【比較】「Core i9 9900K」と「Ryzen 9 3900X」はどっちが良い?

「Core i9 9900K」と「Ryzen 9 3900X」の性能比較・評価記事です。
一つ一つ細かくというよりは、要点を絞ってざっくりと比較しています。
要点だけ知りたいという方は、目次から「まとめ」だけ見ても良いかも。
※掲載の価格は、記事更新時点での主に価格.comやAmazonでの最安値となっています。

簡易比較表

「Core i9 9900K」と「Ryzen 9 3900X」の簡易比較表です。

【簡易比較表】
CPU名ベンチマークコア(スレッド)TDPクロック周波数
定格 (最大)
ワット
パフォーマンス
コスパ参考価格
Ryzen 9 3900X3200012(24)105W3.8GHz (4.6GHz)304.80.49265,000円
Core i9 9900K203008(16)95W3.6GHz (5.0GHz)213.70.3558,000円
※ベンチマークスコアはPASSMARKを参考にした値。
※商品名がAmazonへのリンクになっており、現在の価格を確認できます。

一目で「Ryzen 9 3900X」の方が、処理性能が圧倒的に高いというのが見て取れます。ワットパフォーマンスとコスパもRyzenが圧勝ですね。
更に、「Core i9 9900K」はCPUクーラーが付属しないのに対し、「Ryzen 9 3900X」結構高品質なCPUクーラーが付属する点で、価格面では優位性があります

その上、2019年7月末の市場では「Ryzen 9 3900X」の方が価格がやや高いですが、海外での希望小売価格は11ドルしか差がないので、日が経つにつれて価格差が小さくなると推測されます。この点もRyzen側の有利材料となりそうなので、コスパ的にはぱっと見、Ryzenの圧倒的有利という風に見えますね。
表では触れていない部分として他にも、「Ryzenは内蔵GPUが無い」点もありますが、この性能帯のCPUを内蔵GPUのみで動かす事はほぼ無いと思うので、コスパ面での優劣に差異は無いかなと思っています。

この後、各性能についてもう少し詳しく見ていきます。

各性能について

「Core i9 9900K」と「Ryzen 9 3900X」の各種性能についてです。「シングルスレッド性能」「マルチスレッド性能」「ゲーミング性能」の3点を見ていきます。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能はが高いと、軽い処理の処理速度が速くなる他、マルチスレッド(コア)処理に対しての最適化が不十分なアプリケーションに対しても、比較的高速に処理を行う事ができます。
大きなメリットは上記に挙げたものが主ですが、ほぼ全ての処理に対して有利に働くので重要視される事が多いです。
今回は、Cinebench R15というソフトで測定した数値を見ていきます。
【Cinebench R15 Single】
CPU名称
スコア
Core i9 9900K221
Ryzen 9 3900X203

シングルスレッド性能は Core i9 が優勢だが

シングルスレッド性能の純粋な高さは、依然としてCore i9の方が高いです。Ryzenも第3世代になってシングルスレッドは大幅に向上し、数値自体は十分に高性能といえるレベルですが、Core i9 には及びませんでした。
ただし、「Ryzen 9 3900X」は12コアでコア数が「Core i9 9900K」よりも多いのでシングルスレッド性能で負けるのは、ある意味仕方が無いですし、CPU全体のパワーでは「Ryzen 9 3900X」の圧勝です。「シングルスレッド重視ならCore i9!」とは言い難いかもしれません。

マルチスレッド性能

マルチスレッド性能が高いと、マルチタスクの処理やエンコードの速度などが速くなります。簡単にいうとCPU全体の全力のパフォーマンスを表します。
シングルスレッド性能と同じく、Cinebench R15というソフトで測定した数値を見ていきます。
【Cinebench R15 Multi】
CPU名称
スコア
Ryzen 9 3900X3086
Core i9 9900K2073

マルチスレッド性能は Ryzen 9 の圧勝

マルチスレッド性能では、「Ryzen 9 3900X」が「Core i9 9900K」大幅に突き放し、圧勝という形になりました。その差は約1.5倍と非常に大きく、「これまでの競争はなんだったんだ?」と思ってしまうレベルです。圧倒的です。
価格面でも、希望価格ではほぼ同額なので、コスパも当然「Ryzen 9 3900X」の圧勝という形です。

