デスクトップ向けのIntelの「Core」シリーズの各モデル「i9 / i7 / i5 /i3」の違いをざっくり解説しています。
対象は最新世代としており、記事更新時点(2023年10月時点)の最新世代は第13,14世代です。2世代分を対象としているのは、第14世代が第13世代のリフレッシュ版であり、ナンバリングは更新されていますが、技術的には同世代のためです。新しいチップセットも登場しなかったので、対応マザーボードも同じ(古いものはBIOSアップデートが必要の可能性はあるので注意)です。
まずは「i9~i3」各モデルの凄くざっくりとした概要を載せています。文中に出てくるPコアとEコアについては、Pコアは高性能コアを指し、Eコアは高効率コアを指します。
- Core i9:最もコア数が多いハイエンドモデルだが、性能以外の面は犠牲に
- Core i9はCoreシリーズにおける最上級モデルです。第13,14世代でのコア構成は24コア(8P+16E)32スレッドです。最も多いコア数を持ち、どの方面から見ても処理性能はトップクラスの地位を保っていることが基本のハイエンドCPUとなっています。ただし、性能以外の面は犠牲になっているのが注意点です。価格は非常に高価ですし(2023年10月時点で約9~11万円)、消費電力が圧倒的に多いため、電源容量やCPUクーラーにも十分に注意を払う必要があります。また、現状は重いゲームでもコア数で恩恵があるのはPコア(高性能コア)8コア程度までと言われており、実際に結果を見てもその通りなので、Pコアの数が同じ8であるCore i7と実はゲーム性能はほぼ変わりません。そのため、Core i9を検討するのは基本的に、費用や消費電力を犠牲にしてもマルチスレッド性能を少しでも高めたいという場合に限られます。
- Core i7:ゲーム性能はCore i9とほぼ変わらない高性能高コスパな人気モデル
- Core i7はCoreシリーズにおける上級モデルです。コア構成は、第14世代では20コア(8P+12E)28スレッド、第13世代では16コア(8P+8E)24スレッドです。Core i9にはやや劣るものの多数のコアを持ち、マルチスレッド性能は非常に高いため、ハイエンド用途でも十分に使用できる性能を持ちます。また、ゲーム性能に関してはCore i9ともほとんど変わらないため、高いマルチスレッド性能は必要なく、ゲーム性能さえ高ければ良いという人にとっては丁度良い高性能CPUとなっています。価格は非常に高価なものの、Core i9よりは安価なため、コスパも悪すぎず、Core i9よりも性能も無駄になりにくいので、一般的に恐らく最も人気の無難なモデルです。迷ったらCore i7という趣旨の言葉も散見されるほど安定の選択肢となっています。ただし、K付きのモデルに関しては消費電力が非常に多く、Core i9とも大差ないレベルなので、電源容量やCPUクーラーの選択には注意をする必要があります。
- Core i5:性能も悪くなく、価格の安さとコスパが魅力のミドルレンジモデル
- Core i5はCoreシリーズにおける中級にあたる、いわゆるミドルレンジモデルです。第13,14世代でのコア構成は、10~14コア(6P + 4 – 8E)16~20スレッドです。Pコアの数がCore i7以降よりも少ないこともあり、マルチスレッド性能ではやや劣りますが、2023年現在では十分に高性能と呼べる性能となっており、重い処理でも普通にこなせる性能です。ゲーム性能も基本的にCore i7以降にやや劣る傾向がありますが、それはあくまでハイエンドGPUと組み合わせたときの話であり、ミドルレンジGPUと併用する場合にはさほどネックではなかったりするので、高いマルチスレッド性能が必要なく、GPUもミドルレンジ以下のものを採用するゲーミングPCでは費用を減らし、コスパを最大化する選択肢として強力で人気です。消費電力や発熱に関しても、K付きであっても空冷でなんとか出来るレベルに収まっているという扱い易さも魅力の一つです。
- Core i3:安さが魅力のエントリーモデルだが、需要もコスパも低め
- Core i3はCoreシリーズにおける下位モデルです。第13,14世代ではPコアが4つだけのシンプルな構成となっており、10コア以上を搭載するCore i5以上と比べると性能は圧倒的に劣ります。そのため、ゲームを含め高い性能を発揮して欲しいPC向きのCPUではありません。魅力は価格の安さです。性能もオフィスやWeb閲覧などの軽作業なら十分な性能があるので、軽作業前提で少しでも費用を減らしたい層をターゲットとしたCPUです。しかし、Core i5との価格差は大体高くても1万円程度となっており、小さい価格差ではないものの性能が如何せん圧倒的なので、コスパは明らかに劣っているため、予算を節約したい場合でもCore i5の下位モデルが選ばれるケースが多い印象で、Core i3の需要はそこまで高くない印象です。実際その通りで、Coreでも第11世代ではCore i3は投入が無かったり、競合のRyzenでもRyzen 3は投入が遅れたり無かったりする実情があります。基本的にはおすすめしないモデルです。
