzen Z1 Extream」の2つとなっています。4nmプロセスノードに基づき、「Zen 4」CPUと「RDNA 3」のGPUを搭載しています。

4nmの最先端のプロセスに加え、最新のZen 4 CPU + RDNA 3ということで、非常に優れた電力効率を期待できます。


Ryzen Z1Ryzen Z1 Extream
アーキテクチャ
(CPU / GPU)
Zen 4 / RDNA 3Zen 4 / RDNA 3
プロセス4nm4nm
コア
6コア
8コア
スレッド
12スレッド
16スレッド
合計キャッシュ
22MB
24MB
GPU
4コアGPU
12コアGPU
TDP
9W~30W
9W~30W
グラフィックス性能最大 2.8 TFLPS最大 8.6 TFLOPS

コア仕様は「Ryzen Z1」は6コア12スレッドCPUと4コアのGPUと搭載し、「Ryzen Z1 Extream」は8コア16スレッドCPUと12コアのGPUを搭載します。

さすがに重いゲームではそこまで高いfpsは期待できないと思うので、CPUは6コアでもさほどマイナスの影響は無さそうですが、GPUのコア数はExtreamの方が3倍の12コアというのはやや差が出ると思います。

ただし、公式発表のスライド(下の画像参照)の比較によると差は大体1.4倍~2倍程度に収まっており、3倍というコア数差ほどはfpsに差はないようです。一部のゲームでは更に小さな差しか出ないゲームもあります。

引用:techspot

使える電力が少ないせいなのか、他の理由なのかは定かではありませんが、「Ryzen Z1 Extream」の12コアGPUはコアをフル活用できていないっぽいのに対し、「Ryzen Z1」では4コアのGPUをフル活用できているのかなという印象です。

全体的にfps自体が低いため、3倍ほどの差がなくてもやはり「Ryzen Z1 Extream」の方が快適だと思うものの、「Ryzen Z1」も重量級ゲームをそこまでしない場合には価格差次第で十分有力な選択肢になりそうです。

具体的なゲーミング性能予想をしてみると、まずEtreamの12コアGPUの方は、恐らく「Radeon 780M」と同一のものと思われるので結構簡単です。780Mは先代の「Radeon 680M」からの性能向上ではそこまで大きくはないことが判明しており、上記のグラフを見てもそのような感じを受けます。近い性能のGPUでいうと「GeForce GTX 1650 Max-Q」あたりになると思います。重量級ゲームを1080pでプレイする際には快適とは言えないかと思いますが、動作は普通にできるレベルですし、特に重いゲームでなければ平均60fps前後くらいは出るので、ゲーミングPCとして最低限の役割は果たせそうな感じです。

「Ryzen Z1」無印の4コアGPUについては類似のGPUが現状ないので予想が難しいですが、上記のグラフの性能を考えると「GeForce MX450」あたりが近そうです。モバイル版の「GTX 1050」の少し下くらいの性能のGPUです。重量級ゲームを1080pでプレイするには不安がある性能ですが、一応動きはしそうなレベルですし、720p以下なら普通に動作はできると思います。

一応参考までに、下記に3D Mark TimeSpy Graphicsのスコアを仮想「Ryzen Z1」のGPUと他の主要GPUとまとめたものを載せておきます。

3DMark Time Spy Graphics
GPU名称平均FPS
RTX 4050
8536
RTX 3060
8261
RTX 3050
4839
GTX 1650
3453
GTX 1650 Max-Q
2930
Radeon 780M(仮想:Z1 Extream)
2754
Radeon 680M
2400
GTX 1050
2111
MX450 12W(仮想:Z1)
1682
Iris Xe G7 96EU
1589
RX Vega 8(Ryzen 5000)
1173
Iris Xe G7 80EU
1131

参考:https://www.3dmark.com/search#/
※全てモバイル版

さすがにビデオカードに搭載される主要GPUよりは未だに大きく劣る性能ではありますが、エントリーレベルのGPUに迫る性能となってきています。内蔵GPU性能の躍進は本当に凄いです。重めのゲームも動作は可能なレベルになったため、今までのような「ゲーミングPCがないと重いゲームは無理」という状況が変わってきています。

ちなみに、「Ryzen Z1」シリーズはハンドヘルドPC用というやや特殊な立ち位置で発表されたものの、物理仕様は「Ryzen 7040」シリーズと同様となっています。現状出ている情報での明確な違いはTDPくらいです。Ryzen 7040Uシリーズでは15W~30Wなのに対し、Ryzen Z1シリーズでは9W~30Wとなっており、より低い消費電力・発熱で動作すること可能となっています。

しかし、ただ低い電力で動作するだけの違いなら「薄型でファンレス駆動にも向いた超省電力モデル」みたいな感じで追加すれば良いだけですから、わざわざハンドヘルドPC用で発表したのには他に何かの意図があると思われます。

個人的な予想としては、需要と供給を考えて市場をコントロールしやすくするためなのかなと思っています。これは、実質的に先代となる「Ryzen 6000シリーズ」が理由です。

「Ryzen 6000シリーズ」の時点で内蔵GPU性能は飛躍的に向上しており、重いゲームも動作可能なレベルとなっていました。電力効率もCoreよりも格段に優れていたため、かなり強力で市場を席捲するものと思っていましたが、実際にはノートPC市場ではほとんど採用がありませんでした。恐らくこれの一つの要因が、供給量の多くがゲームを意識したポータブルPCへと流れてしまったことです。「AYANEO 2 / Air Plus」、「ONEXPLAYER 2」、「GPD WIN 4」など多くの携帯ゲーム用PCに採用されました。

後にAMDが価格や需要を維持するためにあえて供給量を制限していたことを明らかにしていましたが、その制限された「Ryzen 6000シリーズ」がPCではなくポータブルPCに流れてしまい、思った通りの状況になっていなかった可能性があります。それへの対策が今回の「Ryzen Z1」の追加と考えれば、腑に落ちるかなと思いました。

「Ryzen 5000シリーズ」でも勝負が出来る状況だったため放置していた可能性もあると思いますが、グラフィックやAV1対応を考えればRDNA 2以降のGPUの方が絶対に良いですから、今後はノートPC市場にも普及してくれると消費者にとっては嬉しいと思うので、期待したいところです。

2 COMMENTS

やまだたろう

ハンドベルトはさすがハズイ
ハンドヘルドとか最近の人は聞かないか
今すぐ訂正できるならしといたほうがいいよ

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とねりん:管理人

本当にお恥ずかしい限りです…。ご指摘ありがとうございます。
訂正いたしました。

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