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームする際のパフォーマンスの性能です。主に実際にゲームを起動してみた際のFPS数で比較されます。
今回は、10種類の人気ゲームでFPS数を測定した平均FPS数(相乗平均)の数値を見ていきます。使用されたGPUは「Geforce RTX 2080 Ti」という超ハイエンドGPUで、解像度は「1080p」、その設定は全ていわゆる「ウルトラ(可能な限り最高の設定)」となっています。
【ゲーミング性能(10種類のゲームでの平均FPS)】
CPU名称
FPS
Core i9 9900K139.4
Ryzen 9 3900X128.5

ゲーミング性能は Core i9 が優勢だが

ゲーミング性能は「Core i9 9900K」が優勢でした。平均FPSで約11の差がつく結果となりました。ゲーミング性能は、シングルスレッド性能と比例する傾向があるので、シングルスレッド性能がCore i9 の方が高い以上、この結果はある意味必然ですね。
ただし、数値は順調に向上しており、最高設定でこのFPS数なら十分なので、誤差と言っても良いレベルかと思います。「高」「中」設定まで落とせば、一つの基準である平均144FPSは軽く超えると思いますし、現状ではそれ以上は正直必要ないと思います。たとえば、50FPSと60FPSの差なら結構大きいかと思いますが、最高設定での130と140はそこまで気にならない差だと思います。
圧倒的なマルチスレッド性能差を考えると、「Ryzen 9 3900X」の方がお得に見えますね。

まとめ

「Core i9 9900K」 と 「Ryzen 9 3900X」 どっちが良い?

  • コスパ・マルチスレッド性能を重視するなら「Ryzen 9 3900X」一択
  • マルチスレッドが有利に働く処理をしないのであれば、「Core i9 9900K」の方が汎用性(実用性)は高い
  • お得感でいえば断然「Ryzen 9 3900X」なので、迷うなら「Ryzen 9 3900X」

コスパ重視なら「Ryzen 9 3900X」

「コスパ」「マルチスレッド性能」を意識するのであれば、「Ryzen 9 3900X」一択レベルだと思います。
マルチスレッド性能は、「Core i9 9900K」すらも圧倒する処理性能なので、特に語る事もなく「圧勝」の一言で済みますし、「シングルスレッド性能」「ゲーミング性能」は、「Core i9 9900K」にはやや負けているものの、性能は十分に高いです。「Core i9 9900K」にはない付属CPUクーラーが、「Ryzen 9 3900X」には高品質なもの付属している点も大きいです。

特に気になる点であろうゲーミング性能差も、「シングル・マルチスレッド性能」等の高いほど良いものと違い、「144FPS」出れば十分です(一般的なゲーミングモニターのリフレッシュレートの関係上)。
高性能なGPUを使用する事は前提として、厳しい環境・設定でない限りは、「Ryzen 9 3900X」でも「144FPS」は余裕で届くと思いますので、現時点では実用性の差はほぼ無い気もします。

実用性とシングルスレッド・ゲーミング性能の高さを見るならCore i9 だけど…

純粋な「シングルスレッド性能」「ゲーミング性能」の高さを考えるのであれば、「Core i9 9900K」の方が上です。
「Ryzen 9 3900X」と比較して、どちらも約1割ほど「Core i9 9900K」の方が上回っています。
そのため、「シングルスレッド性能」「ゲーミング性能」をのみ重視するのであれば、「Core i9 9900K」の選択肢は間違いではありません。
 
「Ryzen 9 3900X」のあまりにも高いマルチスレッド性能に目が眩んでしまいそうになりますが、冷静に考えてみましょう。「マルチスレッド性能」が有利に働く処理は、「動画エンコード」やマルチスレッドでの「レンダリング」などの動画編集作業が主だと思います。これらは、多くの人にとっては縁のないものです。それに対し、「シングルスレッド性能」はあらゆる処理において重要です。その点では「Core i9 9900K」の方が汎用性は高いはずです。それに、「Ryzen 9 3900X」のマルチスレッド性能が異常に高すぎるので忘れそうになりますが、「Core i9 9900K」の「マルチスレッド性能」も十分すぎるほど高いという点も忘れてはいけません。
上述したような、「マルチスレッド性能」が有利に働く処理を一切行わないような人であれば「Core i9 9900K」の方が実用性は高いと言えると思います。
 