超ざっくり比較
まずは、「Core i3~i9の特徴をざっくり掴めれば」といった感じの超ざっくりとした比較表を載せています。
CPUブランド | コア | マルチコア性能 | ゲーム性能 ※高性能GPUと併用時 |
消費電力 |
---|---|---|---|---|
Core i9 | 24 コア (8P + 16E) |
ものすごく強い | すごく強い | K付きは非常に多い(~253W+) K無しは省電力(65Wベース) ※K無しは省電力だけど、性能が低下 |
Core i7 | 16 ~ 20 コア (8P + 8E~16E) |
すごく強い | ||
Core i5 | 10 ~ 14 コア (6P + 4E~8E) |
やや強い ~ 強い (10コア~14コア) |
まぁまぁ ~ 強い (K無し~K付き) |
K付きはやや多い(~181W) K無しは省電力(65Wベース) ※K無しは省電力だけど、性能が低下 |
Core i3 | 4 コア Pコアのみ |
やや弱い | 弱い ※ハイエンドGPUだと かなり弱い |
少ない 65W~89W |
コア数の比較
Coreシリーズの各モデルを見ていくにあたり、基本的にはコア数が最も分かり易く効果も高いポイントです。そのため、そこと価格だけ抜き出して見てみましょう。
コア | スレッド | コアの内訳 | 参考価格 | |
---|---|---|---|---|
Core i9 |
24コア
|
32スレッド | 8P + 16E | 8万円台~ |
Core i7(第14世代) |
20コア
|
28スレッド | 8P + 12E | 6万円台後半~ |
Core i7(第13世代) |
16コア
|
24スレッド | 8P + 8E | 6万円前後 |
Core i5(500番台~K) |
14コア
|
20スレッド | 6P + 8E | 3万円台後半~ |
Core i5(400番台) |
10コア
|
16スレッド | 6P + 4E | 3万円台~ |
Core i3 |
4コア
|
8スレッド | 4P | 2万円前後 |
※Eコア:高効率コアのこと。低消費電力と小型化に特化したコアで、Pコアよりも低コストでたくさん搭載できる。
その代わり、1コアあたりの性能はPコアに劣る上、ハイパースレッディング(1コアで2スレッド動作)も非対応。
上位モデルになるほどコア数が多くなり、価格も上昇していることが分かります。予算と必要な性能との兼ね合いで選択することになります。
また、合計コア数だけでなく、PコアとEコアの数にも注目です。EコアはPコアと比べると単コア性能が劣るため、特にシングルスレッド性能や遅延の少なさが重要な処理ではあまり役に立たない事があります。
特に需要が高いものだとゲームが挙げられ、2023年現在ではPコアが8つあればゲームでは十分と言われており、実際のテストでも基本その通りです。そのため、Pコアの数が同じCore i9とCore i7は、実はゲーム性能はほぼ変わりません(クロック差などで若干の差が出るが)。
そのため、特にCore i9を選択する場合に予算が潤沢という訳でもない場合には、Eコアによるマルチスレッド性能の底上げが活きる用途で使うかどうかがポイントというのは覚えておいて損は無いかと思います。
性能ざっくり評価
次に、各モデルの各項目の性能を、仕様やテスト結果に基づいてざっくりと評価した表を見てみましょう。ゲーム性能はハイエンドGPUと組み合わせた場合のものであり、ミドルレンジ以下のGPUの場合には表の評価ほどの差は出ないのでその点は留意してください。
後で各モデルについてもそれぞれ触れていきますが、この表だけでも大体のイメージを掴めるのではないかと思います。
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーム |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
Core i9(第13,14世代)
24コア(8P+16E) 32スレッド |
|||||
Core i7(第14世代)
20コア(8P+12E) 28スレッド |
|||||
Core i7(第13世代)
16コア(8P+8E) 24スレッド |
|||||
Core i5 K(第13,14世代)
14コア(6P+8E) 20スレッド |
|||||
Core i5 無印(第13世代)
10~14コア(6P + 4or8E) 16~20スレッド |
|||||
Core i3(第13世代)
4コア8スレッド |
現在の主要CPU
大まかな各モデルの概要に触れたところで、次は実際のベンチマークスコアなども交えて見ていきます。
記事更新時点(2023年11月)の市場で主要なCoreの簡易比較表を下記に示しています。最新の第14,13世代Coreおよび、まだ市場やや残る第12世代Coreも一緒に掲載しています。
末尾Fのモデルは、Fの付かないモデルから内蔵GPUが無効化されたモデルで、Fの付かないモデルとCPUとしての処理性能は基本的に同じです。クロックに関しては見易さ重視でPコアのもののみ記載しています。