でもやっぱり、「Ryzen 9 3900X」のマルチスレッド性能はあまりに魅力的です。「シングルスレッド性能」「ゲーミング性能」は「Core i9 9900K」が勝っているとはいうものの、その「差」は大きいとは言えないのに対し、「マルチスレッド性能」は圧倒的に「Ryzen 9 3900X」が勝っています。更に、何度も触れていますが、付属CPUクーラーが「Core i9 9900K」には無いのに対し、「Ryzen 9 3900X」には高品質なもの付属している点もコスパ面で優位に働きます。「シングルスレッド・ゲーミング性能」差を考慮しても、お得感でいえば断然「Ryzen 9 3900X」だと思います。

迷うなら「Ryzen 9 3900X」

色々と言ってきましたが、どちらか選べと言われたら、自分は「Ryzen 9 3900X」を選びます。個人的な意見としては、迷うなら、お得感が圧倒的な「Ryzen 9 3900X」です。
だってPassMarkで32000ですよ?ほんの少し前まで16000でもハイエンド名乗れた中で32000です。実用性とか抜きにしてロマンがありますし、お得感がハンパないです。クーラーがいらないのも好印象です。
最終的に、何の根拠もない主観だけの結論になったのは申し訳ないですが、それほどインパクトのある圧倒的なマルチスレッド性能を「Ryzen 9 3900X」は持っています。
 
それでは、記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。

4 COMMENTS

ぶーとん

初めまして、いつも比較表を見させていただいています。

費用対効果については各所で検証されているので省きますが、
Core i9-9900Kは8C/16Tで、Ryzen 9 3900Xは12C/24Tなので
コアおよびスレッド数が1.5倍なので性能も1.5倍、と考えれば
圧倒的でも何でもないのではないでしょうか。
同じコア数・スレッド数で、というなら分かるのですが……。

ただ、どちらかと言えばIntel寄りの自分でも
流通価格がまだ希望小売価格(MSRP)から大きく乖離している点と
X570チップセット搭載マザーボードがやや高価である点を除けば、
第3世代のRyzenは非常に魅力的な、ロマンのあるCPUだと思います。

利用させていただいているのに失礼な言い方ですみません。
それに的外れなことを言っているかもしれません。
なんとなく気になったのでコメントさせていただきました。

返信する
とねりん

コメントありがとうございます。的外れじゃないですし、
疑問に思ったことをコメントする事は全く失礼じゃないので、お気になさらないでください。

本題ですが、
これがもしPassMarkでいう10000と15000の1.5倍の差であれば、ぶーとんさんの言う通りです。
ただし、20000と30000であれば話が変わってきます。
まず単純に、PassMarkにして10000の差は非常に大きいので、個人的にはこれだけでも圧倒的と表現して良いかなとも思います。

また、間違っていたら申し訳ないですが、
「Intel側も12C/24TのCPUを作れば、Ryzen 9 3900Xと同程度マルチスレッド性能のCPUが作れるのではないか」
とお考えになったのであれば、それは間違いです。(少なくとも現時点では)

例を挙げると、「Core i9 9900K」と同じIntelの第9世代に、
「Ryzen 9 3900X」と同様の12C/24Tの「Core i9 9920X」というCPUが存在しています。
これの性能はPassMarkだと25000~26000程度です。
同世代の「Core i9 9900K」より1コアあたりの性能は大きく落ちていますし、全体の性能としても「Ryzen 9 3900X」に及びません。
しかもTDPは165Wで、価格は10万円を超えます。

理論だけなら、コア(スレッド)あたりの性能が同じなら、コア数およびスレッド数を同じにすれば同程度の性能になるはずで、ぶーとんさんのお考えは正しいですが、
例に挙げた「Core i9 9920X」を見てもわかるように、これは一概には言えません。