CPU名称 | 評価 | 性能 スコア |
コア | スレッド | TDP | クロック 定格 / 最大 |
電力
効率 |
コスパ | 参考価格 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Pコア | Eコア | 合計 | PL1 | PL2 | ||||||||
Core i9-14900K | ◎ |
61,000
|
8 | 16 |
24
|
32 | 125W | 253W | 3.2 / 6.0GHz | 99,800円 | ||
Core i9-14900KF | ◎ |
61,000
|
8 | 16 |
24
|
32 | 125W | 253W | 3.2 / 6.0GHz | 95,800円 | ||
Core i9-13900K | ◎ |
59,700
|
8 | 16 |
24
|
32 | 125W | 253W | 3.0 / 5.8GHz | 90,850円 | ||
Core i9-13900KF | ◎ |
59,700
|
8 | 16 |
24
|
32 | 125W | 253W | 3.0 / 5.8GHz | 86,700円 | ||
Core i7-14700K | ◎ |
54,000
|
8 | 12 |
20
|
28 | 125W | 253W | 3.4 / 5.6GHz | 71,270円 | ||
Core i7-14700KF | ◎ |
54,000
|
8 | 12 |
20
|
28 | 125W | 253W | 3.4 / 5.6GHz | 66,880円 | ||
Core i9-13900 | 〇 |
52,500
|
8 | 16 |
24
|
32 | 65W | 219W | 2.0 / 5.6GHz | 89,680円 | ||
Core i9-13900F | 〇 |
52,500
|
8 | 16 |
24
|
32 | 65W | 219W | 2.0 / 5.6GHz | 86,200円 | ||
Core i7-13700K | ◎ |
46,900
|
8 | 8 |
16
|
24 | 125W | 253W | 3.4 / 5.4GHz | 65,200円 | ||
Core i7-13700KF | ◎ |
46,900
|
8 | 8 |
16
|
24 | 125W | 253W | 3.4 / 5.4GHz | 61,060円 | ||
Core i7-13700 | ◎ |
41,800
|
8 | 8 |
16
|
24 | 65W | 219W | 2.1 / 5.2GHz | 61,400円 | ||
Core i7-13700F | ◎ |
41,800
|
8 | 8 |
16
|
24 | 65W | 219W | 2.1 / 5.2GHz | 57,250円 | ||
Core i9-12900K | 〇 |
41,180
|
8 | 8 |
16
|
24 | 125W | 241W | 3.2 / 5.2GHz | 66,480円 | ||
Core i9-12900KF | 〇 |
41,180
|
8 | 8 |
16
|
24 | 125W | 241W | 3.2 / 5.2GHz | 64,800円 | ||
Core i5-14600K | ◎ |
39,000
|
6 | 8 |
14
|
20 | 125W | 181W | 3.5 / 5.3GHz | 54,240円 | ||
Core i5-14600KF | ◎ |
39,000
|
6 | 8 |
14
|
20 | 125W | 181W | 3.5 / 5.3GHz | 49,690円 | ||
Core i5-13600K | ◎ |
38,300
|
6 | 8 |
14
|
20 | 125W | 181W | 3.5 / 5.1GHz | 49,480円 | ||
Core i5-13600KF | ◎ |
38,300
|
6 | 8 |
14
|
20 | 125W | 181W | 3.5 / 5.1GHz | 45,340円 | ||
Core i5-13500 | ◎ |
32,280
|
6 | 8 |
14
|
20 | 65W | 154W | 2.5 / 5.2GHz | 37,730円 | ||
Core i9-12900 | 〇 |
37,500
|
8 | 8 |
16
|
24 | 65W | 202W | 2.4 / 5.1GHz | 74,800円 | ||
Core i9-12900F | 〇 |
37,500
|
8 | 8 |
16
|
24 | 65W | 202W | 2.4 / 5.1GHz | 59,800円 | ||
Core i7-12700K | 〇 |
34,300
|
8 | 4 |
12
|
20 | 125W | 190W | 3.6 / 5.0GHz | 49,450円 | ||
Core i7-12700KF | 〇 |
34,300
|
8 | 4 |
12
|
20 | 125W | 190W | 3.6 / 5.0GHz | 46,280円 | ||