詳しい事は割愛させていただきますが、
主流CPUの最高性能を超えるCPUを作るためにコア数を増やすと、1コアあたりの性能は落ちてしまうのが一般的、という認識で構いません。
そのため、「Core i9 9900K」から「Ryzen 9 3900X」の、PassMark「20300 → 32000」という上昇率は異常で、圧倒的だったという訳です。
上位モデルに当たるはずの「Xeon」「Core X」「Ryzen Treadripper」等ハイエンドソケット採用のCPUすらも、
ほとんどが「Ryzen 9 3900X」に性能を抜かされてしまったという状況です。

長文かつ拙い説明で申し訳ありませんが、概ねこのような感じです。
利用して頂いている比較表ではほぼ主流CPUしか載せていないので、余計に分かり辛かったかもしれません。
また気軽にコメントくださると幸いです。

返信する
ぶーとん

とねりん 様

突然のコメントにも関わらず、お返事ありがとうございます。
しかも、丁寧で分かりやすい解説まで書いていただいてしまって
素人のくせに調子に乗った自分の無知が恥ずかしいです。

「数が1.5倍になったから、性能も1.5倍になる」というのは
ちょっと穴に埋まりたいくらい考えが足りていなかったと感じています。
とねりん様からすればツッコミ所が多すぎるかと思いますが、
ある程度完成されているものがその上を行くのは簡単ではないですよね。
今まで以上の性能を、今まで以下のサイズと発熱に収めて、価格も抑える。
これがいかに凄いことなのか、先日の自分は考えられていませんでした。

自作初心者としてもっともっと勉強しなければと反省もしていますが、
コメントしたことで多くのことを教えていただけて良い機会になりました。
とねりん様、本当にありがとうございます。

最後に一つ、今回AMD Ryzenが驚異的な進化によって話題になりましたが、
Intelの第10世代CPUについて何か期待されていることや
気になっている点などありましたらお教えいただきたいです。
お暇があれば、気が向いたらで構いませんので、よろしくお願い致します。

とねりん

拙い説明から物凄く的確にというか、説明以上のものを読み取ってくださって、むしろ自分が恥ずかしいくらいです。
「今まで以上の性能を、今まで以下のサイズと発熱に収めて、価格も抑える」非常に的確で、そんな表現がすぐ出るのが羨ましいです。
質問どころか、コメントを頂く機会すらあまり多くなく、説明が下手で本当に申し訳なかったです。
とはいえ、少しでも役に立てたなら幸いでした。

Intelの第10世代CPUについては、信ぴょう性の定かでないリーク情報くらいしか出ていないので何とも言えないですが…
Ryzenに対抗するにあたって、iGPU(内蔵GPU)は、一つの重要な要素となるのではないかと思います。

デスクトップ向けRyzen(末尾G除く)は、全モデルが最初からiGPUそのものがないため、
Intelの主流CPUシリーズと比較して、実は最初から設計上の利点があります。
Intel側からすれば、対抗材料にはなるはずです。

追記:また、CPUにはプロセスサイズという、ざっくりいえばCPUの配線の太さを示すものがあります。単位はnmで表しますが、これが細ければ細いほど、細かい設計が可能だったり、同じ面積でおけるトランジスタ数が多くなったりメリットがあります。これが第3世代Ryzenが7nmなのに対し、第9世代のIntelでは14nmとなっており差があります。この差を埋める事もIntelとしては急務となります。

今回は、あまりに驚異的なマルチスレッド性能ゆえに第3世代AMD Ryzenが持ち上げられる結果とはなりましたが、
性能面では、マルチスレッド性能以外はIntelも負けていません。
需要的には最も大きいと思われる「ゲーミング性能」は未だにIntelの方が上ですし、
マルチスレッド性能差が追い付くまでいかずとも縮まりさえすれば、
「やっぱりIntelが安心」と考える人は少なくないと思います。

あと、コスパ面の話になりますが、Intelはリテールクーラーをもう少し頑張って欲しいと思います。
Ryzenは最上位モデルでも普通に使えるクーラーが付属しているのに、Intelは付属していなかったり、付属していても品質的にはかなりお粗末ですからね…。
ここが改善されるか価格が安くならない限りは、コスパ的な不利をずっと背負う事になってしまいます。印象的にも良くないです。

正直、自分は出たものに対して評価するのがメインで、
将来については深くは考えない事が多いので参考になるかわからないですが、このような感じになります。
ただの一人の消費者の意見としてお納めいだけると有難いです。

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