Core i7-12700 | ◎ |
32,220
|
8 | 4 |
12
|
20 | 65W | 180W | 2.1 / 4.9GHz | 45,780円 | ||
Core i7-12700F | ◎ |
32,220
|
8 | 4 |
12
|
20 | 65W | 180W | 2.1 / 4.9GHz | 42,580円 | ||
Core i5-12600K | ◎ |
27,000
|
6 | 4 |
10
|
16 | 125W | 150W | 3.7 / 4.9GHz | 37,200円 | ||
Core i5-12600KF | ◎ |
27,000
|
6 | 4 |
10
|
16 | 125W | 150W | 3.7 / 4.9GHz | 34,000円 | ||
Core i5-13400 | ◎ |
26,300
|
6 | 4 |
10
|
16 | 65W | 154W | 2.5 / 4.6GHz | 36,070円 | ||
Core i5-13400F | ◎ |
26,300
|
6 | 4 |
10
|
16 | 65W | 148W | 2.5 / 4.6GHz | 31,940円 | ||
Core i5-12400 | ◎ |
19,700
|
6 | 0 |
6
|
12 | 65W | 117W | 2.5 / 4.4GHz | 25,000円 | ||
Core i5-12400F | ◎ |
19,700
|
6 | 0 |
6
|
12 | 65W | 117W | 2.5 / 4.4GHz | 21,780円 | ||
Core i3-13100 | △ |
14,640
|
4 | 0 |
4
|
8 | 60W | 89W | 3.4 / 4.5GHz | 22,340円 | ||
Core i3-13100F | △ |
14,640
|
4 | 0 |
4
|
8 | 58W | 89W | 3.4 / 4.5GHz | 18,200円 | ||
Core i3-12100 | △ |
14,450
|
4 | 0 |
4
|
8 | 60W | 89W | 3.3 / 4.3GHz | 17,900円 | ||
Core i3-12100F | △ |
14,450
|
4 | 0 |
4
|
8 | 58W | 89W | 3.3 / 4.3GHz | 14,280円 |
K:オーバークロック可能モデル
クロック周波数を従来より引き上げる事が可能なモデル。しかし、オーバークロックは想定されていない発熱の増加が懸念されるため、基本的には非推奨。ただし、オーバークロックをしなくても、無印版より定格やTB時の周波数が高くなっており、オーバークロックを利用しなくても性能が高いので、オーバークロックをする気が無くても、ただの高性能モデルとして扱える。
F:内蔵GPU(iGPU)が無効化モデル
CPU自体に画面出力機能を含むグラフィック機能がないため、別途GPUが必須となる。価格が少し安い。
CPU名称:CPUの名称です。4桁の数字の先頭が世代数を表しています。(例: Core i7 8700 → 第8世代)
評価:筆者の主観によるオススメ度を表しています。主に性能と価格から判断しています。
性能スコア:CPUのベンチマークで有名なPassmarkのスコアです。総合性能を測るテストですが、マルチスレッド性能が高い(=コア数が多い)ほど高いスコアが出る傾向があります。
クロック:CPUのクロック周波数です。見易さ重視でPコアのみ掲載。また、高負荷時には全コアが記載の最大クロックまで上がる訳ではないので注意。
TDP:熱設計電力です。CPUの消費電力や発熱の目安となる指標です。現在ではPL2という2段階目の制限値が実質的な最大消費電力となっています。
コア:CPUが実際に処理を行う部品の名称です。コア数が多いほど発熱が多くなる傾向があります。
スレッド:ざっくりいうと、コアが行う仕事を表します。原則は、1コアにつき1スレッドですが、ハイパースレッディング・テクノロジーという技術により、1コアを疑似的に2コアに見せることで、1コアにつき2スレッドを実現したCPUも今では珍しくありません。
電力効率:1Wあたりの性能スコアです。
コスパ:1円あたりの性能スコアです。
参考価格:CPUの現在の価格の参考です。記事更新時点での、価格.comやAmazonなどの最安値となっています。最終更新は2019年6月25日です。
第12~14世代でコア性能もコスパも実はそこまで上がってないので、市場で今お得な製品を選ぶのが吉
上記の表の「コスパ」と「電力効率」の項目を見ると、どれも同価格帯のモデルならコスパも電力効率もそこまで変わっていないのがわかります。
これはプロセスノードがどれも10nmと同一であり、コアのアーキテクチャの差もわずかであるためです。Eコアのアーキテクチャは3世代に渡り同一(Gracemont)ですし、第13世代と第14世代はPコアについても同じです。
ソケット形状も同じで、チップセットについても第14世代では追加が無かったため、基本的に対応マザーボードも同一(BIOS更新の必要性が出る可能性はある)なので、プラットフォーム面でも差はほぼありません。
このように、第12~14世代はハードウェアの基盤となるシステム差がわずかなため、「質」という点では実はそこまで差がありません。
一応、Pコアあたりのキャッシュ量が、第12世代および第13世代の下位モデルでは1.25MBなのに対し、第13世代のCore i5(K)以降では2MBと増量しているため、ハイエンドGPUと組み合わせる際のゲーム性能などでは第13、14世代のCore i7以降が推奨されますが、それ以外では実用コスパはほぼ変わらないと評しても良いレベルだと思います。
Intelも買い替え促進のために、同グレードモデルでもクロックを上げたりやコア数を増やしたりしてコスパを少し向上させたりするため、基本的には新しいほどコスパが良い傾向はやはり少しあるものの、日本では円安の進行で新しい世代の方が高くなっていたりもしますし、第12,13世代は旧世代化したこともあって在庫処分の値下げも多いので、旧世代でも最新の第14世代よりもお得で狙い目となる製品が局所的に登場する可能性もあります。そのため、「このCPUが良いらしいから絞って探そう」という感じよりも、セールやキャンペーン品などを見渡して、お得そうなモデルを探すそうが良いのかなという印象です。
各モデルの特徴【i9 , i7 , i5 , i3】
ここからは、第13,14世代Coreシリーズの「i9 / i7 / i5 / i3」各モデルの特徴をそれぞれざっくり解説しています。
「CPUのゲーミング性能」は基本的に「高性能なグラフィックボードを使用した場合」のものを指しています。CPUの内蔵GPU(iGPU)の性能を示すものではないため、注意してください。
Core i9:性能特化のハイエンドモデル
- 処理性能ではあらゆる面でトップクラスのハイエンドモデル
- 24コア(8P+16E)による圧倒的なマルチスレッド性能
- 非常に優れたシングルスレッド性能・ゲーミング性能
- 消費電力・発熱が凄まじく多い
- 非常に高価(8万円台~)
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーム |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
Core i9(第13,14世代)
24コア(8P+16E) 32スレッド |
第13,14世代のCore i9は24コア(8P+16E)を搭載し、圧倒的なマルチスレッド性能を発揮するハイエンドCPUです。Intelの主流CPUとしては最上位のCPUになります。第13世代と第14世代で性能差はわずかなので、安い方を選ぶと良いです(ただし、第14世代では冷却効率が少し向上しているようなので、同額やわずかな差なら第14世代の方がおすすめ)。
Core i9の魅力は、やはり何といっても24コアによる圧倒的なマルチスレッド性能です。とにかく高い処理性能を必要とする、重いマルチスレッド処理を日常的に行う人にとって非常に魅力的なCPUとなります。
マルチスレッド性能以外でもその処理性能はトップクラスで、シングルスレッド性能やゲーム性能(ハイエンドGPU使用時)も素晴らしいです。どの方面から見てもトップクラスの性能を発揮するため、予算が潤沢で色々調べるのが面倒という人が雑に選ぶケースもあると思います。
ただし、その処理性能の高さの代わりに価格は非常に高価(8万円後半~10万円台)で、消費電力と発熱が非常に多い点は弱点です。
特に電力面については要注意です。K付きモデルの最大ターボ電力は253Wとなっており非常に高い上、冷却に余裕があれば少し負荷を上げる機能がCore i9では標準で有効となっているので、更に増加する可能性もあります。性能を最大限引き出すためには冷却性能が非常に高いクーラーが必要となる点は十分に留意しておく必要があります。最低でも240mm以上の水冷が推奨され、BTOなどでは大体360mm水冷が標準となっていることが多いと思います。
また、電源も他モデルよりも容量が多くて高品質なものが求められることもあります。
このように、CPU価格が非常に高価な上に、クーラーや電源でも追加費用を求められるため、Core i7以下と比べると導入費用に大きな差が出る点は留意しておく必要があります。圧倒的なコア数のおかげでマルチスレッド性能コスパは悪くはないため、とにかく性能重視なら有力な選択肢ではありますが、やはり気軽には手を出しにくいです。
また、Core i9の処理性能はどの方面から見てもCoreシリーズでトップなのは確かですが、Core i7に対して大きな優位性があるのはほぼマルチスレッド性能のみという点も留意しておくと良いです。
特に注目なのはゲーム性能で、先にも軽く触れましたが、ゲーム性能に貢献するのは基本Pコアのみで、8コア程度あれば十分と言われています。そして、第13,14世代のCore i9とCore i7はPコアがどちらも8個なので、実は大して差が出ません。世代が進むとにクロックが増えたりキャッシュが増えたりなどがあるので少しは向上はしているものの、同世代ならその差もごくわずかであるため、ほとんど変わらないレベルです。
Core i7の価格はCore i9よりも大体3万円前後も安いので、ゲームメインであれば実用性のほぼ変わらないCore i7の方がコスパが良い、という点は知って置いて損はないかなと思います。
Core i7:コスパも優れたハイスペックモデルで、高性能PCの定番
- 第14世代の方がEコアが4つ多い
- 16~20コアよる非常に優れたマルチスレッド性能
- Core i9とも大して変わらない優れたゲーミング性能
- 消費電力・発熱が非常に多い
- 非常に高価(5万円台後半~7万円台)
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーム |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
Core i7(第14世代)
20コア(8P+12E) 28スレッド |
|||||
Core i7(第13世代)
16コア(8P+8E) 24スレッド |
Core i7は代々、迷ったらCore i7と言われることもあるほど、高性能CPUの安定択として常に高い人気を誇っている人気モデルです。
各種性能が非常に優れており、Core i9よりも大幅に安価にハイエンド用途にも対応できる性能を手に入れられるのが魅力です。ゲーミング性能がCore i9と大差ない点も人気の要因の一つです(現状のゲームはPコアが8あれば十分と言われているため)。
コア構成は、第14世代の方が第13世代よりもEコアが4コア多い点に注目です。第14世代では20コア(8P+12E)なのに対し、第13世代は16コア(8P+8E)となっています。
Core i9やCore i5では第14世代でコア数が同じでしたが、Core i7は第14世代でEコアが増量されたため、マルチスレッド性能コスパが第14世代の方が若干向上しています。価格差もさほど大きくないので、コスパ重視なら基本第14世代の方がおすすめです。
ただし、Pコアの数は同じでゲーム性能はほぼ変わらないので、第13世代も在庫処分などで大幅に安ければ悪くない選択肢なのは、覚えておくと掘り出し物を見逃さないで済むかもしれません。
話が逸れましたが、Core i7は高性能高コスパで、高性能で無難なCPUを選びたいなら筆頭となるモデルです。
弱点として、やはり第一は価格です。Core i9ほどではないものの、5万円台後半~7万円台という価格は非常に高価です。
また、K付きの消費電力(発熱)が非常に多い点も注意が必要です。基本の電力設定はCore i9と同様で、K付きは最大ターボ電力が253Wと超高消費電力です。性能を最大限引き出すためには冷却性能の高いクーラーが求められます。水冷推奨です。
K無しモデルの場合は、ベース電力が65Wと少なく、ワットパフォーマンスも優れており、発熱も空冷クーラーで対応できるため扱い易いです。性能はK付きと比べると低くなってしまうものの、TDP PL2の219Wまでは制限値を引き上げることも実は可能なので、設定で多少性能を上げることも出来るなど、使い勝手が良いです。少しでも高いマルチスレッド性能が欲しい訳でないなら、K無しモデルは有力な選択肢です。
Core i5:安さとコスパが魅力のミドルレンジモデル
Core i5についてですが、第13,14世代では10コアと14コアのモデルが存在し、性能が大きく異なります。そのため、その二つを分けて見ていきます。
14コアのCore i5:安価ながら優れたマルチスレッド性能で総合コスパが凄く良い
- 14コア(6P+8E)による非常に優れたマルチスレッド性能
- Core i9 / Core i7とのゲーミング性能は意外と小さい(K付き)
- 消費電力・発熱が多め(K付き)
- やや高価(3万円台後半~5万円台)
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーム |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
Core i5 14コア
(第13,14世代) 14コア(6P+8E) 20スレッド |
14コアのCore i5は、ミドルレンジとは思えない高性能さを持つCPUです。ハイエンド用途でも使用できる性能を持っています。
コア構成は6Pコア+8Eコアとなっており、500番台(例:Core i5-13500)では3万円台で14コアを搭載するというコア単価が非常に安くてマルチスレッド性能コスパが優れたCPUに仕上がっています。
Pコアの数がCore i7以降の8コアに劣るため、特にハイエンドGPUを使用する場合のゲーム性能では少し劣るのが弱点の一つですが、Core i5ではミドルレンジGPUが採用されることが多く、その場合には大したネックとはならないです。特にK付きはゲーム性能も割と高く、超高性能GPUでなければCore i7以降との差もわずかなので、総合コスパは非常に優れています。
消費電力もCore i7以降と比べるとマイルドで、K無しならベース電力65Wと非常に少なく、K付きであっても最大ターボ電力は181Wとなっていて、空冷でも一応運用が可能なレベル(高性能なものは必要になるけど)なので、扱い易さ面でも優れています。
Core i7以降よりも安価で、ハイエンド用途でも使えるマルチスレッド性能を備えるのが魅力なのが、14コアのCore i5です。
ただし、悪く言えば価格と性能が中途半端で、より高い性能を求めるならCore i7、より安さを求めるなら10コアのCore i5という感じで、中々第一の選択肢となり難い印象で、実際に採用も他モデルより少ないです。
価格と性能だけから評価すれば決して悪くないですが、1~2万円のプラスでCore i7を導入することができ、今後少なくとも数年間は付き合うPCとなると、「Core i7」のブランドイメージや所有欲の方が勝るケースが多いのは納得できるところで、ややニッチなコスパ特化志向の人が自作やカスタマイズ性の高いショップで検討するくらいで、一般的にはあまり検討されることが無いCPUだと思います。そもそも、大手のBTOでは選択肢が用意されていないことも珍しくありません。
しかし、コスパは優れており、全然悪い選択肢ではないので、頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。
10コアのCore i5:価格の安さと実用コスパが魅力
- 比較的安価(約3万円~)
- 10コア(6P+4E)による優れたマルチスレッド性能
- 非常に優れたコスパ
- 上位モデルには大きく劣るマルチスレッド性能
- 上位モデルにやや劣るゲーミング性能
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーム |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
Core i5 無印(第13世代) 10コア(6P + 4E) 16スレッド |
第13,14世代の10コアのCore i5(例:Core i5-13400)は安さ重視でのゲーミングPCでよく採用される定番CPUです。
コア構成は6Pコア+4Eコアの合計10コア16スレッドです。3万円台前半という価格の割には優れたマルチスレッド性能を発揮し、安価ながら重い処理でも割と普通に使えるレベルの性能を持ちます。
消費電力や発熱が少ないのもライトユーザーにとっては嬉しい要素です。ベース電力は65Wと少なく、やや小型の空冷クーラーでも十分運用が可能です。
弱点はやはり性能で、やはりCore i7以降と比べるとコア数差が大きいためマルチスレッド性能は大幅に負ける他、使える電力が少なくてクロックがやや低いことも相まって、ハイエンドGPU使用時のゲーム性能も一段劣ります。
そのため、単体のコスパや安さは魅力ながら、やはり使用されるのはミドルレンジGPUと併用する安さ重視のPCが基本となっています。
ハイエンド級の高性能なゲーミングPCを求めるなら選択肢から外れてしまいますが、特に低価格PCでは非常に強力な選択肢で採用数も非常に多い、低価格高コスパCPUの定番モデルです。
Core i3:安価だけど性能不足が気になるエントリーモデル
- 非常に安価(2万円前後)
- 軽作業には十分な性能
- 消費電力・発熱が少ない
- 4コアで重い処理には向かない性能
- ゲーミング性能がCore i5以上に大きく劣る
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーム |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
Core i3(第13世代)
4コア8スレッド |
Core i3は、コア数が少なく性能が低い代わりに価格が安いエントリーモデルです。
消費電力も少ないため扱いやすいですが、コアが4つしかないためマルチスレッド性能がCore i5以上に圧倒的に劣ります。重い処理には向かない、軽作業前提のCPUです。
Webブラウジングやオフィス作業などなら十分な性能を持っているので、それらの用途がメインのライトユーザーやビジネス用途での採用が主なモデルです。消費電力と発熱も少ない点は省スペースPCなどでも採用しやすいのもライト用途に向いている要素の一つです。
コスパ自体は悪くはないのですが、やはり上位モデルと比べると重い処理への対応力が大幅に低いのが致命的です。やはり4コアは厳しいです。ゲームでもボトルネックになり易いため、ゲーミングPCでの採用にも向きません。
ミドルレンジ以下のGPUとの使用なら大きくはネックになりませんが、性能に余裕がなく、ゲーム中にゲーム以外での処理が発生した場合には性能が低下したりシステムが不安定になる可能性があるため、その場合でもおすすめは出来ないモデルです。
Core i5との価格も1万円程度とそこまで大きくなく、Core i5を選択すればグッと性能が上がり、出来ることの幅も一気に広がるので、出来ればCore i5以上をおすすめします。
その他参考
その他の参考情報です。知っておいて損はないと思うので、よろしければご覧ください。
オーバークロック(OC)
オーバークロック(OC)とは、CPUに標準で設定されている動作クロックよりも高い値を設定して、性能を本来を引き上げることです。引き換えに消費電力や発熱が多くなるデメリットがあります。また、基本的にオーバークロックは保証の範囲外の動作となる点も注意です。基本的には実用性を考慮して使用するものというよりは、一部のPC好きの人が好奇心のために利用する機能になっています。
Intel製の主流CPUの場合、末尾(接尾語)に「K」が付くCPUは「オーバークロック(OC)」が可能となっています。ただし、オーバークロックを利用しない場合でも、定格のクロックがK付きモデルの方が高く、K無しモデルよりは高性能であることが基本のため、オーバークロックしないならK無しの方が良いとは限らない点は注意です。
また、デスクトップ向けのCore i9では基本的に、温度に余裕があると判断できる場合には、本来の設定よりも少しクロックを引き上げる機能、いわゆる「自動オーバークロック機能」が標準搭載されていることが多いです(Adaptive Boost TechnologyやThermal Velocity Boostなど)。
CPUクーラー
CPUにはクーラーによる冷却が重要です(ノートPCやタブレット向けのCPUではファンレス駆動向け製品もありますが)。
CPUの冷却が間に合わないと「サーマルスロットリング」という機能が働き、クロックを下げることで低温化を図るため、性能が低下する恐れがあります。そのため、CPUの消費電力に合わせたクーラーを導入することが重要です。
Intel製CPUではTDPが65W以下のモデルではクーラーが付属していますが、基本的に性能は良くないので別のものを使用することが望ましいです。BTOパソコン等では、何もしなくても何かしらのクーラーが搭載されていますが、コスト削減のため冷却性能が十分でないクーラーを標準採用しているケースも多いです。事前に確認しておきましょう。
また、特に空冷クーラーの場合にはPCケースのエアフロー(排熱性)も非常に重要となるため、そこも最低限確保しておくことを意識しましょう。これは、空冷クーラーはPCケース内部の空気を冷却に使用するためです。
ただし、どのくらいのCPUにどのくらいのクーラーが必要なのかわからないという人も居ると思うので、ざっくりとした目安を表にまとめています。参考までにご覧ください。第13世代Coreシリーズ基準です。
CPU | 推奨クーラー |
---|---|
Core i9(K) Core i7(K) |
簡易水冷 (280mm以上のラジエーター) |
Core i9(無印) Core i5(K) |
簡易水冷 (240mm以上のラジエーター) 大型空冷 (120mm以上のファン2基 or 140mmのファン1基) |
Core i7(無印) Core i5(無印) |
簡易水冷 (120mm以上のラジエーター) 空冷 (120mm以上のファン1基以上) |
Core i3 | 付属クーラー 空冷 (92mm以上のファン1基以上) |
記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。
また、CPUのその他の情報に関しては、下記の記事も参考になるかもしれません。良ければご覧ください。
説明がとてもわかり易かったです。
最初は10900kを使おうと思っていたのですが11700kのほうが良いということがわかってよかったです
とても分かりやすい記事をありがとうございます。
当方corei7 9700KFというモデルを使っています。
マザーボードがオーバークロックできないものでKのものでなくてもよかったかなと思いましたがベースのものよりも性能高いんですね。この記事に出会わなければわからなかったことです。あと内臓GPU非搭載というのは何かデメリットなどはあるのでしょうか。わたしのPCにはグラフィックボード積んでいます。
内蔵GPU非搭載のデメリットは、グラフィックボードを利用する前提ならほぼ無いと思います。
強いていうなら、グラフィックボードが故障して使えなくなった際に画面が表示する事ができない事や、グラフィックボードを搭載しにくい超小型PCでの利用が難しいというくらいだと思います。
追記:内蔵GPU非搭載モデルではQSVエンコードを利用する事ができません。恐らく大丈夫とは思いますが、積んでいるグラフィックボードがハードウェアエンコード未対応だった場合には困る可能性はあります。
Kが付かないとOCってできないのですか?
いいえ、必ずしもそうではありません。ですが、”Intelの主流CPU”内なら、基本的にその認識でも構わないです。
「Core X(Extreme Edition)」というシリーズは末尾がXでOC可能ですが、非常に高価かつ消費電力が多いため一般向けではありませんし、以前に末尾CのCPUでOC対応のものがありましたが、現在は恐らく廃止されている、など例外はあります。
また、AMD製のCPUでは末尾Kは関係なく、無印でもOCに対応していたりします。
Core i3:エントリー~ミドルレンジ の説明で
悪い点:消費電力(発熱)が少ない
とありますが、冬場の暖房器具としての性能かな?
確認不足でした。「良い点」の間違いですね。申し訳ございません。訂正いたしました。